【インタビュー後編】Qaijff、譲れないものを取り戻した2人が向かう先

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■一夜限りだけど、それだけで終わらないようなコンサートだった

──オーケストラコンサートそのものは一夜限りの時間だったけど、とても意義のある試みでしたよね。

内田:本当にやってよかったです。言葉にできない感動が作れると信じてやってきたし、お客さんたちも圧倒されるような興奮を実際に味わってくれたと思うので。

森:今までに味わったことがない感情だもんね、これは。

内田:いっしょにコンサートを作り上げたスタッフや名古屋音楽大学オーケストラのみなさんに「楽しかった」と言ってもらえたのも嬉しかったです。共演者の方々にも僕らの音楽への情熱みたいなものが届いたのかなって。サポートしていただくにあたって、ただ仕事として依頼して終わりじゃお互いつまらないじゃないですか。せっかく時間をかけてやるのに。

──確かに。

内田:なので、ひとつでも多く“Qaijffとやってよかった”と感じてもらえるポイントがあるように、自分たちなりに最高のアレンジをして熱を伝えられるようにと、心がけていました。

森:表面的に見たら一夜限りだけど、それだけで終わらないようなコンサートだったよね。この熱量を持続して、今後にも繋げていきたいです。


──本番で覚えていること、印象に残っていることなどは?

内田:4曲目に演奏した「meaning of me」でイヤモニの線が抜けちゃって、実はあそこだけずっとモニターできてなかったんです。

森:えーっ! 知らなかった(笑)。それはビビるね。

内田:焦ったね。でも、誰にも気づかれないようにベースを弾き切りました。あのときの集中力は、我ながらすごかったです(笑)。あとは、「snow traveler」かな。オーケストラアレンジを特に試行錯誤した曲なので、いい演奏ができて嬉しかったです。



森:みんな、すごくがんばってくれたよね。バイオリンの新井桃子ちゃんも大変だったと思います。オーケストラ全体を仕切るコンサートマスターを大学3年生の彼女に引き受けてもらったんですけど、在学生だけで演奏した前回の配信ライブとは違って、今回の公演は卒業生や先生たちも混ざっているメンバーなので、相当なプレッシャーがあったはずで。

内田:先輩もたくさんいるし。

森:でも、ネコさんのサポートもありつつ、見事に務めてくれて。本当にかっこよかった!当日ラストに演奏した「ナンバーワン」を、桃子ちゃんは泣きながら弾いていたらしくて。そういうのを聞いて、私たちもまた嬉しくなったり。

──やっぱり、2人が必死に取り組んできたからこその成功だと思います。その姿勢に突き動かされてエネルギーが生まれている感じもしました。

内田:ありがとうございます。“どうせやるなら、全員に楽しかったと思ってもらいたい”というのは、リハのときも言葉で伝えていたから。それがよかったのかもしれないですね。

森:ネコさん同様、サポートドラムの深谷雄一さんにも、私たちのためにめちゃくちゃ時間を費やしていただきました。幸宏が活動休止になって以降、Qaijffをサポートし続けてくれて、前回の配信ライブも今回もオーケストラとバンドが混ざった複雑なアンサンブルの中、音のバランスを取るのが難しいポジションでリズムの中核を担ってもらって。


内田:ドラムは本当に大役だよね。クラシックホールに合わせたダイナミクスのコントロールとか。深谷さんだからこその対応力で成り立った部分がかなり大きいです。

──森さん自身はどうでしたか?

森:私はなんだろうな……こんなにも一曲一曲すべてが濃密なステージは初めてだったので、何から話したらいいのか迷っちゃうんですけど、個人的にはオーケストラをバックにああいうふうにセンターで歌ったこともなくて。ピアノを弾いて歌っているのとはぜんぜん違う感覚で、すごく新鮮でしたね(「通り過ぎていく」「meaning of me」「変わって」の3曲はピアノなしで歌唱)。



──緊張は大丈夫でした?

森:驚くことに、あまり緊張せずにやれました。“あれだけたくさんの人たちの真ん中にボーカリストとして立つわけだから、私がしっかりしなきゃ!”みたいな想いがうまく作用したのかな。気持ちがバシッと固まった感じがあって、めちゃくちゃ楽しめたんですよ。第1部が終わって舞台裏に戻ったときも、「楽しいー!」って言いまくってましたもん(笑)。

内田:僕も緊張はなかったかな。やれることは悔いなくやってきた実感があったから。もしミスったとしてもしょうがないと納得できるというか。良い心境で臨めていました。

森:演奏しながら聴こえてくる音に、自分自身も感動してましたね。音の世界にすごく集中できていたので、緊張で余計なことを考えるとかがまったくなかった。お客さんも今回は着席で声を出せない状況だったし、同じように深く入り込めていたんじゃないかと。

内田:入り込んでくれていたと思うよ。「Wonderful Life」のアウトロも最高でしたね。大人数で刻んでいくフレーズがあるんですけど、そこが気持ちよすぎてゾワゾワした(笑)。言語化できない感動がいちばん味わえた瞬間かもしれない。

森:私もあそこはヤバかったー!

──お客さんもいろいろ感じてくれていたと思います。

森:終始着席で聴いてもらうのって、今までのQaijffのライブでは一度もなかったんですよ。過去にホールでワンマンをやったときも、絶対にセットリストのどこかで座席を立ってワーッとなるような瞬間を必ず作ってきたので。その点も新鮮でしたね。クラシックホールやオーケストラのスタイルに慣れていないお客さんがおそらく大半だったんですけど、いい緊張感が漂う中、音を感じてくれているのが伝わってきました。

◆インタビュー(3)へ
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