【インタビュー】お風呂でピーナッツ、世界的モデルと技巧派ミュージシャンが揺さぶるエモーション「孤独というものがテーマ」

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■自分との向き合いを大切にしていくのが
■孤独の解決への糸口ではないか?


──派手さがないからこそ、繰り返し聴きたくなる味わいがあるし、独特のもの悲しいムードがクセになります。でも間奏では尖ったギターソロも聴けたり、感情の起伏はかなりあるなと感じます。

若林:アレンジについて話すと、この曲でチャレンジングだなと思うところは、キーボーディストの中西司くんと一緒に作った、ストリングスアレンジが入ってること。後半に出てくるんですけど、ストリングスと歌だけ、みたいなセクションを今まで作ったことがなくて、メロディのきめ細かい動きがあるからこそ成り立つし、歌詞のメッセージ力が強いからごちゃごちゃさせたくなくて、曲的にはあんまり暗くしたくないとか、バランスを取りながら詰めていった記憶がありますね。どうですか可弥子さん、何か覚えてる?

樋口:歌詞の話になっちゃいますけど、今ずっと、若林くんがしゃべってる間に歌詞を見直していて…これを書いた時期のちょっと前ぐらいから、もっとドラマチックに歌詞を書くことにトライし始めたんですね。1st EP (『スーパー銭湯』2021年発表)の時は、情景を描写する意識でやっていて、何かを明言はしていなかったと思うんですね。これは「後夜」(2022年11月発表)でインタビューしていただいた時に話したかもしれないですけど…ポップス歌謡のいいところって、メッセージ性が伴うところでもあるなと思っていて、どんな音楽でも、メッセージを受け取ればそれはメッセージ性があるものだと思うんですけど、ポップスは聴いてすぐにわかるじゃないですか。それっていいなと思い始めたのがここ1年ぐらいで、以前は照れちゃって、歌詞を見れなくて、J-POPもあんまり聴けなかったんです。わかりすぎちゃうんで。でもそれをやってみたいなと思い始めた時に、“恥ずかしい~”と思いながら書いた記憶があります。


──そうだったんですね。

樋口:全部が自分に実際起こったことというよりは、エッセンスを抽出してそこから広げたという感じですけど、それでもやっぱり、特にこの曲は、最初に聴いた時に浸ってしまったというか、呼び起こしてくれるものがあって、自分の内側の部分が出てるなと思うので、恥ずかしいというか、“照れる~”と思いながら書いていた気がします。

若林:だからアレンジも、ある程度物語的に寄せたいなというのがたぶんあったと思うんですけど、いかにもドラマチックな、“はい、ここで悲しむところですよ”みたいな提示をしすぎたくはなくて、そういうバランスをすごく考えた記憶があります。おかげで、部分部分にはさんでいる細かいギターのフレーズとかが、生きてきた気がしていて、それぞれの楽器のおいしい使い方ができて、けっこう気に入ったアレンジになりました。

──この歌のテーマは、孤独だと思うんですね。いろんな人のいろんな状況に当てはまるんでしょうけど、“ひとりだけの孤独なパーティー”というフレーズがとても印象的です。

樋口:そこ、未だにちょっと照れますね(笑)。

──あ、ここが照れポイントでしたか。でもすごくキャッチーだし、“わかる”って感じがします。

樋口:それは嬉しいです。

──ストーリーはあるんですか。この歌詞の背景にあるものも含めて。

樋口:ストーリーはないんですけど、でもやっぱり、孤独というものがテーマだとは思っていて、今24歳から25歳になる年なんですけど、大学に行ってた人は卒業して、社会人2年目で、学生の時は足並み揃っていたのが、本当にみんな、すごくバリエーション豊かな人生の形になってきているというか。ずっと自分と同じ状況の人はいないし、ずっと一緒にいれる人はいないなと思った時に、私はすごい寂しがり屋なので、一人でいることの寂しさにどう折り合いをつけていくか?ということを、すごく考えていた時期で。ここ1〜2年は、帰国して日本の友達に会うたびに、“すごい大人になってる”と思うんですね。私は早くから仕事を始めて、しかも特殊な仕事だから、自分が大人になりきっていないような感じもるすし、他の人と自分は違うということが、どんどん明確になってきている気がするんですね、人生において。それをすごく感じるようになったのが23歳ぐらいからだったので、孤独とどう折り合いをつけるか?というのがここ1〜2年のテーマではあるんです。


──はい。なるほど。

樋口:“寂しさはいつか埋められるものだと どこで覚えたんだろう そうじゃなさそうだ”という歌詞があるんですけど、本当にこの通りで、寂しいという感情は埋められるべきもので、それだけで完成形として存在しないものだと思っていたんですね。でも“寂しい”はそれだけで存在するものだし、そこを受け入れていく過程が、大人になるには必要なのかな?と考えたのが、この歌詞の背景にあることです。ストーリーというより、私が考えていたことという感じです。

──すごく伝わります。その思いがたぶん、さっき話に出たドラマチックな歌詞の書き方とか、わかりやすいメッセージ性とか、そういう意識と結びついて、この歌詞が出来上がったんだなという感じがします。

樋口:そうかもしれないです。

──そして、最後の一行が“そのままでいいよ大丈夫”。これもすごく耳に残ります。

樋口:これも、今までだったら一番入れたくなかったような歌詞なんですよね。あんまり言い切りたくなかったし、ひねくれてる人間だから、「大丈夫だよ」と言われても、「何がわかるんだよ」と思うし(笑)。でも、そうだとしても、「大丈夫」と言ってもらったり、自分が自分に対して言うということは、必要な時がある気がするんですよね。そこも、自分が一つ大人になったなと思ったところで、全部を多角的に考えたら、「大丈夫」なんて言えないけど、でも大丈夫だと信じていたいこともあるし。孤独でも絶対に自分はそこにいて、自分は一生付き合うものだから、自分との向き合いを大切にしていくのが、孤独への解決の糸口ではないか?と思い。それは私にとってすごくポジティヴな切り口だったので、それに気づいたのがすごく大きかったんですね。自分の中でポジティヴで新鮮な発見だったから、「大丈夫」って言い切ってもいいかもと思って、ポジティヴな切り口への嫌悪感みたいなものがずっとあったんですけど、そこは一周回ったのかなという感じがしていて、“照れる~”と思いながら、あえて書きました。

──これしかない言葉だと思います。どうですか若林さん。可弥子さん、大人になりましたか。

若林:そうですね(笑)。二人で「最近、歌詞が暗いよね」という話をしていたんですけど。

──暗いとは思わないですけどね。それこそ大人になっていく、内面の変化をしっかり見つめているなと思います。

樋口:誰かとの対話というより、自分との対話になってますね。最近の曲は。

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