【インタビュー】KANATSU、朝ドラ挿入歌とダンサーの二面性を持つ謎多き素顔「歌をやめちゃったら、もう私ではなくなる」

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■母親になるというプレッシャーが大きかった
■今のうちに音楽活動をやれるだけやりたい

──上京当時から自分で作曲や作詞も始めていたんですか?

KANATSU:上京したての頃はあまりしてなかったです。また違う出会いもあって、下町兄弟の工藤玄実さんという、ご自身もメジャーデビューされていて、いろんなヒットソングを出している方なんです。

──下町兄弟はラップユニットですよね。工藤玄実さんは作詞作曲、編曲も務める音楽家で、ジャニーズや和田アキ子、SPEEDやアイドルなど幅広く楽曲提供されています。

KANATSU:そうです。工藤さんと一緒に曲作りをする機会ができて。工藤さんは、私の思いを大事にしてくれる方で、「どんどん自分でメッセージを書いてみて」とか「メロディを作ってみていいよ」とか背中を押してくれたんです。そういう形で曲作りを始めた頃にとても悲しい事が起きてしまうんです。

──と言いますと?

KANATSU:当時付き合っていた人が事故で亡くなってしまったんです。その後、彼への想いを歌ったアルバムをインディーズ時代に作りました。それがきっかけで自分の思いを綴った曲が増えていったんです。たぶん2010年くらい。エイベックスから再デビューする前ですね。



──そうした悲しみから何かを生み出すことは、とても重い作業になりそうです。

KANATSU:そうですね。でも、そこで救われたところもあったのかもしれない。

──自分で曲を作るようになって、表現者として変わってきたことは何かありますか?

KANATSU:これはここ最近の話なんですけど、“人がいいと思ってくれる自分の歌声って、こういうところなんだな”というのが、ようやくわかってきたんです。それまでは、憧れているアーティストと自分を比べながら、それに近づけるようにしたり、“もっとうまく歌いたい”とかカッコよく歌うためのトレーニングをしてきたんですけど。意外と皆さんから、自然に力が抜けた感じで歌ったほうがいいと言ってもらえて、伝わるということに気づいた感じです。

──その気づきは、自分ではどう感じているんですか?

KANATSU:嬉しいですね。若さとかではなく、等身大のメッセージを伝えることは、私にとっては自然なことなので。ダンス曲を歌って踊ることとは別に、自分の内側を見られているような恥ずかしさもありつつ、歌にも自分の思いを込めやすいですから。そういう”伝えたい”という素直な楽曲が多くなってきたと思います。

──なるほど。話を戻しますが、インディーズ活動後、エイベックスから再デビューしたのが2015年ということですが。

KANATSU:はい。歌手・アーティストとして大きなコンセプトのあるプロジェクトで活動していました。そのときは、ハイトーンボイスの曲が多かったんです。始動当初はハイトーンも出ていたんですけど、その後、ハイトーンボイスでガタがきたというか、発声があまりちゃんとできていなくて、無理があったのかな。思う通りに声が出なくてしまい、悩んでいた時期が5〜6年続きました。精神的なものも、今考えたらあったのかもしれません。


──シンガーとしての活動を続けつつ、ご結婚される前には音楽とは離れていた時期もあったそうですね。

KANATSU:完全には離れていないんですけども、喉を痛めてしまったのもあり。歌は続けたいし、でも自信を持って歌えないし、これではプロとは言えないだろうという葛藤があったので、とりあえず諦めないで練習だけしていた時期でした。苦しい時期でしたけど、そのときにささやくような優しい歌声というか、自分らしく歌うことを学んでいく時期でもありましたね。

──音楽をやめられないと思ったのは、それだけ好きだという思いが強かったからですね。

KANATSU:歌をやめちゃったらもう私ではなくなるというか。歌やダンスがあって、今の私があるし、皆さんと繋がってこれた。それがなかったら自分らしくいられないというか。堂々といられないなって。

──意地でもやってやる!くらいの思いも?

KANATSU:意地もあります(笑)。

──2020年にはKANATSU名義で新たにソロを始動しましたが、練習だけしていたような時期からどうやって現在の活動へとつながっていくんでしょう。

KANATSU:あるボイストレーニングの先生に師事したことで、口の動かし方を教えていただいて、枯れていた声の部分が軽減されて、少しずつ自信が持てるようになっていったんです。そういう中でソロとして朝ドラ『半分、青い』の挿入歌や映画『イマジネーションゲーム』の挿入歌を担当させていただいて、少しずつ取り戻していきました。ところが、コロナ禍でステイホームだったり、当時お腹に赤ちゃんがいたこともあって、“暇なのは嫌だな”って思ったりして(笑)。とにかく曲をたくさん作ってレコーディングをしていたんです。よりやる気になったという感じでしたね、妊娠中に(笑)。

──お腹にお子さんがいることで芽生える思い、発する思いの感覚的な変化というのはあるんですかね?

KANATSU:母親になるというプレッシャーみたいなものが大きかったです。いろんな思いがあって音楽活動を今のうちにやれるだけやりたいっていう気持ちになったんです。特にコンセプトは決めず、1曲1曲作っていって、それが形となったのが『Prayer』です。


──2021年4月にリリースされたアルバムですね。

KANATSU:はい。2022年9月にリリースしたシングル「2020」もアルバム『Prayer』も、全部妊娠中にレコーディングをしていたんです。すごく忙しく楽しく過ごした妊娠期でした。

──妊娠中にアルバム1枚とシングルも作ったという。これ、結構タフですよね(笑)。

KANATSU:その間にゴルフへ行ったりもしてましたから(笑)。ジムも週2回通って、より頑張ろうという気持ちと、母親になってしまう前に自分ができることってなんだろうという焦りみたいなものとか、いろんなものが重なってすごくパワフルでした。

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