【インタビュー】健康、悠介(lynch.) × 松本明人(真空ホロウ)が語る新ユニットの行方「ここからは発展しか見えない」

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謎の新ユニット“健康”が8月19日、突如始動を発表した。揃いの白衣に身を包んだ悠介(lynch.)と松本明人(真空ホロウ)の姿に驚いた人も少なくないだろう。lynch.のラウドサウンドを支えながら繊細なフレーズで彩りを添える悠介(G)と、バンド形態にとらわれず様々な表現を追求する松本明人(Vo, G)といった旧知のふたりが生み出した音楽は、閉ざされた世界で繰り広げられる実験のような空気感を孕みつつ、それぞれの個性が融合したアートであり、ポピュラリティすら内包するサウンドに仕上がった。

◆健康 画像 / 動画

“楽曲、ビジュアル、映像を通して、リスナーが心身ともに健康になってほしい”との願いを込めて名付けられた健康というユニット名や、映画から着想を得たテーマなど、揺るがぬコンセプトを持つ一方で、まだ生まれ立てのユニットならではの無限の可能性が脈打つ。健康としては初インタビューであり、9月19日の初ストリーミングライブ直前に実施された同取材は、ここから始まる未知の物語を誰よりもふたりが楽しみにしていることが伝わるものとなった。

「出会って7年。その7年前にもうひとつ、このユニット始動を暗示するような大切なものがあった」とは、取材終了後の悠介の弁だ。ストリーミングライブではそれが、「「未来」のデモ音源は当時制作したものであり、健康始動と同時に形になった」という運命的な事実が語られた。これまでステージでの共演経験もあるふたりだが、いよいよ機が熟しての始動となる。ここに至るまで試行錯誤を重ねたというふたりに、その紆余曲折を語ってもらったロングインタビューをお届けしたい。

   ◆   ◆   ◆

■「いっそ顔を出さずにやろうか」
■とか最初は言ってたんだよね

──おふたりの出会いから遡ると、いつ頃になるんですか?

悠介:7年前くらいかな。僕がもともと真空ホロウを聴いていることを共通の知り合いに伝えて、紹介してもらったんです。たしかlynch.が『GALLOWS』(2014年発表)のインストアイベントをやった時にその人が連れてきてくれて、そこからですね。

松本:そのあと、lynch.の別ライブの打ち上げに行かせてもらったんですけど、自分のバンド以外の打ち上げに出るのが初めてで緊張したし、みんなの雰囲気が怖いからどうしよう?って思いました(笑)。

悠介:怖いって(笑)。人付き合いがヘタなだけだよ、lynch.は。そこから話すようになって、2016年に<lynch. Member Produce 5 Days>という企画をやった時の僕プロデュースの日に、明人くんと弾き語りユニットで出演して、お互いの曲をカバーしたり。

松本:やったね。lynch.の「ENVY」を歌いました。その時は真空ホロウが僕のソロになっていたので、名古屋ワンマン(<真空ホロウ Acoustic Tour 2016『真空歩廊展 -第一回-』>)にゲスト出演してもらったり。そういう経緯もあって、「一緒に何かやりたいね」とはずっと話してたんです。


▲悠介

悠介:ユニットの話は、2019年の明人くんバースデーライブ企画のタイミングで出て。その企画は結果、なくなってしまったんですけど、そのあと「あの話どうなった?」って僕から振った直後に、いきなり、まとめていろいろ送られてきたんです。“健康ロゴ”のプロトタイプだったり、5〜6曲の楽曲が。今とは全然違うかたちなんですけど、「このプロジェクトに合う曲を作ったから」みたいな。

松本:はははは! そう、なんか作っちゃってたんですよね。

──悠介さんとのユニット前提で作った曲ですか?

松本:はい。去年は個人的にものすごく豊作の年で、1日20曲とか作ってたので。その中でユニットの曲を作ってみたんです。でも、改めて健康を始動することが決定して話を進める中で、“なんか違うな”と思ったので、それらの曲を一度全部捨てたんですよ。このままだと“真空ホロウでいいじゃん”とか言われそうな曲だったし、“ふたりで楽しめれば、人に聴かせなくてもいいや”みたいな曲になっちゃってたから。健康って名前で活動するんだったら、それまでの自分の作り方とは違う形にしたくなったんですよね。たとえば、「除獣」っていう曲がそうなんですけど、悠ちゃんが作っていたインスト曲に僕が歌詞をつけたり。

悠介:「健康」っていう曲だけ、最初のデモから唯一生き残ってますけど、当初のアレンジはもっとアングラだったよね。TOOLばりのドラムフィルが入ってて。

松本:そうだね、7/8拍子とか(笑)。“僕らにとっての健康とは?”って自問した時に、まずそういう曲が出てきちゃったんですよ(笑)。

悠介:そういう音楽を聴いてたほうが、むしろ健康的だろっていう(笑)。


▲松本明人

──ははは。ユニット名の健康は、曲を作る前からから存在していたようですね。

松本:そうです。世の中とかSNSも含めて、みんなが発する言葉が不健康だなーと思って。それで、健康になりたいなっていう想いがひとつ。あと、海外の人が意味とか関係なく漢字のタトゥーを入れたりするじゃないですか。そういうイメージで、パンチがある言葉がないかなって考えて、健康を提案したんです。「健康ってどう?」って悠ちゃんに言ったら、ちょっと戸惑ってたけど(笑)。

悠介:いや、どうしてもやっぱり、俺、lynch.だしなあ……と思って。

松本:はははは。

──たしかにlynch.のイメージからはかけ離れたユニット名ですね。

悠介:“真空ホロウ”から“健康”は、わかるじゃないですか。健康って発表した時に、僕のファンはどう思うんだろう?って最初は思ったんですよ。でも、ほかに何かないか考えても、もう頭にこびりついてて。健康を超えるものはないなと思うようになりました。

松本:僕ははじめからこうなることがわかっていたので、健康以外考えられないように洗脳しました(笑)。

悠介:しっかりした意味合いがあるし、コンセプチュアルに発信しやすいだろうなって。ただ、WEB検索をかけた時に一発で出てこないのが気になってるんですけどね。“健康 / バンド”って検索したとしても、健康グッズが出てくるんですよ。


▲健康

──そうでしょうね(笑)。楽曲を制作するにあたって、おふたりの音楽的趣味が重なる部分はもともと感じていたんですか?

松本:どうだろう。あんまり音楽の話はしたことないよね。

悠介:たぶん明人くんは、僕よりもバックボーンが幅広いんです。もともと触れてきた音楽が違うし、ずっとソングライティングをやってきて、いろんな音楽を知っていると思います。僕は、lynch.にいる以上、そっちのスタイルで活かせる音楽を聴くことが多かったから、やっぱり偏ったりしてる。だから、改めて健康を始めるとなって、あんまり今まで聴いてこなかった音楽も聴くようになりましたね。たとえば明人くんとの何気ない会話で出てきたアーティストとか、ちゃんと聴いてみようとするクセもつきました。

──悠介さんがリスナーとして感じていた、松本さんの音楽の魅力というと?

悠介:まず、声がいいですよね。やっぱり誰しもに声がスッと入ってくるのは大きいと思う。歌詞もそうですし。

──逆に、松本さんから見た悠介さんの音楽の印象は?

松本:モジュレーションのかかった付点八分ディレイ。

悠介:はははは。

──松本さんは以前のBARKSインタビューで、「付点八分ディレイは正義」っていう名言を残してくれてるんですよ。

松本:あはははは! 付点八分ディレイ、大好きなんです(笑)。とにかくどんな曲を送っても、しっかりと悠介印のギターが入れられて返ってくるのがすごいなと思いました。最初に作った時、ものすごく幅広い楽曲を送ったんですけど、「ああ、悠ちゃんだ」ってわかるんですよね。たぶん、自分で出したい音がしっかり決まってるんだろうなと思います。僕は、いろんな声を出せちゃうし、いろんな曲を書けちゃうから、逆に無個性というか。その時その時で、真空ホロウの松本明人はどういうことをやったら活きるのかを考えていて。真空ホロウに音楽を提供してる、みたいなイメージなんです。健康もたぶんそうで、悠介くんとやっている松本明人はこういう曲をやりますよっていう感じですね。


──たしかに、それぞれいつもの活動とまったく違うことをやろうとか、あえて裏切ろうとしてるというより、うまくふたりの個性が融合してますよね。

悠介:でも、最終的にそうなったという感じです。最初は、「いっそ顔を出さずにやろうか」とか言ってたんだよね。

松本:覆面ユニットにしようって。

──ええ!?

悠介:そんな話もあったんです。その時のデモは、ボーカルも1オクターヴ高い音域で歌って、本来の松本明人の良さというか声質を殺してたり。

松本:「違う人になろう」って。でも、そこは大人になりました。

──そこまで変化球投げなくてもいいかという?

松本:そうですね(笑)。やっぱり、みんなが健康的にやれるように。個性を殺すとか、危うく不健康になるところでした。

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