【インタビュー】田中雄士、遅咲きのヒーローへの道を体現する男が語る”人生の面白さ”

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2017年に「遅咲きのヒーロー」、2019年に「断捨離 feat. HOKT(N.C.B.B)」をリリースして、着々とリスナー層を広げてきた田中雄士が、EP『遅咲きのヒーロー』を完成させた。彼のヒップホップアーティストとしての魅力はもちろん、人間としての深みも存分に伝えてくれる作品だ。32歳でプロデビューしたキックボクシングの世界で挫折を味わいつつもWBKF初代世界スーパー・フェザー級王者、第3代GRACHANキック・フェザー級王者、蹴拳インプレッション初代スーパー・フェザー級王者の3冠を達成し、複数の会社の経営者としても活躍する彼の信念と人生観が、あらゆる曲に刻まれている。

   ◆   ◆   ◆

■“このままじゃ終われねえ”
■伝えたいことがあるし、止まってはいけないと思う


──「遅咲きのヒーロー」は、2017年にリリースした曲ですね。

田中:はい。この曲を出した時はストリート雑誌の『411』の連載を持っていて、モデルとしても出ていたんです。それでヒップホップとの関わりができたんですよね。『411』の編集長さんが「歌とかあったらもっと大きく誌面で扱えるし、いいんじゃないの?」と提案してくれたのが全てのきっかけでした。自分はキックボクシングジムを経営しているんですけど、ウチの練習生で、友だちでもあるCIMBAに相談したら「俺、曲を作りますよ」と。自分の想いをノートに殴り書きしたものを彼に渡して一緒に作ったのが「遅咲きのヒーロー」です。

──もともとヒップホップはお好きだったんですか?

田中:好きでした。西海岸のカルチャーとか、ファッションも含めて大好きでしたから。20代の頃にクラブのパーティー、イベントとかを自分でも主催していて、そういう形でもヒップホップカルチャーには触れていました。

──田中さんは若かりし頃日本での有数のやんちゃな集団のリーダーだったんですよね?

田中:ご存知なんですね。そういうカルチャーのど真ん中にいたのでヒップホップは受け入れやすかったですし、自然に好きになりました。当時から音楽もやっていたらよかったなと、今になって思ったりもします。

──田中さんの音楽は、濃密な人生経験がとても深く刻まれているのを感じます。

田中:ありがとうございます。「遅咲きのヒーロー」が好きですか?

──それぞれの曲に魅力を感じています。「遅咲きのヒーロー」に関しては、30代に入ってからキックボクシングでプロデビューして、素晴らしい結果を重ねてきた人だからこその説得力があると思いました。

田中:嬉しいです。キックボクシングのプロデビューは32歳の時なんです。最初の頃はプロを舐めていたから2連敗して、3回目もやっと引き分け。全然勝てなかったんですよ。悔しかったですし、これだけ大勢の人達を自分でよんでおいて負ける悔しさと応援してくれた身内に恥をかかせたという思いで己の名誉を取り返したかったんです!

──地道な鍛錬を重ねたそうですね。

田中:はい。タイとかシンガポールに渡って修行して、なんとか頑張って引き分けとかも重ねながらやっとチャンピオンになったんです。だから「遅咲きのヒーロー」なんですよ。でも、“まだ咲いていない”という気持ちです。自分の中では“咲いた”という意味ではなくて、“これから遅咲きのヒーローになるよ”という意味の歌ですね。


──《あの日俺たちが選んだ道の遥か先に 何があるかなんてまだわからないけど たとえこの身を時が容赦なく刻んでも 諦めはない 焦りすらないさ》と歌っていらっしゃいますし、この先も続く人生の中で何度も遅咲きを重ねていく決意を感じます。

田中:おっしゃる通りです。歌を通してはもちろん、いろんな意味でそういうことができるというのを証明していきたいです。

──《周りは言う「それ何のため?」分からないけどこのままじゃ終われねえ》というフレーズもありますが、実際にこういうことを言われた体験があるんですよね?

田中:はい。そんな感じのことがあって、“なんかわからないけど、このままじゃ終われねえ”って思ったんです。

──夢や目標は周りから見たら合理的には思えなくても、当人にとっては切実なものですからね。

田中:その通りですね。周りから見たら滑稽なのかもしれないです。目立つことをしたり、何かを始めると否定してくる人間はいるんですけど、自分にはそれでも伝えたいことがあるし、止まってはいけないと思うんです。

▲EP『遅咲きのヒーロー』

──「I'll Get It All feat.輪入道」も、「遅咲きのヒーロー」に通ずるメッセージを感じた曲です。《痛みでできたこのパワー ゴールなんてもんはないから》とか、一生を通して遅咲きを重ねていく強い決意が、この曲からも伝わってきます。

田中:ゴールを設定したら面白くないですし、ゴールがない方が楽しいんじゃないかなと思うんですよね。間違っていると思っている人に屈したくないという気持ちもあるんです。自分が思う正義を貫きたいから力が欲しいですし、表に出て行かなければいけないですし、何かメッセージを伝え続けたり、良い意味で目立ち続けたりしないといけないと思っています。だからこうして音楽を始めたのかもしれないですね。

──様々なアーティストのみなさんが田中さんの作品に参加している理由は、そういう真剣な姿勢を感じるからなのだと思います。

田中:ありがとうございます。HOKTさんとは『411』の連載で対談をしたんですけど、それがきっかけで仲良くなったんです。“雄士くん、歌とかやった方がいいよ、生き様的にも”と言われたので。AK-69も彼に紹介してもらって、そこから他にもいろんなみなさんとの出会いが広がっていきました。

──アーティストのみなさんと魂の根底の部分で共鳴できています?

田中:そう思います。AK-69の歌詞も自分と近しいものを前から感じていましたから。こういう出会いがいろいろあるのも、音楽を始めて良かったと感じることのひとつですね。

──HOKTさんが参加している「断捨離 feat. HOKT(N.C.B.B)」は、2019年にリリースした曲ですね。

田中:はい。HOKTさんとも共感できる部分がたくさんあるんです。


──この曲は、陰口をたたく人たちの対する気持ちが描かれているのが印象的です。

田中:そういうのは気にしないというか。結果を出して、どんどん気にせずやっていくしかないなと思っています。陰口をたたくやつらすらもいつかファンにできればいいですよね。

──キックボクシングの世界でも、そういう姿勢を貫いてきたんですね?

田中:はい。精神的にも強くないとだめでしたね。最初は負け続けて、そこからチャンピオンになったのは、“みんな褒めてよ”って思います(笑)。やめる理由はいくらでも作ることができたんですけど、自分には作ることができなかったんです。だからやるしかなかったんですよ。

──そういう生き方を通じて感じてきたことを音楽で表現しているんですね。

田中:はい。やはり何かしらを伝えたいですし、みんなに耳を傾けてもらえる存在になりたいんです。格闘技で戦って伝えるより、音楽の方が伝わりやすいのかなと。良い意味で目立てば何かが伝わるのかなと思っています。

──異色の経歴だからこそ目立つというのは、田中さんが音楽活動をする上での武器ではないでしょうか?

田中:はい。おそらくそうだと思います。そういうことを個性にして、いろいろなことをやっていきたいです。とにかく努力をしながら上を見ていくスタイルなんですかね、自分は。そういうことが伝わって、伝染すればいいなと思っています。

──田中さんはビジネスの方面でも着々と結果を出していますよね。

田中:不動産事業や飲食事業もやっていますが、特にチカラを入れているのが、格闘技ジムで、現在東京と千葉に8店舗です。いずれは 国内や海外にも何十店舗と出せたらよいですね。

──自分の力で掴んだ結果を曲で堂々と示すことも、田中さんは積極的にしていますね。

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