【ライブレポート】和楽器バンドの全てを堪能する<大新年会>

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毎年新年に楽しみにしている、大きな感動と喜びを感じるライブがある。それが、和楽器バンドが恒例としている<大新年会>だ。これは一年に一回限りの特別なベストヒット・エンターテインメントライブで、その名の通り新旧織り交ぜたセットリスト、豪華な演出、ツアーやイベントライブでは披露されないこの日だけの楽曲などを盛り込んだ、和楽器バンドのベストライブと言える公演。年始めにこのライブを楽しめることが、とても幸福だと毎年思う。

◆ライブ写真

2022年は<和楽器バンド 大新年会2022 日本武道館 ~八奏見聞録~>と題され、東京・日本武道館で開催された。前述の通り、今回もまさに2022年の始まりを飾るにふさわしいスペシャルな公演だったのだが、それ以上にバンドがコロナ禍にあっても歩みを止めず、成長を続けてきたことを強く感じられる素晴らしいライブであった。

2021年の<大新年会2021 日本武道館2days ~アマノイワト~>は、それ以前の<大新年会>ように大人数の剣詩舞隊やダンサーと共に豪華絢爛さを前面に打ち出したものではなく、メンバー8人が作り出すバンド力のみで勝負したライブだった。しかし今回はそこからさらに進化。バンド力と華やかでめでたいライブが融合した、和楽器バンドが目指す完全体なのではと感じるものだった。

まだ和楽器バンドを知らない人には、ぜひいつかこの<大新年会>を見て欲しい。そのきっかけになれば、そしてすでに和楽器バンドのファンである人々とライブの感動を分かち合えたらと思い、<和楽器バンド 大新年会2022 日本武道館 ~八奏見聞録~>の模様をレポートする。

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1月9日、東京・日本武道館。開演時間になるとメンバーのイラストがあしらわれた扇子がスクリーンに次々映し出され、メンバーのシルエットがステージに現れる。黒流(和太鼓)がライブの開幕を告げる鬨の声を上げると会場には大きな拍手がわき起こり、サイリウムが煌めく。その中で始まったのが「戦-ikusa-」だ。メンバーは、この日のためだけに作られたバンドカラーの紫色をあしらった衣装をまとい、神永大輔(尺八)に至ってはいつもの坊主頭を今年の干支にちなんで“寅柄”にラインを入れる気合の入れよう。しょっぱなから<大新年会>の特別感が満載だ。


サウンドももちろん最高。“和楽器バンド”とは言うが、その本質はロックバンドなのだ。町屋(G)のギターソロも炸裂するし、亜沙(B)は重低音を響かせながら激しいヘッドバンキング。初見の人なら「これが和楽器のいるバンド!?」と思ってしまうだろう爆音のロックサウンドを繰り出した。続く、久々にライブで披露された「白斑」では、複雑な拍子が絡み合う中で妖艶な雰囲気を描き出す。山葵(Dr)と黒流が重ね合うリズムの間を縫うように響く、いぶくろ聖志(箏)の音色が妖しくも心地よい。

鈴華ゆう子(Vo)が「みんなで一緒にリズムを作っていきましょう!」と言って始まった「情景エフェクター」からは、新年らしいハッピーなセクションに。無事に今年も<大新年会>を開催できた喜びが溢れるように楽しく演奏するメンバーに、観客は手拍子で応える。「起死回生」では黒流の掛け声に合わせた三本締めで、会場全体に一体感を生み出した。


そして特筆すべきは、やはり鈴華の歌声。「戦-ikusa-」「白斑」での力強い歌唱から、「情景エフェクター」「起死回生」での明るくポップな歌唱と、表現力は底知らず。そして最もその本領が発揮されるのが、「オキノタユウ」だろう。黒流が和太鼓をゆっくりと打ち空気を静かに響かせ、町屋がアコギを奏で始めたと思うと障子を模したセットが開き、鈴華が迫り上がりステージにいた。高く登っていくステージの上でスッと扇子を掲げるとスクリーンに輝く光が投影され、海の中にいるような幻想的な風景がステージに現れた。曲が展開するに従ってスクリーンの風景は海中から水面、空へと変わっていく。その中で繰り広げられる鈴華の歌はどこまでも広がっていくようで、ここが日本武道館であることを忘れて夢の中にいるような一幕だった。

また、<大新年会>は演奏される楽曲が多彩なところも魅力。ここまでのロック、ポップ、バラードといったラインナップだけでもそれは証明されているのだが、ジャジーな「シンクロニシティ」、ダンサブルな「Starlight」は “和楽器”というイメージを完全に覆す。と思えば「細雪」のような和ロックバラードもあり、「Eclipse」のような町屋節全開な難曲も。和楽器がメンバーにいるからといって“和風”だけにとらわれず、あらゆるジャンルの楽曲を生み出し、各々の持つ楽器のポテンシャルを最大限に発揮するそのスタイルは、ロックそのものだと思う。

この日ならではの特別感でいえば、鈴華がピアノを弾くシーンも見どころだった。本当に才色兼備なボーカリストだ。「シンクロニシティ」ではアコギと尺八がジャズ風のソロを弾くと、鈴華がピアノで登場。華やかなピアノソロを終え、ミュージックビデオさながらにスタンドマイクでストーリー性ある歌詞を鈴華と町屋が表情豊かに表現した。「Starlight」でのピアノソロも華やか。このピアノと黒流の打つ鳴り物の深い音が、一見無機質なこの楽曲に奥行きを与えていた。「Starlight」ではスクリーンに星空、「細雪」では雪が降る演出もあり、楽曲の世界観が補完されていく様も美しかった。


そして必見なのは、和楽器バンドにしかできないインストナンバーのセクション。この日だけの貴重なセッションだ。「Eclipse」の演奏に圧倒された観客が大きな拍手を送る中、突如ステージが暗転、黒流の当り鉦の音が凛と響き、会場には静寂が生まれる。

そこに息遣いも繊細な神永の尺八がゆったりとしたメロディーを辿り、いぶくろの細やかで儚い箏の音が雨音のように押し寄せてくる。黒流の深みのある和太鼓の音も加わり、会場を神秘的な空間に塗り替えた「Nine Gates」。その静謐な余韻を山葵のドラムソロが破ったかと思うと、狐面に被衣をまとった鈴華が現れ、扇子を使って舞う。空間を切り裂くような激烈なドラムフレーズと優美な舞という、アンビバレントな光景に息を飲む。「嶺上開花」と題されたこの楽曲の最後に鈴華が被衣を脱ぎ捨てると、響いてきたのは蜷川べにの津軽三味線の音色。その艶やかで華やかな音色は、べにに良く似合う。さらに町屋がなんとエレクトリックギターシタールを持って参戦してくる。これが三味線とユニゾンしクロスカルチャーな不思議な楽曲「河底撈魚」に。

和楽器だけの美曲「Nine Gates」、ドラムと舞という相反性が興味深い「嶺上開花」、そして「河底撈魚」、このセクションを見終わった後、これは様々な文化やサウンドをハイブリッドして独自の世界を築く和楽器バンドそのものを体現していたことに気づき、思わず感嘆。ちなみにこの3曲のタイトルがすべてが麻雀のレアな役(Nine Gates=九蓮宝燈)だというのも気になるところ。


と、ひとしきりメンバーの表現力と技術力を堪能したあとには、会場全体で楽しめるシーンも用意されている。今年で10周年を迎える亜沙作曲の「吉原ラメント」ではスマホ撮影が解禁。桔梗をかたどった和傘を使ってくるくると花びらのように舞う鈴華、その和傘の下で亜沙と一緒に歌うパフォーマンスまで自身のスマホに収めることができる貴重な機会だ。Bメロでは山葵とべに、黒流といぶくろ、町屋と神永がじゃれ合うといったほっこりする姿も見ることができた。そして入場時に配られたオリジナルハリセンを使って、黒流と山葵の叩くリズムを真似するという参加型の企画も行われた。通常のツアーなどでも行われるこの“ドラム和太鼓バトル”という企画だが、今回は一味違う。

その後、突然ステージが暗転しスクリーンに月が投影されたと思うと、ステージのリフターに特大の大太鼓がせり上がってきたのだ。黒流がその身長の倍より大きな太鼓をひとしきり打ち放つと、山葵も『SASUKE』でも見せている俊敏な動作でステージに登ってきて、なんと2人で大太鼓を打ち始めた。諸肌ぬぎになった2人が隆々とした筋肉からバチを繰り出すたびに、遠く離れた席に座っているはずなのに音が直に体を震わせる。なんとパワフルで躍動感のある演奏だろうか。ちなみに黒流が上半身の筋肉をあらわにすることも、山葵が和太鼓を叩くのも初めてのこと。久しぶりに山葵の背中には“猛虎”との文字も浮かび上がっていたが、雄々しく猛々しい2人の姿に会場のボルテージは急速に高まった。


その熱を宿したまま(黒流と山葵は諸肌脱ぎのまま)、「名作ジャーニー」ではスクリーンに映ったリズムゲームを楽しみながら音楽で遊び、ボカロ曲「セツナトリップ」へ。もともとボカロ曲のカバーから始まった和楽器バンドのルーツを感じさせる久しぶりの「セツナトリップ」に、往年のファンも笑顔に。そして本編ラストは十八番中の十八番、「千本桜」だ。イントロの津軽三味線から大きな手拍子がわき起こり、メンバーもステージの端から端まで動きながら笑顔でパフォーマンス。フロント5人が中央ステージに集まって演奏する姿もメンバー同士の仲の良さを感じられた。もう定番の「千本桜」だが、披露されるごとに演奏がパワーアップしているから絶対に聴きたくなるし、毎回心が沸き立ってしまう。そして新しい年の始まりの景気付けのような音玉が鳴り響き、2022年の<大新年会>は大団円を迎えた。

アンコールでは、鈴華が「私たちはエンターテインメントを止めず、届け続けていきます。楽しいときを一緒に重ねていければと思いますので、今年も変わらず応援よろしくおねがいします」と宣言。そして8人が集まって初めて形にした「六兆年と一夜物語」が披露された。あの頃の「すごいバンドが出てきた!」という気持ちを思い出しつつも、あの頃からサウンドが進化し続けていることにも感慨深くなる。応援し続けて良かった、そう思わせてくれる和楽器バンドは素敵だ。


オーラスは、コロナ禍以前はアンコール代わりにファンが合唱していた特別な曲「暁ノ糸」。尺八と箏の旋律から、黒流と山葵が同じ動作で振りかぶって大太鼓とドラを打ち放つ。この荘厳な始まりから鈴華の詩吟の節調を取り入れた歌唱、洋楽器隊と津軽三味線の疾走感ある演奏で“空の彼方”へ連れていかれる名曲だ。 “我等謳う空の彼方へ / 君に届くように” “いつか醒める夢の居場所で 笑い合っていられる様に 重ね紡いでいく” という歌詞が、この未だ先の見えぬコロナ禍における各々の居場所を再確認させるようで、ぐっときてしまったのは私だけではないはずだ。

ここまで<和楽器バンド 大新年会2022 日本武道館 ~八奏見聞録~>の模様を追って、そのひとつひとつのシーンで思ったことを記してきた。実はこれ以上にも「あの時あのメンバーがこんな表情をしていた」「この曲のこのアレンジが良かった」といったように書きたいことはまだたくさんある。でも、その細かな部分は会場にいた一人一人の胸にあるはずだし、これから和楽器バンドを知る人にはその目で確かめて欲しい。ここまで記したように、和楽器バンドの<大新年会>は、サウンドも演出もファンとのコミュニケーションも、全てが大入りの福袋のようなもの。2022年はこのライブの素晴らしさを分かち合えるファンが、もっともっと増えていくことを願う。

取材・文◎服部容子(BARKS)
写真◎上溝恭香



セットリスト

M00.Overture〜八奏見聞録〜
M01.戦-ikusa-
M02.白斑
M03.情景エフェクター
M04.起死回生
M05.オキノタユウ
M06.シンクロニシティ
M07.Starlight
M08.細雪
M09.Eclipse
M10.Nine Gates
M11.嶺上開花
M12.河底撈魚
M13.吉原ラメント
M14.ドラム和太鼓バトル 月打〜GACHIUCHI〜
M15.名作ジャーニー
M16.セツナトリップ
M17.千本桜

EN1.六兆年と一夜物語
EN2.暁ノ糸

WOWOWプラス 放送番組情報

2月27日(日)19:00~
WOWOWプラス:https://www.wowowplus.jp/program/episode.php?prg_cd=CIIDM21066
収録日:2022年1月9日
収録場所:東京 日本武道館

◆和楽器バンド オフィシャルサイト
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