【インタビュー後編】レトロリロン、新たなアプローチに挑んだ新作EP 「価値観を改めて見直すきっかけになってくれたら嬉しい」

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■ようやく4人で土台を作れるようになってきた

──miriさん、飯沼さん、永山さんは、「TOMODACHI」を始めとする涼音さんが書いた楽曲をアレンジする上でどんなことを考えているのでしょうか。

飯沼:僕はさっき言ったみたいに、めっちゃ涼音のファンなので、曲がきたときにまず楽しみが勝つんです。楽しんで聴いてから、「これをどうやったらより良いサウンドになるかな」ってアレンジを考えて、歌詞は後でじっくり見て考えています。まず楽しんで曲を聴いてから、みんなで作っていく感じですね。

永山:まず涼音がアコギとボーカルだけで、ビートやフィールもまだ固まってない状態で曲が来るんです。そこから僕がアレンジで考えるのは、ボーカルを邪魔せずに、尚且つノリが良くて一番お客さんに届けられるようなビートを選ぶということです。このEPもそうなんですけど、いろんなジャンルがあるというか。普通のポップスだったりロック調だったり何かビート感強めな曲だったりするんですけど、ただ考えたフレーズを演奏するだけじゃなくて、これまで自分がドラムと向き合ってきて、「ロックだったらこういうグルーヴ」、「ビート系だとこういうグルーヴ」っていうのをできるだけ最上のものにしたいっていう感覚でアレンジしてます。「TOMODACHI」はすごくポップでノリが良い曲なので、リファレンスを探したりいろんなドラマーさんのプレイを見たりしながら作りました。

miri:前作のEPは、そのときの全力で作った作品でしたけど、今回はそれよりまた更にスケール感の広がるような、より多くの人に聴いてもらえるようなアレンジもしたいと思っていました。それで言うと、「DND」はそういう広がりを得るためにブラスが初めて入っていたりします。鍵盤としても、ギターに対するアプローチだったり、歌だったり、歌詞に対しての鍵盤、上物の扱い方みたいなことは、「レトロリロンのサウンドはこうかな」っていうアプローチが前作より明確になってきたと思います。



涼音:前作までは、まず“4人の音”を作りたかったので、他の音が入ってくると薄まるなっていう気持ちがあったのでブラスや弦を入れることに抵抗があったんです。4人でちゃんと作れた土台に入ってきて欲しかったというか。なので、そういうところはギターやピアノ、シンセで補ったりオルガンを重ねたり、4人で出せる楽器の範疇で厚みを出すようにしていました。でも最近になってライブのキャパシティも広がってきて、より多くの人にワイドに届けるためには、いろんな窓口があった方がいいっていうのと、ようやく4人で土台を作れるようになってきたので、ブラスや弦を入れても自分たちの色が弱くはならない段階まできたかなっていうのもあります。「DND」のブラスに関しては、書いている段階でブラスが必要だなと思っていたので、メンバーに相談はあまりせずに、「この曲はブラスを入れる前提で書いてるから」て言ったら、みんなも「そうだよね」みたいな感じでしたね(笑)。

──メンバーさんそれぞれ演奏技術を持っているけれども、そんなに自己顕示欲みたいなものがないというか、あくまでも涼音さんの歌ありきで演奏しているんですね。

飯沼:それは、先ほど(前編の記事で)お話した、「ポップスをやるバンド」っていうところがあるからですね。

▲飯沼一暁(B)

涼音:そこはもう、最初の方に全員モグラ叩きのように叩き潰したというか(笑)。

永山:言い方(笑)。

miri:あはははは(笑)。

涼音:いやでも、本当にそう感じてもおかしくないぐらい、メンバーには「違う!」「そうじゃない」とか言いまくってたせいで、一旦丸くなりすぎちゃったんですよ。

miri:引き算しすぎちゃって。

涼音:でも、みんないろいろ考えて持ってくるようになってからは、逆に僕から出てこないようなアイディアを出してきたりとか、自分の引き出しの中で、曲に合うものをちゃんと置いてくれるようになったと思います。そうなったことで逆に、それぞれの個性が目立つ瞬間をバランスよく作るようにはしています。ソロとかではないですけど、ここはキーボードが前に出てここはベースが前に出る、ここはドラムのフィルを思い切り入れてもらうみたいな。ラスサビで歌とドラムのフィルだけになるとかはよくあります。「この曲は多分この人がメインだよね」みたいなものも曲ごとに何となくあるので。「TOMODACHI」は結構バランスを取ってますけど、逆に「独歩」はピアノメインの曲になっていたり。

──「独歩」は、シャッフルからワルツになったり展開が面白いですね。

涼音:これは、今までなかったようなおどろおどろしい曲を書きたかったんです(笑)。音楽的に遊ぶ余裕が出てきたというか、ボーカルも左右で全く違う歌詞を書いています。めちゃくちゃ簡単に言うと、いじめる側いじめられる側みたいな視点の歌詞が2つ出てくるんです。どちらかというと人生であまり人に苦労してこなかった人の視点の歌詞と、苦労させられてきた人の歌詞、どっちも両方から流していて。2回聴くことで、どっちの立場からも聴けるようにしています。いじめっ子側の視点で聴いてもいじめられてる側の視点で聴いてもどっちにも悪さがあるというか。僕は中学校の頃に人間関係が上手くいかなかった時期があったので、そのときのことを思い出しながら書いた曲です。この曲はmiriにぐちゃぐちゃにピアノを弾いてもらったというか、ピアノで感情変化を作ってくれているので、miriの一番見せ場ですね。

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