【コラム】SixTONESの言葉から逃げられない。苦しく、切ない「わたし」の魅力

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(c)Sony Music Labels Inc.

出会ってしまったら、もう、逃げられない。
自分らしく、好きなものに囲まれて、誰よりも自分を大事に。そうすることで、毎日を不満なくすごし、生きてきた。それなのに、運命の恋に出会ってしまったら、もう、逃げられない。たとえどんなに、何年積み重ねてきた“わたし”だろうと、一瞬で崩れ落ち、心は奪われていくのだ。もう、目をそらすことはできない。それがどんなに辛いものでも、苦しいものでも、この気持ちを無いものとすることは、不可能に近い。

そう、自分以外の他人を好きになると言うことは、これまでの“わたし”を奪っていくことなのだ。どんなに足掻いても、逃げようとしても。たとえ、その場で逃げられたと思ったとしても、その想いは一生身体中にまとわりつく。逃げてしまえば、なおさら――。

SixTONESの新曲「わたし」は、そんな出会ってしまった運命の相手に、心を奪われ、知らぬ間にその人の言葉すべてが身体中に響き渡り、自分で作り上げてきた“自分らしさ”をいとも簡単に奪い取っていく状況を歌った、狂おしい恋愛のはじまりを描いたエモーショナルなミディアムバラードだ。

◆ジャケット

▲初回盤A (c)Sony Music Labels Inc.

恋愛はいつも想定外の気持ちの揺れを巻き起こす。そんな心情を「有り得ないところまで 心が動き出す」という言葉と、繊細で、でも芯の強いピアノと共に表現している。シンプルでいながら、どこか緊張感漂うサウンドと、予測していなかった出会いに、崩れていく“わたし”に戸惑いながら、もがきながら、できるなら、この気持ちを否定したいけど、できないという心情が描かれた歌詞が重なり合うこの曲は、本当であれば嬉しくて、楽しい恋愛のはじまりを、こんなにも苦しく、切ない曲に仕上げている。それは、『恋なんて、本気でやってどうするの?』の挿入歌のために書き下ろされたからだろう。

広瀬アリスが演じる主人公、桜沢純は、男癖が悪く、愛を十分に注いでくれなかった母親の影響で恋はしないと決めていたのだ。対する松村北斗が演じる長峰柊磨も、複雑な家庭で育ち、特定の恋人を持たない主義だったのだが、この2人が出会い、本当の愛を知ることで、気持ちが変化していく様を描いている。この曲は、純の心情はもちろん、柊磨の心情ともリンクし、“本物の恋とは”を問いかけながら、気持ちと向き合っていく姿が映し出されていく。果たして、この曲の歌詞のように、“その意味は”“その価値は”と自問自答しながらも、自分が自分ではいられなくなる気持ちをどう受け止めていくのか――。ドラマの中でも、効果的にこの曲が使用され、より意味を持つ曲として存在しているのも、興味深い。

そしてこの曲は、基本的にユニゾンが少ない歌割りで構成されている。ボーカルを順番に歌い継ぐからこそ、6色の個性の強い音色がより目立ち、まるでセリフを話すように繋ぎ、紡いでいくのだ。松村は繊細で、脆さも感じさせる歌声を、京本は華麗な美しさのなかに、緊張感をはらませ、森本の歌声は自然体だからこそより語り掛けられているように感じさせる。そして伸びやかで色気のあるジェシーの歌声と、危うさと力強さを併せ持つ田中の歌声、さらに安定感と優しさを含む高地の歌声が、この曲の歌詞世界を驚くほどうまく表現している。それぞれが役者としての経験を積んでいるからこその、演技力も確実に歌声に反映されているのだろう。
だからこそ、こんなにも、苦しい。


▲初回盤B (c)Sony Music Labels Inc.

この「わたし」が収録されるシングルには、これまでのシングルと同じように、全く毛色の違うカップリング曲が収録される。

まずは、言葉遊びと歪むギターそしてあえてクセの強い歌声で聴き手をいい意味で錯乱させるミクスチャーポップ、「シアター」。聴くほどに楽曲のこだわりと歌詞世界の深みは中毒性が高い。確実にライブで盛り上がる楽曲となりそうだ。

対する「オンガク」は、一度聴けば誰もが口ずさめるキャッチーで爽やかなメロディがストレートに響く、王道のポップソング。いつもの楽曲のクセがいい意味で強いからこそ、この王道ポップソングが逆に新鮮に聴こえるところもおもしろい。歌うだけで気持ちを軽くしてくれる、まさに音楽が持つ力を体感できる曲となっている。それにしても、この「オンガク」も「シアター」も「わたし」も全く違うタイプなのに歌いこなすSixTONESの実力に脱帽だ。さらに、『オンガク』『わたし』の2曲に関しては、ヒットメイカーであるSAEKI youthKが制作している。アレンジャーが違うとはいえ、タイプの異なる楽曲を生み出すその手腕はさすが。

さらに、ジャニーズアーティストはもちろん、MISIAやK-POPなども手掛けるスウェーデンのソングライター、Simon Janlovが手掛けた「セピア」は、忘れることができない別れた恋人のことを思い出す切ないラブソングだ。でも、どこか希望を感じるのは、清涼感溢れるサウンドが心地よいからこそ。楽曲と歌詞のギャップも楽しんでもらいたい。

そのほか、初回盤Aには「わたし」のMVやメイキング、初回盤Bにはツアー<Feel da CITY>公演から「WHIP THAT」「Everlasting」「Good Times」の3曲がライブバージョンで収録される。そして、通常盤には、「共鳴」のリミックスが聴けるので、これはつまり、何も考えず3枚買うことをオススメする。

このシングルが発売する頃は、ドラマ『恋なんて、本気でやってどうするの?』も佳境。果たして、この曲のように心を奪われた主人公ふたりは、どんな結末を選ぶのか――。ドラマと共に、このシングルもじっくりと味わってもらいたい。

文◎吉田可奈

(2022/5/31追記:記事初出時、本文の一部内容について誤りがございました。訂正してお詫び申し上げます。/BARKS編集部)

▲通常盤 (c)Sony Music Labels Inc.

「わたし」

2022年6月8日発売
カンテレ・フジテレビ系 月10ドラマ『恋なんて、本気でやってどうするの?』挿入歌

■初回盤A
CD+DVD SECJ-45~46
価格(税込) : ¥1,760
スリーブケース仕様

[CD]M1. わたし
M2. 2. シアター

[DVD]
V1. わたし -Music Video-
V2. わたし -Music Video Making-
V3. わたし -Music Video Solo Movie-

■初回盤B
CD+DVD SECJ-47~48
価格(税込) : ¥1,760
スリーブケース仕様

[CD]
M1. わたし
M2. WHIP THAT -Live from “Feel da CITY” -
M3. Everlasting -Live from “Feel da CITY” -
M4. Good Times -Live from “Feel da CITY” -

[DVD]
V1. Documentary of “CITY”

■通常盤
CD SECJ-49
価格(税込) : ¥1,100
初回仕様:スリーブケース+フォトブック20P

[CD]
M1. わたし
M2. オンガク
M3. セピア
M4. 共鳴 -Brave Marching Band Remix-
M5. わたし -Instrumental-

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