【コラム】KIKUNOYU、EVAN、すず…多次元から現れたボーカリスト達の煌めき
“多次元音楽プロジェクト”というアイデンティティを掲げ、新進ボーカリストによる楽曲カバーやシンガーソングライターによるオリジナル曲を送り出しているプロジェクト「UniteUp!」(ユナイトアップ)が近年注目され始めている。一つのチャンネルの中に、クオリティを競い合うようにして様々なシンガーの動画が公開されていく様はネクストブレイクを予感させずにいられない。
近年、様々なアーティストのキャリアから見ても、ボカロPや歌い手の領域とメジャーアーティストの領域とはだんだん地続きなものになりつつある。そんな中で自らの感覚を頼りに、輝きの原石たる歌い手を見つけられたら幸福ではないだろうか。端的に括るなら“この人たち声がいいから聴いてほしい”という話なのだが。今回は特に楽曲カバー動画を公開している「KIKUNOYU」、「EVAN」、「すず」の3人をご紹介したい。
16歳、高校2年生にして歌唱に豊かな余韻を感じさせるKIKUNOYU。初楽曲カバーとなった「ハレハレヤ」はボカロP・羽生まゐごの代表作のひとつとなっている楽曲だ。ミディアムテンポにのせて歌い上げられる和風の世界観に、どこかしっとりとした優しい息吹がこめられたヴォーカルワークは何度でも聴き返したくなる仕上がり。スエカネクミコが手掛けたアートワークで銭湯の番台に佇むビジュアルから、KIKUNOYUのキャラクター像も明らかになった。
TikTokではこのKIKUNOYU歌唱の「ハレハレヤ」が海外層の人気を獲得。動画コメント欄には様々な国の海外ファンからのコメントが多数寄せられている。和モノとボカロ曲の合わせ技がなんともツボを押してくるが、KIKUNOYU自身の地の歌唱力の高さはおそらくこの先他ジャンルの楽曲でも生かされてくるだろう。
続いてEVAN(エバン)。現段階では“ルックスや国籍は不明”としつつ、動画では金髪の王子様然としたビジュアルに甘くクリーンな歌唱をのせてくる。カバーしているのはAimerの名曲「カタオモイ」だ。原曲ではAimerのハスキーな声質が生かされていたが、EVANによるカバーではギターのアルペジオにのせて、一歩こちら側へと距離を近づけてくるような耳馴染みのいいボーカルワークを聴かせてくれる。女性ボーカルから男性ボーカルに変わったことで切ない歌詞がまた違った角度から聞き手の心にやさしく触れてくるのも堪らない。どうしてこんなに聴く側をほっとさせる歌が歌えるのだろうと想像も膨らむばかりだ。
EVANはYouTubeを中心に活動中とのことで、今後の新作も気になるところ。なっつ豆によるアートワークも含め動画にはEVANに魅せられた人々のコメントが多数寄せられている。
そして、今春「春よ、来い」のカバー動画を公開した“すず”。原曲は言わすもがな松任谷由実、世代を超えたポピュラー・ソングに正面から挑んでいる。エレクトロアレンジしたオケ音源がどこか奥ゆかしく音景を生み出す中で、すずのボーカルはストレートな強さと青さ、瑞々しさを感じさせるものだ。サビの高音から最高潮を迎える日本語歌詞の響きに酔いしれつつ、なるべく一つでも多くの語彙を歌い上げてほしい、聴いてみたいと思わせる歌声だった。
アートワークは北沢きょうが手掛け、春爛漫の桜と光を浴びながら巧みに扇子の向こうへ身をひそめる“すず”の姿を捉えた。今はまだ謎めいた存在だが、この先扇子の向こう側の人となりも、歌声とともに明らかになるのかもしれない。
UniteUp!にはこのほかにも、“多次元”の強みを生かした新星シンガーソングライターやシンガー達を何組も擁している。KIKUNOYUやEVAN、すず達との相乗効果もあるのか土台の歌唱クオリティはいずれも折り紙付きだ。彼らの今後の成長を確信しつつ、新たな次回作が待ち遠しい。
文◎矢上 昆
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