【インタビュー 第二弾】SiMのSHOW-HATEが語る、ギタースタイル変遷「テクニックもいいけど、グルーヴを突き詰めたほうがおもしろい」

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SiMが最新アルバム『PLAYDEAD』(2023年9月発表)を携えて、全国36ヵ所をまわる対バンツアー<“PLAYDEAD” WORLD TOUR SEASON 1>を開催中だ。あいだにヨーロッパツアーを挟みつつ、国内ツアー“SEASON 1”終了直後にはUSツアーも予定されているなど、国内外問わない精力的な活動スタンスは、アニメ『進撃の巨人 The Final Season Part 2』オープニングテーマ「The Rumbling」の世界的ヒット(米国ビルボード・ホットハードロックソングチャート1位 / 2022.1.29付)という快挙も記憶に新しいところ。しかしそれ以前に、サウンド、アレンジ、アイデアなど新境地だらけの楽曲ポテンシャルの高さにこそ、彼らの快進撃の理由があることは疑いようのない事実だ。その中にあって、SHOW-HATEが持つ変幻自在でオリジナリティの高いギタースタイルは、ヘヴィでラウドという一点だけで語り尽くすことなど出来ない。

◆SHOW-HATE (SiM) 画像

SHOW-HATEのギタースタイルをひとつの側面でことは難しい。ヘヴィでメロディアス、ラウドでセンシティヴ、哀愁と昂揚感に満ちた多重サウンドに多くのストーリーを感じさせつつ、キーボードまでこなすスタンスに謎がますます深まるばかり。1曲のなかに目くるめく曲展開を円滑に成立させる手腕は、ギタリストという枠を越えて、表現者と形容するにふさわしい。そのサウンド&プレイを創出するパートナーが10年以上愛用するSCHECTER製オリジナルギターだ。

SCHECTER製SiM SHOW-HATEシグネチャーモデルに7弦ギターが新たに加わり、2024年春にリリースされる。SHOW-HATE本人のサウンド的こだわりがそこかしこに反映されたシグネチャーモデルは、ギタリストとしての指向性をうかがい知ることのできる仕上がりだ。BARKSでは、ギターへの目覚めまで遡っての“ギタリスト履歴”、SiMギタリストとしての“スタイル変遷”、愛器“SCHECTER製オリジナルモデル”といった3つのテーマからSHOW-HATEの全貌を解き明かすべく、3回連続インタビュー企画を実施した。第一弾のギタリスト履歴に続く第二弾はギタースタイル変遷。「他のバンドとSiMが違うところは、グルーヴがすごくウネっていること」と語ったSHOW-HATEの言葉にSiMのバンドサウンドが浮かび上がる。


   ◆   ◆   ◆

■一度心が折れそうになりましたよ
■あまりにもレゲエができなくて


──SHOW-HATEさんは2006年にSiMに加入します。当時のSiMは、今とは異なるサウンドでしたよね?

SHOW-HATE:SiMはMAHが高校のときからやっていたバンドなんですけど、俺が加入したときは、今と全然違いましたね。もっとレゲエが濃く強い感じで、曲調もいろいろでした。簡単に言えば、レゲエ色の強いロックって感じですかね。精神性とかはパンクを通っているから、パンクな曲もありましたけど。

──SiMの地元・湘南の流行りみたいなのも多少は影響があったんですか?

SHOW-HATE:レゲエとかに触れたのは、たぶん湘南に住んでいるというのも大きかったと思います。ハードコアやメタルバンドをやっていた地元の先輩たちが、年齢を重ねるにつれてレゲエも好きになって、みたいな流れもあったから。で、今度はレゲエバンドを始めたりとか。

──飲食店やっている先輩たちが、そのお店で流す音楽がもっぱらレゲエだったり? 夏の湘南に似合いそうですよね。

SHOW-HATE:そんな感じです。湘南に住んでいたから、レゲエに触れる機会も多かったんじゃないかな。MAHと元々のオリジナルメンバーで、SiMではそういう音楽もやっていこうっていう流れだったと思うんです。加入する前にSiMのライブを観たときに、“なんだこのレゲエで、暗くて、取っつきづらい音楽の感じは?”って(笑)。最初はそう思ったけど、よく観たら超カッケー!みたいな感じだったんで。だから「SiMで一緒にやろう」ってMAHから誘われたとき、めっちゃ嬉しかった。

──それをギターで弾くとなると、最初のうちは大変なこともありました?

SHOW-HATE:最初はレゲエが全くできなくて。聴いていただけだったから、ギターを弾くってことではレゲエを通ってきてなかったんですよ。レゲエのグルーヴを教わったのはSiMに入ってからで。今もまだまだですけど、レゲエのグルーヴの深さとか、会得するまで本当に何年も掛かりましたもん。


──その壁はどう乗り越えたんですか?

SHOW-HATE:メンバーに、普段聴いているバンドとかアルバムを教わったり、聴かせてもらったりするところからレゲエをスタートしたので、徐々にですね。一度心が折れそうになりましたよ、あまりにもレゲエができなくて。あの気持ち良さがちょっと分からなくて。

──レゲエは決して辛さをもたらす音楽ではないはずなのに(笑)。

SHOW-HATE:そう、でも“全然できねー”って(笑)。

──弾こうとしたら、確かに難しいですよね。酒に酔ってるときとか、いい感じに自分もグルーヴしてこそ、ようやくレゲエの入口に手を掛けられるような。

SHOW-HATE:本当にそうですね。音楽的な言い方をすると、レゲエはシンプルだからこそ、一個一個の音の大事さがある。心地よくグルーヴさせるために、音をどのタイミングで着地させるか、みたいな。レゲエの特徴のひとつである裏打ちだけでも、めっちゃ奥が深いんで。

──いわゆるテクニックを追い求めて身に付けた技術とは違うものが?

SHOW-HATE:そうなんですよ。もちろん左手やピッキングのニュアンスも大切にはなるけど、本当に大切なのはグルーヴなんです。テクニックよりも、誰が聴いても乗れる、みたいな演奏をしたいんですよね。もちろんテクニックで魅了するというのもカッコいいけど、俺はそっちよりも、まずグルーヴを突き詰めたほうがおもしろい。休符とかの解釈もそう。どこまで音を伸ばして、どこで止めるかだけで、印象はだいぶ変わるし。最近の激しい音楽は、バチバチッというか、小節の頭とケツで音をカッチリ決めて、みたいなのが増えていると思うんですよ。俺はそっちとは逆にいきたいなと。たぶん他のバンドとSiMが違うところは、グルーヴがすごくウネっていることで。俺はそこを強味に感じているかな。


──初期SiMでは、9割方、MAHさんが曲のメロディもリフもアレンジも決めていたと思うんですが、バンド内ではどういうやり取りが?

SHOW-HATE:ほぼ原曲を作っていたのはMAHで、スタジオセッションを全員で始めて、その原曲を完成形にするやり方でしたね。2008年に出した1stアルバム『Silence iz Mine』のときは、それがけっこう多かった印象はあるかな。ダブ曲「Set me free」はモロにそうだったし。うちらは当時、パソコンを全然使っていなかったから、スタジオでセッションするしかなかったんです。細かいアレンジはメンバー各々でやって、それをまた次のセッションで合わせてみたり。2009年にSIN(B)とGODRi(Dr)が加入して、今のメンバーになってからは、基本データのやり取りでアレンジを煮詰めることが多くなりましたけど。

──メンバー全員がパソコンを導入して?

SHOW-HATE:そう…あ、いや、「KiLLiNG ME」が入っている『SEEDS OF HOPE』(2011年発表2ndアルバム)を作ったときは、まだパソコンは使ってなかったかな。スタジオでデモを流しながらやっていたから。ボイスメモに録ったフレーズを「これでどう?」とか言って、他のメンバーに聴かせたりしていたし。細かいところは各自でやりつつ、例えば「絶対にこれを入れてほしい」ってフレーズはMAHが考えてきたり。


──ほぼ全部の作曲クレジットがSiM名義なのはそういう理由でしょうか。

SHOW-HATE:そうですね。さっきも言ったように、原曲はほぼMAHが作ってきて全員で形にしていくような感じだから。ただ、俺も曲を作るのは好きなので、「こういうのもあるけど、どう?」ってMAHに聴かせると、「それ、Aメロに入れてみようか」とか「このイントロを使いたいんだけど」っていうのもあったり。

──キャッチボールしながら膨らむ感じなんですか?

SHOW-HATE:でも、ごく最近の曲は、MAHがベーシックを全部作ってきて、それをデータでもらって、アレンジをしたものを送り返して、「いい感じだね」とかのやり取りになりましたね。今、スタジオでセッションしながら作るってことはしてないので、ドラムも“こうしたい”ってリズムパターンとかをパソコンで打ち込んで送ってきて。ベースも自宅で録ったものをデータで送ってきて。音が当たっているとか気になるところがあれば、お互いにやり取りするけど、あんまり最近はキャッチボールしてないですね(笑)。という意味ではスムーズかな。

──ツアーとかでしょっちゅう顔を合わせて、楽屋でもいろんな話もしているだろうから、お互いに考えていることもやりたいことも理解しているって感じでしょう。

SHOW-HATE:そうですね。アレンジに対するNGがなくなっていったのは、たぶん俺らが歌詞を読むようになってからなんですよ。歌詞のイメージと離れるような演奏アレンジがなくなったというか。例えば歌詞の中にメインになる言葉があったら、その言葉からイメージを膨らませつつ…“この役になってみよう”とか“音でどうやって表現できるかな”みたいに。そういうふうにやり始めてからは、イメージと違うってことでアレンジにNGが出ることはなくなりましたね。それでスムーズになったと思う。それに、これだけ長くやっているんで、お互いが考えていることも分かるし。

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