【インタビュー】DEZERT、メジャーデビューという通過点からその先へ「一番認めたくなかった“ありがとう”という気持ちが出てきちゃった」

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DEZERTが1月10日、メジャー1stアルバム『The Heart Tree』をリリースした。フルアルバムとしては前作『black hole』から約4年2ヵ月ぶり、2011年の結成から13年目のメジャーデビュー作となる。収録は全14曲。アルバムミックスが施された「君の脊髄が踊る頃に」「The Walker」「再教育」など既発曲6曲ほか、同アルバムのために書き下ろされた新曲や初音源化曲となる8曲は、デビューアルバムにしてベスト盤と呼べる仕上がりだ。

◆DEZERT 画像 / 動画

自らのバンド名を冠した2023年9月のLINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)ワンマン<DEZERT SPECIAL LIVE 2023 -DEZERT->で発表されたのが、今回のメジャー1stアルバムリリース、全国ツアー<Album Release Tour Phase_1>開催、2024年の日本武道館ワンマンライヴ開催だった。しかし、千秋曰く「周りの人たちに“メジャーが決まった”とか特に言わなかったのも、俺たち自身が気にしてなかったというのが一番」だという。自身のスタンスで確実な活動を続けてきた彼らにとっては、その延長線上であり、すでにその先を見つめているあたりが、ある意味凜々しく清い。

何よりそのサウンドが雄弁だ。闇も混沌も描きながら、シニカルにそれらを切り裂く言葉は鋭い。そして、過去を軽々と越える圧倒的な音圧は彼らならではのものだ。もともと音楽的クオリティに定評のあるDEZERTだが、前述した全14曲は広がりを増して、ヘヴィネスからファンクまで迫力とテクニックを持って全方位へ放射させるロックチューン。BARKSでは、全曲の作詞作曲を務める千秋(Vo)と、バンドの舵取りの一翼を担うSORA(Dr)のふたりに『The Heart Tree』についてじっくりと話を訊いた。


   ◆   ◆   ◆

■音楽や心に共感してくれる人に対して
■ここから始めようぜっていうアルバム


──2023年はさまざまな準備を重ねながら数々のツアーや単発公演を開催し、9月23日にLINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)でバンド名を冠した<DEZERT SPECIAL LIVE 2023 -DEZERT->を実施しました。BARKSでは渋公を向けての連続インタビュー(第一弾第二弾第三弾)でお気持ちを語っていただきましたが、渋公ワンマンを終えて、今どう振り返りますか?

SORA:渋公でのライヴも、もはや遠い記憶になりつつあるんですけどね。渋公へ向かうプロセスはこれまでBARKSさんでも話させていただきましたが、かなりストーリー付けができたライヴになったと思います。バンドとしても明確な目印があって、そこに向かっていろんなことをやってきて、チケットが完売して。でも、完売したからどうというわけでもなく。普通にその日の、今のライヴをしようという感じでした。ただ、その渋公があったから、メンバーとスタッフさんと、ニューアルバムを世の中に放つ準備ができたのかなと思います。まだまだ足りてない部分はありますけど、日々頑張ってやりたいと思えるようになった。そのきっかけとなったライヴだったと思ってます。

千秋:コロナ禍での制限がないライヴだったので、どちらかというと僕は、始動ライヴという感覚でしたね。DEZERTは、足りないところや、上手くいかないことを自分らで修正していくことに結構時間が掛かるバンドなんです。でも、渋公ライヴまでには、できることは全部やったというか。たとえばツアーファイナルとかでは大会場でやることもあったとはいえど、これまで行き当たりばったりでやってきていることが多かったんです。だけど今回は珍しく準備万端だった。勉強になりましたね、準備すれば万全にできるんだなということが。かと言って、これを続けていくかというと、違和感もある。バンドって本当は、ライヴを積み重ねて勝手に大きくなっていくものだと思うんです。だけど、今思えば今回は、メンバー自身が肉付けしていった部分があったので。それがストーリー付けってことなんですけど。


▲千秋(Vo)

──渋公ワンマンではサプライズ発表がありました。2024年1月に日本クラウンからメジャー1stアルバムをリリースすること、そのリリースツアー開催、2024年内に武道館ワンマンを行なうことです。今現在、周囲からの大きな反響や、ファンの待ってました!という声を受け取っていると思うのですが。

千秋:はい。でも俺たちの場合、ファンの方はもう長いので。

──だからこそ、思いは小さくないんじゃないですか?

千秋:メジャーに行くと言うと、だいたい賛否両論が起きるじゃないですか。でもまあ、俺たちの場合は結構珍しいパターンで、文句はないだろうという部分はあった。だから反響はあまり気にしなかったですね。周りの人たちにメジャーが決まったとか特に言わなかったのも、俺たち自身が気にしてなかったというのが一番で。

──あくまで自分たちがやってきた延長線上にメジャーからのリリースがあったという。実際、アルバムに向けての作業は、いつ頃からプランや曲作りがスタートしていたんですか?

SORA:ずっと作り続けてはいたんですけど、「よし、作らないとね」ってメンバーの気持ちが向かったのは、たぶん<DEZERT LIVE TOUR 2023 “きみの脊髄と踊りたいんだっ!!ツアー”>の最中だったと思います。仙台公演の楽屋で千秋から「コンセプトが決まった」って言われたのは覚えていて。そこで『The Heart Tree』という形が見え出したというか。

千秋:フルアルバムは2019年の『black hole』以来リリースしていなかったので、なんとなく“次はアルバムかな”っていうのはあったんです。だけど、そもそもシングル「再教育」(2022年3月発表)あたりから、僕のなかではアルバム収録曲として出していった感じはあったんですよね。

SORA:たしかにそう言ってたかも。「「再教育」も「モンテーニュの黒い朝食」もアルバムからの先行リリースってイメージです」って。そこから1年後のツアー中に、コンセプトが決まったっていう話になったというのも面白いですね。


▲SORA(Dr)

──メジャーからのリリースとなる『The Heart Tree』ですが、この数年の着実なバンドの歩みが詰まったアルバムだなと思いました。メジャーだからということではなく、これまでとこれからが地続きになっていることがわかる真摯な作品です。

千秋:まあ、戦いでしたね。コロナとか関係なしに、2017年以降は戦いだった感じがしてます。それまで持ってる武器で作っちゃってたから。ずっと戦ってましたね、曲と。

──自分自身と戦っていた感じですか?

千秋:それがわからないんですよね。自分自身も絶対そうなんですけど…誰と戦ってるんだろうっていう。評価を気にしたくないけど、気にしてしまう自分がいて。SNS社会だからというだけでなく、周囲からもいろんな声が入ってくるじゃないですか。そういうことにすごく動かされちゃう人間なんだなっていうのを、2010年代後半から感じていたんです。

──迷いみたいなものでしょうか。

千秋:今までの自分を超えたい、でも良いところを消しちゃダメだし…そういうことをずっと考えている感じで。ただ今回のアルバムに関しては、ライヴに来る人に向けて作ろうと決めていたところがあるんです。別に、ライヴに来ずとも音楽は聴けるじゃないですか。でも、ライヴだから言えることとか、ステージじゃなければ思わないことってあるんです。なんか嫌なんですよね、「人間は心だよ」とか酔っ払って言うの。

SORA:まあ、言ってるけどね(笑)。そういうときは俺も酔ってるから、「わかる!」ってなる。

千秋:そういうのはキモいんだけど、本心じゃないですか。それをライヴで言えるようになってきたのかな。今までは少なからず“千秋というキャラクター”があって、“これを言ったら俺っぽくない”とか、そういうことまで考えちゃってた。それがすごく邪魔で、削ぎ落とすのに結構時間が掛かったという。

──そういう変化はライヴやインタビューからも感じています。

千秋:他人の評価は、耳に入ってくればもちろん気になりますけど、あてにしないようになってる。そういうなかでのアルバムですね。なので、メジャーデビューとか、日本武道館ワンマンとか、いろんなプレッシャーをかけてくる人もいるんですけど、そこは結構どうでもよくて。より良い人生というか自分が納得できる人生を送るためのひとつの地点が、日本武道館というわかりやすい場所で。そこに向かうためには、ライヴに来てくれる人が絶対に必要。そういう必要不可欠なもの…DEZERTの音楽や心に触れて共感してくれている人に対して、“まずここから始めようぜ”っていうのがニューアルバムなんです。それが偶然メジャーデビューのタイミングと重なったって感じだったので、キリはいいのかな。

──メジャーデビューありきで作ったアルバムじゃないと。

千秋:そう。だから、ゼロから作った曲は本当に少なくて。昔からあるデモから作った曲が多いんです。この制作期間にパソコンを買い換えたんですけど、データ移行するときってデモを全部聴いていくんですよ、どのプロジェクトを残そうかなという感じで。“こんな曲作ってたんだ”とか“こういう初期衝動があったんだ”とか、自分で自分を振り返りつつ、そこから摘出した曲もいっぱいある。だから、実は新作を作ったというイメージがあまりないんです。


──昔からのデモということですが、いつ頃のものですか?

千秋:細かくは覚えてないですけど、「延命ピエロ」のイントロとかサビにいくまでの感じは2015年にはあった気がするし。「生活」とか「楽園」も以前からあったものですね。

SORA:「楽園」の細かいニュアンスはプリプロに入ってから固めましたけど、曲を覚えようとしなくても身体に染み込んでたし。「生活」も「延命ピエロ」もそう。「羊は死刑台で笑えるか?」は昔一度ドラムを録っていたり。

千秋:当時、ボーカルまで録ったよね。

SORA:「ともだちの詩」は2016年にレコーディングしたテイクを活かしてるし。だから、真っさらな新曲っていうのは「匿名の神様」と「Hopeless」かな。

千秋:あと「The Heart Tree」。

──「ともだちの詩」と「Hopeless」の間には7〜8年の時間が流れているんですね。でも、アルバム最後の「ともだちの詩」から、改めて1曲目の「Hopeless」に戻って聴いたとき、この2曲は通じ合うものがあるなと思ったんですよね。

千秋:通じ合いますか?

──曲調も言葉のニュアンスも違うけど、奥底で響き合っているというか、意味のある2曲だと感じました。

SORA:曲順はメンバーとレコード会社の方とみんなで、「これはどう?」っていう感じで最後の最後まで試行錯誤しましたね。そういう過程を経てやっと決まった曲順だし、いい形になったと思います。おっしゃっていただいたような、歌詞の意味がつながっているということではないけど、たしかに物語っぽい感じはあるのかも。

◆インタビュー【2】へ
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