【インタビュー】鳥籠の中で僕たちは、、「彼岸花は僕の死体に咲く」から動き出した表現世界

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■TORiさんも僕の顔を見たのって初めてですよね。(cage)
■はい。まず、お会いしたことないので“はじめまして”です。(TORi)


──では、一番最近感じた“日常の違和感”って何でしょう?

cage:何だろうなぁ。例えば、スリランカ人の女性が入管施設で亡くなった事件があったじゃないですか。あのニュースを見て、本当はどうすべきだったのかな?っていうのは自分の中で考えたりしてます。そこから紐づいて“人の命ってどこまで平等なんだろう?”っていうことだったり……これは以前から考えているテーマの一つで、いつか曲にしてみたいと思ってるんですよ。

──やはりディープですね。ただ、こういった思索的な作品を生み出すアーティストって、どこかシニカルで“わかる人だけわかればいい”的なスタンスの方も多いですけど、cageさんは全く違うような気がするんです。始動一発目の「君と生きたい」にしても、“他人に生きてほしいと願うこと”という清々しいくらいのド正論を謳ってますし、もっと広い層の人に届けたいという、ある意味でのメジャー思考があるんじゃないかなと。

cage:バレてますね(笑)。あの曲に関して言えば、今、苦しくて生きづらさを抱えてる人たちが一つのターゲットであることは確かなんですけど、本当のターゲットはそんなことを考えずに生きている人たちで。むしろ「生きてほしい」と言う側の人たちに、どれだけ残酷なことを言っているのかを、この曲を聴いて感じてほしいんです。僕、最終目標が全世界の人と繋がること、曲を通してお話することなんですよ。それでストレートな言葉選びをしているところも間違いなくありますね。

TORi:私も海外には魅力を感じますし、たとえ言葉が通じなくても、音楽を通していろんなことを感じてもらえたら……っていうのは、夢に思い描いてます。海外には自分の知らない世界や価値観があるので、そこで全く違う人間同士がリスペクトし合えたら、なんて素敵だろうな!って。そのためには知っていかなきゃいけないし、知ってもらわなきゃいけないわけで、それが自分にとっての音楽活動の楽しさなのかもしれないです。

cage:だから最終到達点というか、やりたいことは一致しているんですよね。世界と繋がるためには少なくとも英語を勉強しないと話にならないし、海外の宗教に対する理解も重要になってきますが、そういったものに対して否定から入らないように育ててもらったので、そこは個人的な強みだと思ってます。

──まさか“世界と繋がりたい”という発言が飛び出すとは予想外でしたが、こうしてリモートで画面越しにお話しさせていただいても、cageさんって曲から想像していた感じとは全く違っていて。正直、驚きを隠せません。

cage:それ、メチャメチャ言われます! Twitterとかで会話してた人と実際に顔を合わせると、「イメージと180度くらい違う人が来た」って(笑)。喋り方のせいかなぁ? TORiさんも僕の顔を見たのって初めてですよね。

TORi:はい。まず、お会いしたことないので“はじめまして”です。

──始動の際に「とりあえず会ってみよう」とはならなかったんですか?

cage:そもそも住んでいる地域が遠いので、このご時世では、ちょっと難しかったんですよ。これが今じゃなかったら、顔合わせくらいはしていたかもしれないです。

──なるほど。やり取りは全てオンラインでされているそうですが、直に顔を合わせて音楽制作する従来の手法には無い、オンラインゆえの良さってズバリ何でしょう?

cage:僕は発達障害の気があって、例えばスタジオでジャムセッションから曲を作っていくようなやり方だと反応できないんですよ。考えるのは速いのに反応速度がすごく遅くて、昔やってたんですけど全然上手くならなかったんです。腰を据えてじっくり考えられる、時間をかけて作り込めるっていうのは、オンラインの一つの良さですね。

TORi:自分も外に出かけて慣れない環境で何かをするのが、とても苦手なんですよ。なので、じっくりやれるっていうのは、私にとっても有り難いですね。「ちょっと考えて返信していいですか?」っていうやり方をさせてもらえるので、自分としてもすごく安心して本当に届けたいことをお伝えできるんです。

cage:まとめると、自分のペースで、自分の好きな環境で、落ち着いてゆっくりできるってことですね。でも、だからって対面で曲を作るのがダメなわけじゃなく、できればどっちのやり方もちゃんと残ってほしいっていうのが本音です。


──これまで音源リリースも配信のみですが、では、パッケージにはこだわっていないんでしょうか?

cage:たまにその話は出ますけど、まぁ、やりたくなったらCDとかレコードも作るかもしれないですね。ただ、今のところ“まだいいかな”っていうだけで、別に“やらない”という選択肢を特に取るつもりも無いです。結局、やりたいことベースで活動しているので、そこは自由に。

──では、その“やりたいこと”として、現時点で見えているものを少し教えていただけません?

cage:目標は世界と繋がることとして、作りたい楽曲としては……やっぱり人の考え方の違いとかですかね。今、書いてる曲は“宗教って何なの?”みたいなテーマで、これもTORiさんに歌ってもらうかどうか、すごく悩んでます。あとは発達障害の当事者として、“わかってもらえないのはわかってるけど、わかってくれなくてもいいから受け入れてほしいなぁ”みたいな曲も書いてみたいですね。テーマ自体は重たい曲が今後もたくさん出ていくでしょうけど、聴いたとしても“そこまで悩まないでほしい”というのは、一つ伝えておきたいことで。街中で聴こえてきて、興味を持ったら深くまで掘ってくれればいいけれど、合わなかったら合わないで全然大丈夫。曲の内容と雰囲気ってまた別物なので、雰囲気だけでも好きになって応援してもらえたら嬉しいです。

TORi:なんというか、“重さに引きずられないで”というか(笑)。読んで字のごとく“音楽”ってエンターテインメントなので、考えるだけじゃなく楽しんでもらう部分もあってほしいですし、これからもcageさんはいろんなテーマで私たちに問いかけてくれるはずなので、考える楽しさも感じながら応援してくださったら嬉しいなと思いますね。

cage:最後に一つ。もし、曲を聴いてあまりにも辛くなって、もう死にたくなってしまったら、全部僕のせいにしていいです。解釈は受け取り手の自由だからって投げっぱなしにするんじゃなく、作品を生み出した者としての責任を取らないといけないって、僕は考えているんですね。それはある種の傲慢かもしれないですけど、ちゃんと責任取りますってことは、しっかり伝えさせてください。

取材・文◎清水素子

▲鳥籠の中で僕たちは、/「彼岸花は僕の死体に咲く」

リリース情報

「彼岸花は僕の死体に咲く」
2021年8月22日 配信スタート
https://linkco.re/dQB5mbxf

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