【インタビュー】高瀬統也、アジア圏へ広がる精力的な活動の現在地「『愛℃』で出した人間味をもっと出していきたい」

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国内のみならず香港、台湾、インドネシア、タイ、インドなどアジア圏で多くのリスナーを集め続けているシンガーソングライター・高瀬統也。2023年も国内外でライヴを行い、それと並行して香港で絶大な人気を誇るボーイズグループ・MIRRORのリードヴォーカルであるアンソン・コンとのコラボレーション楽曲「白愛」を発表するなど精力的な活動を続け、12月には13曲入りの2ndフルアルバム『愛℃』をリリースした。2024年5月からは、日本4都市を回る<TAKASE TOYA JAPAN TOUR 2024 – 愛℃ –>を開催。ツアーを2ヶ月後に控えた彼に、あらためて『愛℃』という作品について話してもらった。なぜ高瀬統也は様々な“アイ”を歌い続けるのか。そこには彼のヒューマニティが大きく関わっていた。

  ◆  ◆  ◆

■題材が同じでも聴く人は全員違う

──『愛℃』は愛、哀、藍の3つの“アイ”の温度にフォーカスしたフルアルバムとのことですが、どういう経緯でこのテーマに行き着いたのでしょうか。

高瀬統也:今作の新曲10曲は、2023年の9月以降に作ったんですよ。リアルタイムで生まれた曲をリリースしていきたいので、いつもストックはゼロなんです。全曲の並びを眺めていたら、自分が大事にしている“愛”と“藍”と“哀”がすべての曲に含まれているなと思ったんですよね。それで『13月2日』というタイトルを付けてくれた映画監督の杉浦哲平とドライブをしているときに『愛℃』を提案してもらいました。“℃”は温度の単位で、Cをとれば角度の単位の“度”にもなるし、“度”には二度三度の意味もある。すべてが値を示すものであり、英語の動詞の過去形の“ed”とも掛けられるんですよね。それを踏まえて、最後にタイトルトラックの「愛℃」を作りました。だから今回の制作は手癖が強かったんですよね。


──以前は、お酒の配分のように、実話3:想像7で曲作りをしているとおっしゃっていましたが。

高瀬:今回はその配分がひっくり返っているかも。世の中ではいろんなテーマで楽曲を作ることが素晴らしいとされているけど、自分が言いたい言葉ではなかったら意味がないなと思うんですよね。自分の歌いたいことや手癖だけで作って、“統也っぽいね”と思ってもらえる人間味のある楽曲を出したかったんです。僕はガンガン稼ぎたくて音楽をやっているわけでもなく、好きな人たちにご飯がご馳走できるぐらいのお金さえあればいいから、無理していろんな曲を作らなくてもいいなと思うんですよね。フラットな気持ちで生きていると、おのずとフラットな制作になっていく。「愛℃」の歌詞にある《思わせぶりの天才だね》は、実際に僕が言われたことなんですよ。

──歌詞中の“君”が、高瀬さんであると。

高瀬:自分の割合が増えているとは言え、一人称で自分のことを歌いたくないから、自分を“君”に置き換えて書いています。“高瀬統也って歌ってること愛ばっかりじゃん。レパートリーないの?”と思ってもらって構わなくて。題材が同じでも聴く人は全員違うから、ストリーミングの再生数も13曲満遍なく回っているんです。全部の曲をいいと言ってもらえる作品になりましたね。“高瀬統也こういうこと言ってそうだな”と思う歌詞が揃いました。

▲アルバム『愛℃』ジャケット


──ちなみにですが、『愛℃』初収録の楽曲を、2023年9月以降に作った理由はあるのでしょうか?

高瀬:僕はアウトプットが続くと抜け殻になっちゃうんですよ。2023年は年明けから走り続けて、6月まで香港や台湾をライブで回っていたので、それが終わったら一気に疲れちゃって。マネージャーにも7月8月はもうほとんど仕事しないと申告したんです。そしたら昔お世話になった人に偶然会うことが多くて、毎日その人たちと会うようになって。そうすると必然的に自分の上半期の話をしゃべる機会が増えるんですよね。そうやって振り返ると反省点や次こういうことをやってみたいなというアイデアも浮かんできて。だから仕事をしていない時間がインプットにもなったんですよね。《思わせぶりの天才だね》という言葉も、その時期に言われたんです。

──2023年9月に国内ツアーが始まるから、そのタイミングで仕事を再開させて。

高瀬:ツアーが始まる瞬間に急にアウトプットのスイッチが入りましたね。ツアーが始まると同時に曲作りを始めて……普通そんな時期にやらないんですよ。でもこういう時に自分は曲ができるんだな、ほんとゼロか100かの人間なんだなとつくづく思いました。ちなみに、インプットの時期にお金を使いすぎて税理士さんから“このままだと破産するよ?”と言われました(笑)。



──(笑)。人と話すと自分を客観的に見られますし、自分はこんなことを考えていたんだなと気付くことも多いので、必要経費ですよね。

高瀬:そのたびに“後からお金に変わるから!”と説得していますね。変わらないものもありますけど(笑)。でも自分が作品と結びつく生活をしている必要があると思うんですよね。飽きた状態で何かを作ったとしても気持ちが入ったものには敵わないし、飽きてしまうとすべてが終わってしまう。だから毎年引っ越しもするし、こうやってまったく音楽をやらない期間を作って普段会えない人とたくさん会おうとするんだと思います。

◆インタビュー(2)へ
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