【対談連載】ASH DA HEROの“TALKING BLUES” 第12回ゲスト:JESSE [RIZE / The BONEZ]

ツイート

■あきらめるってことを、まずあきらめる
■そこから始めようってのがテーマ

──挫折も知っている男の歌詞ですよね、The BONEZは。

JESSE:まあ、そうだね。

ASH:RIZEは“強い、パワー、元気が出る”っていう感じのリリックで。

JESSE:フリークショー(見世物)だね、RIZEは。本当はフロントマンに一番華がないといけないのに、俺は意外と2〜3番手にいたけど(笑)。

ASH:いや、そんなことないでしょ!!

JESSE:いや、サッカーで例えたらRIZEはスリートップだからさ。ロナウドが3人いるみたいな。

ASH:それは分かる(笑)。メッシとロナウドとネイマールが同じチームにいるみたいなのがRIZEでしょ。


JESSE:ははは。JESSE & The BONEZをやる前に、俺はSPANKY-Zってヤツと1DJ&1MCのユニットを組んで、クラブでやってたわけよ。その時期にKenKenがソロをリリースして。ベースはもちろん、ドラムを叩いて、ギターを弾いて、メロディもやって。ファンクを土台にした音楽なんだけど、本当にKenKenが好きなことを純粋に追求して自分の音楽を作っていたんだよね。で、“これはスゲー”と。そうしたら1年も経たないうちに、あっくん(金子ノブアキ)もソロをリリースしたんだよ。お兄ちゃん的にも、KenKenから俺と似たような衝撃を受けたんだろうね。それに対する弟へのアンサーが、“自分でもやってみよう”ってものだったんだと思う。でね、あっくんはRIZEで一番ギターがうまいと思うよ。

ASH:マジっすか!?

JESSE:例えばパンテラのダイムバッグ・ダレルのギターソロって、他のメタルのヤツと違うじゃん。すごくセクシーで、なめらかで、チョーキングとかも男の俺でさえ“うわっ、色っぽい”と思っちゃうくらいの手つきでさ。あっくんはダイムバッグみたいなの。

ASH:嘘だー(笑)。

JESSE:いやマジで、すっげーカッコいいから。とにかくそんな時期に、“二人とRIZEをやっているときのJESSEはすごいけど、単体のJESSEはあんますごくねえのかも”って壁に当たったわけよ。2008年とか2009年ぐらいだから、ギターのNAKA(中尾宣弘)がやめて、RIZEが3人になったときかな。アルバム『K.O.』を出したツアーのとき、NAKAがライヴのゲネリハでやめて。俺はNAKAが弾いてたフレーズを、残り3日のリハで練習して、ツアーをこなすっていうことになったわけ。それから常に、立って鏡の前で練習して。弾けるようになったら、今度は歌いながら弾いて、それができたら目をつぶって暴れながらでも弾けるようになって。リハはもちろん、ツアー中もホテルにギターを持ち帰って、それを朝の6時ぐらいまで毎日繰り返してた。全ライヴでやったんだけど、“RIZEがすごすぎる、マジで俺はついていけねえ”と思ったよ。

ASH:その話、めちゃくちゃ衝撃的。

JESSE:それで俺は、自分の修行や鍛錬として、ソロ曲っていうのができてったわけよ。全部自分でエレドラ叩いて、ギターもベースも弾いて、47曲ぐらい作って。それをやっていくうちにKenKenとかあっくんみたいなバンドサウンドとは違って、ヒップホップを土台にした音楽になっていったんだよね。

ASH:JESSE君のもともとのルーツが強いものってこと?

JESSE:そう。でもヒップホップだけじゃなく、例えばインキュバスやリンプ・ビズキットとかのブレイクビーツの入れ方も強く出たし。そこに刺激を受けていた十代の俺ってことなんだろうね。

ASH:壁にぶち当たったり、そこから自分で動き出したってのが、JESSE君らしくてカッコいい。普通は天狗になっちゃうでしょ。“俺はRIZEのフロントマン、カリスマ”ってなってもおかしくない。


──ところがRIZEの他のメンバーのソロを聴いて、“自分はこのままではいかん”と大いに刺激をされたわけですか。

JESSE:というか、“俺はやめたほうがいい”とすら思ったんだよね。バンドを始める前に親父から「十年一芸」って言われて。「7〜8年であきらめるな。でも10年やって、11年目に入ってもやれてなかったら、即あきらめて、次のことを始めろ」って。それは音楽だけじゃなくて、何でもそう。俺は音楽を20年やっちゃってるから、もし間違っていたとしたら…俺はだいぶ間違ってるってことだよ(笑)。だけどやってるってことは、“まだまだ自分はこんなもんじゃねえ”と思ってるってことで。そう思っていたほうが後々、いい気がする。本能的にね。

ASH:これを読んでる何か夢を追っているヤツとか、何か頑張っているヤツには、ものすごいエールになる話だと思う。満足したらそこで終わってしまうし。

JESSE:口に出して言うとカッコよく聞こえちゃうじゃん、「満足したらそこで終わり」って。でも本当にそうなんだよ。満足したら終わる。けど、満足したい。ここがゴールってところに辿り着いてみたら、“いや、ここでは満足できない、次のゴールを見つけちゃってる”と思えたら、っていう話だよね。

ASH:本当にそう思う。だからずっと不満でいなきゃいけないっていう(笑)。ずっとフラストレーションとの闘いではあるんですよ。俺がソロからバンドになったというのも、そこだから。

JESSE:やっぱバンドじゃなきゃ出せないものを見つけちゃったんでしょ?

ASH:そうだし、俺もデビュー前はバンドやってたから。でも一回、俺はバンドというものをあきらめたんですよ。バンドをやるからには俺はマジでやりたかったけど、4人組のバンドだったら3対1になるし、3人組のバンドだったら2対1になる。最後にやってたバンドでは、リハの日にスタジオに行ったら、誰も来なくて。しかも、バンドの資金源を作るためにバイトしてたはずが、バンドの金庫から音楽活動以外のことでメンバーが金を借りるようになって、「何のためにバイトしてんだ? 何のためにバンドをするんだ?」って話になったんですよ。そうしたら、「金の話をするヤツは嫌いだ」とメンバーから言われて。そんな日々が続いて、“俺は集団は無理かも”と思っちゃったんですよね。最後のバンドが終わったとき、“俺はこれで音楽やめよう”と。でも気づいたら、曲を作っていて、その曲がきっかけで今のマネージャーと出会ったり、ソロを始めるときのサウンドプロデューサーと出会ったり。そこからソロとしての活動が始まっていったから。だから俺は、バンドを一回あきらめたし、“バンドごっこならやりたくない”って気持ちがめちゃくちゃあった。でもソロを始めてから、“コイツとならバンドやってみたい”ってヤツらとも出会うわけで。「俺はバンドに向いてねえし、バンドやりたくない」って言ってたのは、たぶん相当愛が強いからで。

JESSE:間違いないね。


ASH:相当好きじゃないと、嫌いにならないし、そんな感情にもならないと思うから。それで自分に対して“もっと素直になれよ”って徐々に思うようになって、“組みたいって思えるヤツと出会ったんだったら、ソロがバンドという形でブーストするのはすげーロックンロールじゃん”とも思って。やっぱりあきらめ切れるほど夢って簡単なもんじゃないから。あきらめ切れるなら、俺は最初からあきらめていたと思う。

JESSE:バンドでまだ夢見てないって感じだった?

ASH:それこそ、“JESSEと対バンしたい”ってのも夢だし、“もっとデカい箱でやりたい”とか“俺達の曲をもっともっと聴いてくれよ”って思いとか、そういうところにあきらめ切れないからバンドになった。“あきらめるってことを、まずあきらめるところから始めよう”ってのがテーマで、バンドになったという感じっすよね。

JESSE:そこまで強い思いでASHが組んだバンドと対バンできるのは、すげー楽しみだよ。

◆対談【3】へ
◆対談【1】へ戻る
この記事をツイート

この記事の関連情報

*

TREND BOX

編集部おすすめ

ARTIST RANKING

アーティストランキング

FEATURE / SERVICE

特集・サービス