【インタビュー】Kroi、「憂鬱を摂取して“充電”してる様子を抜き取りたい」
ファンク、ブルース、ソウル、ヒップホップからロックまで、独自に融合させるスタイルで人気を博すバンド、Kroi。6月にメジャーファーストアルバム『LENS』を世に放つと、全国8都市を回ったリリースツアー<凹凸>も成功を収めた。
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さらに波に乗るKroiは、4作目となるEP『nerd』のリリースを11月17日に決定。また、対バンツアー<Dig the Deep>のラインナップも発表された。EPには新機軸となる全6曲を収録し、DVDが付属する盤では、<凹凸>ツアー最終公演のライヴも観賞できる。
Kroiの新章となるであろう『nerd』。先行配信曲となった「Juden」を中心に、楽曲の魅力や制作の背景について、メンバーの5人に話を聞いた。
◆ ◆ ◆
■「Juden」は自分たちでもまだ分析できてない
■もっと時間が経ったら見えてくる曲なのかな
──メジャーファーストアルバムやツアーを経て、『nerd』のリリースとなりました。このEPのことをお聞きする前に、アルバムをリリースした後の手応えや反応について教えてください。
長谷部悠生(G):『LENS』は自分たちのやりたいことを詰め込んだ作品でした。名刺代わりというか、今のKroiを知ってもらえるものを届けられたと思っています。
内田怜央(Vo,G):完成度的にも構成やアレンジにしても、よくできたと思っていますね。
千葉大樹(Key):今までやってない感じの曲もあるし、あらためて聴いてもいいバランスになってるので、一枚目のアルバムの役割を果たせたのかなと。
関 将典(B):アルバムリリースの後に<凹凸>というツアーを通じて、お客さんの反応が色濃く見えたので、手応えは過去作に比べて鮮明に見えてきましたね。
益田英知(Dr):繰り返しライヴをやっていくなかでも新しい発見があって、アルバムの曲が少しずつ自分たちに落とし込まれていった。そういう変化を、自分たちもお客さんもお互いに楽しむことができたと思っております。
──なるほど。EP『nerd』について、まずは、オタクを意味するタイトルの由来を伺いたいです。
関:自分が今回のジャケットやタイトルのアイデアを提案しました。“nerd”はあまりよくない意味で使われたりもしますが、Kroiの解釈とは違う。周りの目を気にせずに自分の好きなものに愛を捧げるのは、すごくかっこいいことだと思ってます。
──ジャケットにも「nerdであることを誇る」という英文がありますね。
関:やっぱりメジャーデビューアルバムをリリースした後の注目度ってあると思うんですよ。アーティストによっては、そこでガラッと切り替える人もいるかもしれない。でも、自分たちは変わらずに、一つのことを貪欲に突き詰めて研究して、楽しんで、曲を発表する。そういうKroiなりのスタンスをタイトルに込めました。
──EPはいつ頃から作り始めましたか?
関:ツアーの終盤、8月中旬ぐらいからレコーディングを始めました。
千葉:制作期間自体は一ヶ月ちょいとかですね。
長谷部:短かったよね。
──曲作りの仕方で、以前と変わったポイントはありますか?
千葉:最終的にミックスで仕上げるのは僕なんですけど、今回すごく大事にしたのが、レコーディングに入る前の流れです。やりたい方向性とか、どうすれば曲として精度が高くなるかレコーディング前に把握しておかないと、それをそのまま活かすことも変えることもできない。なので、しっかりプリプロをするようになりました。
関:前回のアルバムよりも、サウンドメイクの面で千葉のディレクションが増えました。その方が最終的な完成形に良い影響を及ぼすっていうのが、千葉の中でしっかり見えているレコーディングでした。
長谷部:その完成図をちゃんと5人で見据えて作っていった記憶があります。
──以前は、内田さんがデモを作って、そこから仕上げていくのが曲作りのベースでしたよね?
内田:そうですね。今回はさらにデモの間にプリプロが入ってます。
関:怜央が作ってくれたデモを元に、それを全員でもう一回清書したプリプロを作ったので、より綿密に完成形を見据えることができました。
──ファーストアルバムをリリースした後のインタビューで、「第一章が終わって第二章が始まる」と内田さんは仰っていましたが、それは曲作りについてなのか、それとも内面的なものなのか、どちらでしょうか?
内田:全てにおいて、もう少しいろんな方向に手を出してみたくて。新しいことをしろっていうプレッシャーを自分にかけるために言ってただけです(笑)。
関:でも、その“第二章”の有言実行というか、今回のEPで怜央が作ってきたデモには、新しいテイストもふんだんに取り入れられています。もちろん、これまでの自分たちのエッセンスを取り込んだ楽曲もありますけど。
──過去の楽曲だと、「HORN」はカーティス・メイフィールドの「Move On Up」を思い浮かべますし、 そういうファンクの気持ちよさがありつつ、さらに別の要素が加わるのがKroiの魅力だと個人的には思います。ですが、今回のEPは、全体的にファンクの要素が薄くなって、これまで以上に多彩なものが混ざり合った印象でした。
内田:2曲目の「pith」以外は混ぜるジャンルを指定せずに、サラッと「いい曲書こう」みたいな感じで作りました。そうすると似たような曲になりがちですけど、ミックスやメンバーの音作りとフレージングで、いろんな色が出ています。結果的に雑多な感じになりました。
──先行配信された「Juden」は、最初のギターやシンセを聴いて、フュージョンを強く感じました。
内田:第二章って言ってたので、「Juden」ではファンクをやりたくなかったんですよ。でもなんだろう、途中からファンクやろうと(笑)。
千葉:結局ファンクやるんかいっていう大ボケをかましました。しかも先行で出すんかいみたいな(笑)。
──ドラムについてはいかがですか?
益田:自分はファンクとアフロを意識して叩いたところはありますね。
千葉:あと、サビにいくとすごいラテンっぽくなってる。全然いいことなんですけど、鍵盤入れたらラテンになっちゃった(笑)。だから、一曲の中でもセクションごとに全然違うジャンルに聞こえるかもしれない。
──「Juden」はその一曲の中での移り変わりが面白いですね。こういう速い曲にしてはすごくエモーショナルな歌が入っていたのも驚きでした。
内田:俺らでもびっくりしてます。「え!?」って言いながら作ってました(笑)。だから、この曲は自分たちでもまだ分析できてないです。もっと時間が経ったら見えてくる曲なのかな。
関:それぞれのソロセクションも設けてるので遊びもありますし、それこそライヴでやってみて、進化していく感じの曲だと思います。
──ミックスについてはどうですか?
千葉:下が豊かに聞こえるようにしました。元々クラブミュージックを聞いていたし、ジャズだとゴースト・ノートみたいなバンドのサウンド、ベースやドラムがしっかり出てるのが好きなので。「Juden」で一番聴かせたいのは、フックの前のベースとドラムだけになる瞬間。あの歌が入る前のセクションをタイトに、一番よく聴こえるようにミックスしています。でも、ドラムは狭くタイトなのに、サビは壮大な感じの歌になるじゃないですか。難しいですが、そのどっちなんだっていうチグハグ感が気に入ってますね。
内田:今回のEPはそのパターン多いよね。
益田:毎回それで悩んでた!
千葉:そうなんだよね。チグハグ感が一番よく聞こえるバランスを探っていきました。あと、この曲はシンセが面白いですよね。ブラス禁止令が出てたんです。怜央に「これはシンセで」って言われて、「はい」って(笑)。
──以前の「Balmy Life」のシンセだったらPファンクを思い浮かべますが、「Juden」のシンセは捉えどころのなさがありますよね。
千葉:おそらくドラムをタイトにしてるから、広げすぎるとチグハグ感が出すぎてしまう。それでシンセを調整した結果、ああいう狭くもなく広くもない聞こえになったんですよ。結果的に、聞いたことのない絶妙なサウンドになったみたいな。それがKroiっぽいって気に入ってもらえたら嬉しいですね。
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