【コラム】あらゆるものは当たり前に混じり合う。<New Year Rock Festival>が体現する多様性

ツイート


故・内田裕也が立ち上げた日本最長寿の年越しロックフェス<New Year Rock Festival>。第1回の開催は1973年にまで遡るという。50周年というアニバーサリーである今回は、BADHOP、ANARCHY、Zeebra、呂布カルマらヒップホップアーティストが名を連ねている。


「<NYRF>になぜヒップホップ?」と思う人もいるかもしれない。だが歴史の紐を解いてみると、ヒップホップは常にロックのすぐ側にいた。ヒップホップは既存の音楽様式とまったく異なる構造だったため(歌わない、弾かない、他人の曲の一部を勝手に使うなどなど)、あまり気づかれていなかっただけだ。

1973年。おそらくヒップホップはまだ生まれていない。ただその雛形となるパーティーは開催されていたかもしれない。それはニューヨークのスラムだったブロンクスの多目的室で行われていた。主催者はDJクール・ハーク。一般的には1970年代半ばから始まったと言われている。

当時のブロンクスの風景を知りたければ、ウォルター・ヒル監督の映画『ウォリアーズ』をおすすめしたい。貧困層の白人、アフリカ系、ヒスパニック系の若者がギャング団を結成して、抗争に明け暮れていた。当時のハリウッド事情を鑑みるに、おそらく実際はもっと有色人種がいたはずだ。クール・ハークのパーティーは、殺伐としたブロンクスにおける数少ないまともな娯楽だったからいろんなやつらが集まった。中でも特に注目したいのは、ヒップホップの音楽的な基礎であるブレイクビーツを発明したグランドマスター・フラッシュと、ギャングのボスでありながら音楽マニアだったアフリカ・バンバータのふたりだ。

ヒップホップはギャングカルチャーに影響を受けていたが、最初期の音楽性はパーティーミュージックだった。いかにして躍らせるか。クール・ハークのパーティーに来る客の目当てはとにかく馬鹿でかい音で鳴るドラムだった。極論、ドラムだけでも良かったのかもしれない。だからグランドマスター・フラッシュは2枚のレコードを使って、イントロや間奏にあるドラムブレイクだけを延々と繋げるアイデアを思いついた。

ヒップホップの根幹にあるのは「金がないなら頭を使え」「カッコよければなんでもいい」という考え方。だからスクラッチがアリになる。その奇想天外さが世界中のコアな音楽ファンを魅了した。かなり最初期に飛びついたのが、セックス・ピストルズを世に送り出したロンドンのマルコム・マクラーレンであり、ニューヨークのブロンディのデボラ・ハリーであり、伊勢の藤原ヒロシだった。

この並びからもわかる通り、当時“非”音楽家と言われていたパンクスがヒップホップにフィールした。だがとても興味深いのはロックやパンクが社会からの逃避や離脱を歌い、金を忌避していたことに対してヒップホップは礼賛したこと。この違いはプレイヤーを取り巻く環境に由来している。ロックは中産階級、パンクは労働者階級、ヒップホップは最下層。社会の外にいた人たちのムーブメントだった。最下層の人たちは逃げる場所がない。「ここではないどこか」を求めた結果、社会に合流することを目指した。だからこそヒップホップは「One for The Money, Two for The Show」なのだ。まずは金。グレーなライフスタイルから抜け出すために歌うのだ。生きるための金をヒップホップで稼ぐ。その伝統はいまだに続いている。BADHOPやANARCHYの経歴を見ればそれはよくわかるはずだ。


BADHOP


ANARCHY

今、日本でも多くの若者がまずマイクを握る。なぜか。ひとつは簡単だから。iPhoneがあればラップを始められる。もうひとつは昔よりも若者が貧しいから。さらにいえば、Zeebraが約30年かけて「ヒップホップとは何か?」を長年かけて丁寧に紹介し続けてきたからだ。1980年代、1990年代に暴走族やチーマーになっていた若者たちに音楽という可能性を与えた。その結果が今こうして形になっている。この文章も彼の存在なくしては書けなかった。


Zeebra

あらゆる事象がほぼ可視化された現代において、「~らしさ」というカテゴライズにこだわるのは前時代的だ。個人のこだわりは尊重する。だが同時に他人のこだわりも尊重する。だからあらゆるものは当たり前に混じり合う。50周年を迎える<NYRF>のラインナップを見て、そんなことを思った。

文◎宮崎敬太



<50th New Year Rock Festival 2022-2023>

2022年12月31日(土)東京・東京ガーデンシアター
OPEN 18:00 / START 19:00
出演:ANARCHY、Zeebra、湾岸の羊~Sheep living on the edge~、DJ MASTERKEY、加藤ミリヤ、the LOW-ATUS 、DELI / DABO / SUIKEN / BIGZAM(NITRO MICROPHONE UNDERGROUND)、RUEED、DIR EN GREY、KYONO、瓜田夫婦、高橋和也(男闘呼組)、呂布カルマ、シーナ&ロケッツ、カイキゲッショク、亜無亜危異、AI、The BONEZ、J-REXXX BAND、BAD HOP、般若、KATAMALI

Co Producer Zeebra
Produced by HIRØ

チケット:アリーナ自由/スタンド指定 各¥9,900(税込)
チケット購入:https://diamond-ticket.com/blog/2022/12/08/50th-new-year-rock-festival-2022-2023/

<N.Y.R.F.50 ポップアップストア>

2022年12月21日(水)〜12月31日(土)東京・渋谷PARCO 2F

<50th New Year Rock Festival 2022-2023>渋谷ジャック

ADトラック走行:2022年12月29日(木)まで 渋谷−原宿
MIYASHITA PARK 横丁入口看板:2022年12月29日(木)まで
渋谷駅ハチ公前 街頭フラッグ掲出:2022年12月30日(金)まで 渋谷駅ハチ公前−道玄坂−東急文化村−センター街入口

この記事をツイート

この記事の関連情報