【ライヴレポート】MORRIE、30周年を締めくくる<永遠回帰>に音楽家としての足跡と“どこへ向かうのか”

ツイート

多くのアーティストに影響を与えたDEAD ENDのシンガーとしても知られるMORRIEが、去る11月3日に東京キネマ倶楽部で、ソロデビューから30周年を迎えたアニヴァーサリーイヤーを締め括る<永遠回帰>なるタイトルが冠されたライヴを行った。

◆MORRIE 画像

昨今でも、DEAD ENDとソロプロジェクトであるCREATURE CREATUREのマテリアルやカバー曲も披露する弾き語り公演<SOLITUDE>は断続的に行われてきたものの、コロナ禍となってからは昨年11月に続き、二度目のバンド編成での公演である。



彼を支えるメンバーは黒木真司(G / Z.O.A)、FIRE(B)、秦野猛之(Key)、yukarie(Sax)というお馴染みの布陣に、今は亡きかつてのMORRIEバンドのギタリスト、downyの青木裕とunkieを結成していた城戸紘志(Dr)が初参加。オーディエンス側の期待感も必然的に高まるというものだ。

まずはその5人が定位置につき、前奏部分となる音が静かに鳴らされる中、レスポールスタンダードを提げたMORRIEがゆっくりとステージ中央へと歩みを進め、マイクの前に立った。客席を視線を送り、着席していた観客に立ち上がるよう手振りで促した後、そのまま「Cosmos(カオス)の中に」を歌い始める。この何気ない一挙一動だけでも絶大な求心力を感じさせるのがMORRIEならではだろう。そしてアップテンポに展開する「パラドックス」へ。自身のソロキャリアの起点となった1stアルバム『ignorance』(1990年発表)の冒頭と同じ構成であり、特別な一夜であることを自ずから認識する。

ただ、セットリストを一覧すればわかるように、これまでの5枚のアルバム等から、アトランダムに楽曲が並べられており、先はまったく読めない。意図的にというより、結果的にこの選曲になったのは想像に難くないが、組み合わせは無限にある中で、一つのストーリーが紡がれていくように感じられるのは、MORRIEが綴ってきた歌詞の世界観から抽象される観念が、聴き手それぞれに熟考を伴いながら受け取られてきたからだろう。






加えて、MORRIE自身の変化もあるかもしれない。仮にかつては真理の探究の途上にいたとすれば、今はそのベクトルは確信に近い位置にあるように思える。そう考えると、初期の楽曲が舞台で立体化されるとき、言葉の伝わり方は明らかに違ってくるはずである。オリジナル音源とは異なる楽曲アレンジが施されているケースも多く、それが新鮮な印象を与えるのも事実だが、それとは同列に語れないのは、歌と向き合う心理の違いは、少なくとも描写される光景を核の部分から一変させ得る要素になるからだ。

無論、正解は一つではない。たとえば、“永遠回帰”とはいかなるものなのか、その哲学者・ニーチェの思想を反芻しつつ、MORRIEの歌に没入することで、個々の回答に結びつく側面はあるだろう。なお、ソロ活動を再開する狼煙となった約20年ぶりのアルバム『HARD CORE REVERIE』(2014年発表)に収録され、この日も後半に披露された「真昼の揺籃」には、“永劫回帰”という同意の一節も出てくる。



常に音楽的実験を繰り返してきた音楽家としてのMORRIEの足跡も見えてくる。その歩みを総括するかのようなマテリアルの数々に改めて感じたのは、1990年代と2010年代のアプローチの大きな違いだ。元来から幅広い音楽的バックグラウンドを持つ人物ではあるが、大局的に言うならば、初期は既存ジャンルを基盤に置き、その中で個の発露を横断的に形作っていたように映る。しかし、近年はアコースティックサウンドと並立するハード&ヘヴィな音像も重要なエッセンスではありながら、不協和音も含めたクラシック的な構築美を独特な解釈で曲として落とし込んでいる印象だ。本来的な意味でのプログレッシヴさとも換言できる。

両者の差異は、ライヴにおいてはより起伏のあるドラマ性を生み出すことにつながるが、その一方で通奏低音のような共通項もやはり感じられる。たとえば、「Dust Devil」から「パニックの芽」へ、「Riding the Night」から「ここではないどこか」への自然な流れである。MORRIEの普遍的表現と言ってもいいのだろう。



また、音源の再現性のみならず、MORRIEを含む現在のバンドメンバーが即興プレイも自在にこなせる敏腕であることも大きい。インストゥルメンタルパートが醸し出す空気が、静も動も湛えたサウンドスケープ全体に絶妙な引力を備えさせる。

本編は自身のソロ作品収録曲のみで構成されていたが、アンコールではDEAD ENDの「冥合」が演奏された。復活作『METAMORPHOSIS』(2009年発表)を締め括る約10分におよぶ深遠なエンディングトラックである。6月に行ったDEAD ENDのギタリスト・足立祐二への追悼公演の際、MORRIEは弾き語りで披露したが、バンド編成では恐らく10年ぶりだろう。彼がなぜこの場でこの名曲を選んだのか。理由は推測するしかないものの、自身のキャリアにおいて特に肝要なマテリアルの一つとして捉えているのは間違いない。MCでのMORRIEの言葉を借りるなら、「いろいろなこと」がある人生の一つの結実がここに示されていると言っては大げさかもしれないが、冷静沈着にして重厚な歌と音を耳にしながら、感情は想像していた以上に揺り動かされた。もちろん、解釈の仕方は十人十色ではあるものの、真理の探究を通して精神浄化へと導かれるような感覚である。この特別なライヴの帰結として、これ以上ない相応しい演目だった。


これからMORRIEはどこへ向かうのか。以前のステージで本人がアルバム制作への意欲を口にしていたとおり、すでに水面下では新作への準備も進んでいるはずである。同時に今回のようなバンド編成での公演もぜひ期待したいところだが、来たるべき日に向けて、改めてこれまでの作品群をより深く堪能しておきたい。

取材・文◎土屋京輔
撮影◎森好弘/荒川れいこ(zoisite)

■<Solo 30th Anniversary “永遠回帰“>2021年11月3日@東京キネマ倶楽部 SETLIST

01. Cosmos(カオス)の中に
02. パラドックス
03. 猿の夢
04. Dust Devil
05. パニックの芽
06. 純潔の城
07. Disquieting Muse
08. あの人にあう
09. Unchained
10. Riding the Night
11. ここではないどこか
12. 真昼の揺籃
13. SEX切断
14. 眺めのいいあなた
15. Danger Game
16. 破壊しよう!
17. 眩暈を愛して夢をみよ
18. あとは野となれ山となれ
encore
19. 冥合

■<Solo 30th Anniversary “永遠回帰“>配信アーカイブ

配信アーカイヴ:12月3日23:59まで
配信チケット:¥5,500
https://morrie.zaiko.io/e/MS211103

■<MORRIE the UNIVERSE “SOLITUDE” FCイベント>

▼Episode 89:おまえを愛している、永遠よ。〈私〉は存在への捧げもの
2021年12月2日(木) 南青山MANDALA
open17:30 / start18:00

■<MORRIE the UNIVERSE “SOLITUDE">

2021年12月12日(日) 名古屋JAMMIN'
▼Episode 90:幻影と謎への讃歌
・一部:open13:30 / start14:00
▼Episode 91:〈私〉はふたたび、そう、永遠回にわたって訪れる
・二部:open17:30 / start18:00
https://morrie.zaiko.io/e/SLTD9091

この記事をツイート

この記事の関連情報

*

TREND BOX

編集部おすすめ

ARTIST RANKING

アーティストランキング

FEATURE / SERVICE

特集・サービス