【インタビュー】関取花、EP『メモリーちゃんズ』に刻む今「風のように音楽をやっていきたい」

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■ 今の私が一番好きだ、と思えた

──「メモリーちゃんズ」「ナナ」「すきのうた」、今回の作品に収録された3曲の新曲の歌詞の世界観には、すべてどこかで「記憶」というモチーフが入り込んでいるような気がしたんですけど、そういうことを歌いたかったという思いは、関取さんの中にありましたか?

関取:「メモリーちゃんズ」は「カメラ、はじめてもいいですか?」というドラマのタイアップで、そのドラマから着想を得たものなんですけど、「ナナ」と「すきのうた」の2曲に関しては、正直すごく自然にできた曲だったので、どういうときに、どういうふうに作った曲だったかということを、いい意味であまり覚えていないんです。ただ、この2曲を「今、形にして出そう」とすぐ思えたきっかけはあって。今年の7月くらいに、ドイツに旅行に行ったんです。私は小さい頃……2、3歳から7、8歳くらいの一番自我が形成されていく時期にドイツに住んでいて、そこに30年ぶりくらいに行きました。今まで、私が私の原風景を歌うときや、自分にとって一番美しい景色を歌うとき、思い浮かぶのはドイツの景色だったんですよ。どこにいても、何をしても、あれに勝る景色や思い出はない、と思っている自分がいて。

──自分の中にある絶対的な景色というか。

関取:そうですね。行く前は、「やっぱりここだった!」と思うんだろうなと思っていたし、日本に帰ってきたら「ああ、帰ってきちゃったな」と思うんだろうな、と思っていたんです。でも、意外とそんなことはなくて。好きな景色であることはもちろんなんだけど、政治的な変化やそれに伴う街の変化もあったし、「緑いっぱいでエバーグリーンな景色だ」と思っていた場所が、実は壁の落書きがいっぱいあったり、そういう現実を見たりもして。いろいろあったけど、「うん、私は今の私が一番好きだ」と思えたんですよね。変な浸り方もなく、「ここに住んでたんだなぁ」くらいの感覚で戻ってくることができた。そういう経験があって、「今の私から自然に出てくるものを形にしてもいいんじゃないか」と思ったんですよね。

──そこに寂しさのようなものはなかったですか?

関取:それもなくて。すごく爽やかな、清々しい気持ちでした。思い出をテーマにした曲や切ない曲を書こうとしたとき、どうしてもドイツをモチーフにしがちだったけど、「もうそこに縋りつかなくても大丈夫だな、私」と思えたんです。ドイツで空を見ても木々を見ても家を見ても、今の自分が住んでいる街のことをちゃんと思い出したので。「この前東京で散歩したときに見た空も綺麗だったな」とか。変に入り込み過ぎず、「今を生きることができているんだな」と改めて思いました。



──1曲目「メモリーちゃん」を制作するにあたって、ドラマ『カメラ、はじめてもいいですか?』からどんなものを受け取って作り始めましたか?

関取:『カメラ、はじめてもいいですか?』は漫画が原作で、漫画自体はまだ連載されている状況でのドラマだったので、写真や思い出というモチーフはありつつ、どこかで現在進行形な歌詞にしたいな、という思いはありました。でも、あまり考え過ぎずに書きましたね。

──関取さんは「詞と曲が一緒に出てくる状態がいい」ということを過去のインタビューでも語っていたと思うのですが、今回もそうですか?

関取:全部そうですね。綺麗に全部出てきました。なので、完成までが速かったです。


──詞曲が一致した状態で楽曲が生まれるとき、曲の長さはどのような感じになりますか?

関取:基本、短くなります。自然とできた曲は、今は3分前後くらいが多いです。「あれも言いたい」とか「これも言わなきゃ」みたいなことがないからだと思うんですけどね。自然に出てくると、頭で考えていないから、無駄な意味付けや深みを持たせるための言葉が出てこなくなるんですよ。「ここで言い切った」というところで止まったら、あとは怠惰ではなく、「説明臭くならないように1番のサビを最後に持ってこよう」とか、そういう感じで作っていきますね。

──今回、「メモリーちゃん」と「ナナ」の2曲はバンドメンバーとして岡田梨沙(Dr)さん、加藤綾太(Gt)さん、藤原寛(Ba)さんを招かれていますね。岡田さんはもうお馴染みですが、加藤さんと藤原さんを招いたのはどのようなきっかけがあったのでしょうか? このふたりの名前が並んでいると、銀杏BOYZを思い浮かべる人も多いと思います。

関取:そうですよね。曲ができた段階で「エレキギターを入れたいな」と思ったんですけど、今まで実は私、もう十何年も音楽をやってきているのに、プロデューサーさんにアレンジをお願いしたもの以外、エレキギターの人を呼んだことがなかったんです。エレキギターを入れたとしても、私が弾いているか、鍵盤の人がちょっと入れてくれる、くらいで。そうなったのは、こだわりがあるがゆえに「この人だ!」と思う人に出会うまでは入れない、という気持ちが自分の中にあったから。一発で歌えるメロディやリフで、ルーツがどういうというより感じたものや景色を見せてくれる人で、聴いていてわくわくするフレーズで……そういうエレキギターの奏者をずっと探していて。銀杏BOYZのライブを観に行ったとき、確か「東京」という曲だったかな。そのギターソロを加藤くんが弾いているのを聴いて、めちゃくちゃ感動したんです。加藤くんは10代の頃からの知り合いではあったんですけど、改めて、彼のギターに感動して。それから「メモリーちゃん」という曲なので、自分の記憶に残っているギタリストを呼ぼうと思ったときに、「あ、いた!」と(笑)。それで、声をかけました。藤原さんもandymoriの頃から大好きだったし、りっちゃんも彼女がバンドをやっているときのライブを観て「なんて素敵なドラマーなんだろう」と思っていたし、記憶に残っている、自分が観てドキッとした人たちを今回は呼びました。3人に共通しているのは、頭でっかちじゃなくて、感じたものを出すだけ、というか。「ルーツは何?」と聞いて、「〇〇だね」ってすぐに応えられる人もかっこいいと思うけど、「え、なんだろう……わかんない!」って返してくるような人、大好きなんですよ(笑)。

──(笑)。

関取:そういう3人です。「〇〇っぽい=かっこいい」という方程式でプレイしていないんですよ。


──ドラムの岡田さんは長らくライブも一緒にやられていると思いますが、関取さんと岡田さんの間にあるもの……どのような面において、関取さんと岡田さんは呼応し合っているのだと思いますか?

関取:単純にめちゃ気が合う、というのも大きいんですけどね。プライベートでも一緒に遊んだり飲みに行くし、ライブも一緒に行くし。そのうえで、私がりっちゃんと似ているというか、すごく好きだなと思うのは、ちゃんとこだわりや誇りは自分に対してあるけど、経験を学びに変えて、どんどん成長していくところなんです。「こう来たら、こうでしょ?」っていうプレイじゃないんですよね。うまく言えないんですけど、音楽を構成ではなくて、歌詞やニュアンスも全部含めて捉えて、ちゃんと考えて、「私はこう思ったんだけど」というものをプレイに出してくれる。そこにすごく気持ちのいいリスペクトを感じるし、嬉しいんですよね。尊敬しています。

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