【インタビュー】鍵盤奏者の平畑徹也、ヨルシカや高橋優、キタニタツヤなど9名のゲストを迎えた初アルバムに音楽人生の総括「自分自身を再確認できた」

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■こういう声の人に
■この曲を歌って欲しいっていう直感

──ふとしたきっかけで出会った方々とのご縁で生まれた曲という点だと、緑黄色社会のpeppeさんがピアノを弾いている「サイトシーイング」もそうですか?

平畑:高橋優くんのサポートのお仕事でテレビに出た時、緑黄色社会も一緒だったことがあったんです。その時、ドラマーの比田井修さんの紹介で挨拶をさせていただいたのがpeppeちゃんとお会いした最初でした。僕が鍵盤系雑誌とかに出ているのを彼女は見てくれていたみたいで、そこからの繋がりです。鍵盤のアプローチのセンスに近いものを感じたので、SNS上で時々連絡を差し上げていたんですよね。

──peppeさんが参加した「サイトシーイング」は2台のピアノによるインストですが、どういう経緯でお声がけしたんですか?

平畑:“クラシックをやっていたけど、ポップスで頑張っている人”っていうpeppeちゃんのイメージが僕の中にあって、この曲のことを考えていた時に“声をかけてみようかな?”って思い浮かんだんです。

──曲を作るにあたって、どのようなことを考えました?

平畑:同業者に“おっ!”となってもらえるものにしないといけない、という自分の中のプライドがありました(笑)。自分のセンスを徹底的に磨いて作った曲ですね。僕のパートも難しいんですけど、peppeちゃんのパートがすごく難しいんですよ。“ごめんね!”って思いながらデモを送りました(笑)。あと、これもみゆなとの「よるのとばり」に近い感じで、同じ部屋でピアノを並べて録ったんです。あの緊張感の中での2人の演奏を音源として残せたのも嬉しいです。

──音の定位も画期的な曲です。

平畑:レコーディングの時は横並びで録ったんですけど、2人で弾いてハモっているところを活かすために、僕の定位だけ逆にしました。“2人でハモりのメロディパートを弾いてるよ”っていう聴かせ方にしたかったので。もともとのままだと、“低音が左側で高音が右側”っていう1人で弾いているのとそんなに変わらない印象なんです。

──だから平畑さんの定位だけを逆にしたと。

平畑:そうすることによって、イヤホンやヘッドホンで聴くと、“2台のピアノが向かい合って弾いている、その間で聴いている感じ”になるんです。ちなみに僕がヤマハのC3、peppeちゃんがスタインウェイのビンテージのニューヨークのD-274を弾いています。ピアノの質感の違いを聴き分けるのも楽しいかもしれないですね。


──各曲にその曲ならではの聴きどころがありますよね。「先日はロマンス」は、ヨルシカのsuisさんが初めて作詞をしたという点でも注目です。

平畑:バラードに近いミディアム曲やから、綺麗な歌詞になることは想像できていたんですけど、随所に独特な表現があるんですよ。suisさんは楽器の音もすごく聴いてくれていると思いました。歌詞が楽器の音とリンクしている感じが結構あるんですよ。音楽と共存する歌詞としても、これはすごく綺麗です。

──歌に関しては、ヨルシカでのsuisさんとはまた別のニュアンスですね。

平畑:ヨルシカでのsuisさんは、楽曲毎にキャラを歌い分けているんです。そういう中でも低めの音域の男性っぽいものが多い印象があって、凛としているんですよね。だからこの曲では、かわいいsuisさんを表現したいと思っていました。suisさんはすごく優しくて、キュートな一面がある人やから、そういう部分もファンのみなさんに伝えられたらいいなって思いながら作曲しました。

──“suisさんが作詞した曲をもっと聴いてみたい”という声も上がりそうです。

平畑:実は今、「先日はロマンス」のMVを作成中なんですけど、そのディレクションはsuisさんなんですよ。そういう方面でもこの先、開花していくかもしれないですね。


▲『AMNJK』通常盤

──8曲目の「Armando」はピアノインストですが、どのようなことをイメージしながら作ったんでしょうか?

平畑:ジャズピアニストとしてチック・コリアが僕にとって大きな存在で、最初に彼の演奏に触れたのがライブアルバムだったんです。僕はジャズピアニストという肩書ではないけれども、“チック・コリアからの影響を形に残すならば、どんなことになるかな?”と思いながら作曲したピアノソロ曲が「Armando」です。

──“Armando(アルマンド)”って、人名ですよね?

平畑:チック・コリアの本名です。彼が作曲した「Armando's Rhumba」っていう曲もあるんですけど。曲名にチック・コリアって入れるよりも、ちょっと匂わせでこういうほうが良いのかなと(笑)。自分が影響を受けた人のことも曲に入れることによって、“こういうピアニストがいたんだ?”とか、アルバムを聴いてくれたみなさんに知っていただけるきっかけになったら嬉しいです。

──各曲に反映されているエッセンスも幅広い。「アバウトタイム」はロックサウンドですが、reGretGirlの平部雅洋さんと知り合ったのは?

平畑:比較的最近ですね。先ほどお話ししたように、“お付き合いの年月が長い”っていうことだけでなくて、“今、一緒にやりたい人をお招きしたい”っていうのもあったので。平部くんとは出会って1年くらいのタイミングで声をかけました。“こういう声の人に、この曲を歌って欲しい”っていう直感でしたね。彼にこういうエモーショナルな曲を歌って欲しくて作曲しました。歌詞は平部くんです。reGretGirlは失恋の葛藤の視点での作詞が多い印象ですけど、それとはまた別の“人生”みたいなところに触れて欲しいみたいな話をして、そこからいろいろ考えて歌詞を書いてくれたんだと思います。

──サウンド面に関しては、どのようなことを考えていました?

平畑:僕も邦楽ロックを通ってきているので、J-ROCK的な8ビートのストレートなものにプラスして、ピアノの音像も加えたいと思っていました。“40歳を過ぎても、こういうエモいのができるんですよ”っていう表現もしたくて、そのために若い平部くんの力を借りたっていうこともあるかもしれない。そういえば、ミトンのスタジオでリファレンスとしてグリーン・デイの「アメリカン・イディオット」と聴き比べたんですよ。あの曲に勝ちに行こうとした曲でもあります。その結果、特にドラムやギターの音色に関しては、洋楽っぽいテイストに仕上がったように思います。

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