【ライヴレポート】vistlip、<Sunny Side Up>渋谷2DAYSに記憶の物語「それぞれに想い出があるから」

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vistlipが4月、東阪にてリード曲/カップリング曲のみのセットリストで臨む全4公演のライヴ<Sunny Side Up>を開催中だ。同東阪ライヴより、4月8日(月)および9日(火)の2日間、SHIBUYA PLEASURE PLEASUREで行われた東京公演のオフィシャルレポートをお届けしたい。

◆vistlip 画像

vistlip企画<Sunny Side Up>は、東京と大阪それぞれ2DAYSずつからなるライヴだ。各日、“Side:A” / “Side:B”と名付けられており、“Side:A”は作品のリード曲のみ、“Side:B”はカップリング曲のみで構成するライヴとなる。つまり各側面にスポットを当てたもので、連想するのはタイトルそのままに、“片面焼きの目玉焼き”というわけだ。

はじめに、4月8日と9日に行われた東京公演の模様をお伝えするにあたり、4月20日と21日に大阪公演を残しているということで、具体的な曲名を挙げてレポートするか否かを少々迷ったが、東京公演2DAYSを終えて、今回の<Sunny Side Up>は、その様子を頭に置きながらでも充実感を得られるという確信の元に書かせていただくことにした。つまりネタバレあり、文末にはセットリストも掲載する(ネタバレを回避したい方には申し訳ない…)。


改めてvistlipの歴史を、楽曲を材料に振り返ってみたい。2024年に17周年を迎えるvistlipが、これまで見てきたものや経験してきた事柄を詰め込んで、いかにハイグレードな楽曲を作り上げてきたか。まさしくそれはバンドのロードムービーであり、そこにリスナーそれぞれに想い出があるからこそ、受け取り方の答えは1つではないはずだ。智(Vo)は<Sunny Side Up>について、以下のように言旧している。

「それぞれに想い出があるから、みんなの中にも込められた想いがあるかなと思って企画しました」──智

メンバー視点で“あの時”を思い出す中には“ああ、あの時ミスったな(笑)”なんて笑い交じりに振り替えるエピソードもありながら、“Side:A”公演を智は「1つの物語みたいなセットリストにしたかった」と語っていた。その意図を紐解くならば、バンドの指針となるものが忠実に表れているリード曲は、vistlipの軌跡を辿るファクター。物語というのはノンフィクションに近いバンドの歴史ともいえる。


原点でもある「EDY」に始まり、7月7日(七夕)を結成日とする彼らならではの星座物語に準えたアンセム「-OZONE-」はバンドとファンとの絆を歌うもの。いつだって胸を打つ。長い活動の中で降りかかった試練を乗り越えた再会のシンボルでもある「SINDRA」や「CRACK&MARBLE CITY」、ストーリーテラーに振り切ってアーティスティックな表現を追求した温もりたっぷりな「ORDER MADE」でも、頼りがいや安心感が勝るのは貫禄がものを言うところ。

懐かしい楽曲に向き合う楽しみの1つは、“今ならどう表現するか”というアップデート要素だろう。この日、目に見える形でそれを示したのは「ずっとやってなかった…」との言葉に続くタイトルコールから歓声が沸いた「アーティスト」だった。海の手元にセットされたアコースティックギターが軽快さと素朴さを強調させるという粋なアレンジから、智が「俺たちはそんなアーティストになれていますか?」と語りかけながらエモーショナルに届けたのである。

「幸せになろう」と誘った「Recipe」は、文字通り幸せになるためのレシピ。その方法を数え上げながら共有すれば、ファンの表情に笑顔が溢れ出す。途中のMCでは目玉焼きの味付けが話題に。ラフなトークが繰り広げられたわけだが、「このタイミングで!?」というツッコミが飛び出したのは、以前のライヴ中、Yuhが気持ちを入れてスタートする曲の前に必ずふざける、と指摘された事態の再来だった。「だから声のトーンを下げてるでしょ!?」と、アジャストしてきた智もさすが。


ところどころに散りばめられるロマンチックな場面の一方で、口を開けば流れ出す和気藹々とした緩い空気感は、一見硬派なオーラを放つ彼らの意外性だ。ただし、一度楽曲に突入すれば話は別となる。どれだけラフなトークを繰り広げても、「大事にしてきた曲。ちなみにYuhの好きな曲」と紹介した「alo[n]e」では、熱量高いプレイを繰り広げるなど、やはりvistlipが持つこのギャップはズルい。この日に限ったことではないのだが。

この初日の大きな収穫は、「このタイミングで取り戻してやろうと思ってました」という智の言葉であり、ライヴにおける熱量を思う存分感じられたこと。椅子ありの会場ながら「深海魚の夢は所詮、」で起こったモッシュの波には「感動した」と智が告げたほど。1st シングルと強調した「Sara」では歓声が演奏に勝って響き渡った。思えば、冒頭でかなり挑発的にオーディエンスを焚きつける言葉を浴びせていたのも印象的で、それがライヴの終盤にしっかりと実を結ぶ結果となったかたちだ。ルールに囚われず、思うがままに感情を開放する熱量が戻ってきた。メンバーの表情が時折ほころんでいたことが、そのかけがえのなさを証明した初日公演となった。

   ◆   ◆   ◆


そして、4月9日。迎えた“Side:B”は、初っ端から熱量を帯びた幕開けに目を見張った。ライヴ途中で智は、「これからもライヴらしいライヴをしていきたい」という言葉とともに、このシーンを称賛した。加えて、この日のラストは観客の声が予定外のアンコールを引き起こしたほど、熱量の高いものだった。

「今日は“Side:B”ということで、カップリングしかないんですけど…カップリングってある意味、悩みというか、“こんなに良い曲がカップリングでいいのか!? ”と。でも、出来ちゃうからな~、仕方ないんですよ(笑)」──智

良い曲だからこそ、鮮度を落としたくない/タイミングを逃したくない。このスタイルから数々のカップリング曲を生み出してきたわけだが、リード曲と比較すると、智曰く「かわいそう」な立場になってしまいがちでもある。しかし、今回の企画趣旨に則って集まったカップリングナンバーは、自由度の高さを持つがゆえ、静と動の振り幅を極端まで広げた曲など盛りだくさん。コンポーザー全員の楽曲がセットリストにラインナップされていたため、楽曲が持つ個性がバンドの可能性をますます広げていたようだ。


例えば、「Mr. Grim」はYuhのギタリスト然とした独特のエッジとフックが効いたプレイが魅力的。瑠伊が一際アグレッシヴなベースを奏でる「Laser」などは、メロディアスで王道でもある。海はアバンギャルドな印象とは裏腹に「chapter:ask」のような儚く美しい叙情的な楽曲を生み出す。Tohyaはポピュラリティに特化したセンス溢れる楽曲を生み出しながら、「Scapegoat」のようにドラムプレイは人柄溢れ出て躍動的だ。

冒頭を飾った「EGOIST」、満を持して終盤に披露した「Public GAME」は、バンド始動初期ならではの荒々しさやV系特有のマニアックな側面が前面に押し出され、初々しさすら感じられた。一気に駆け抜けたスピード感あるライヴの中で、改めて痛感したことがある。それは、メンバー5人が思う“カッコイイ”の領域は常にハイセンスで、だからこそvistlipの曲には唯一無二の色と空気感があること。それを強く印象づけたのは、ヘヴィかつサイファーな「the Surface」だ。驚くべきは、これぞvistlip!と言えるものが、彼らの1作目にすでに存在していたことだ。

「見つけてもらわないと、一生、日の目を見ないのかな?と思っていたりしていて」と智が話していた通り、カップリングはリード曲の裏に隠れた名曲だ。中にはライヴには欠かせない楽曲もあり、実際、この日もメンバー同士が顔を見合わせて笑顔をみせた「LIFE」や、白熱する場面に欠かせない「HEART ch.」もその1つ。ライヴの本編が終わる頃には、隠れた名曲たちによって場内に充実感が満ちていた。


懐かしさをフィーチャーしがちなコンセプトライヴではあるものの、強調すべきは初日ラストに披露した「Invisible」。vistlipの最新の姿である。東京公演“Side:A” / “Side:B”で披露された全40曲アンコール1曲はあくまでもvistlipの楽曲の一部に過ぎない。しかし、ここにはたくさんの感情がある。それがプラスでもマイナスでも、流れる涙の色はいずれも透明だからやるせない。そこに色を見出すのはその人それぞれだ。多彩な楽曲の中に繊細な気持ちを紡いでいく智は、限りなく今に近い感性で綴った「DIGEST -Independent Blue Film-」や「Invisible」でも変わることがない。

これまでにない程ハイペースな活動を見せているvistlipは、これからも自らの音楽に個性を発揮し、際限なく追求していく。そんなことを感じた2日間だった。

取材・文◎平井綾子
撮影◎@Lestat_cm_pro Lestat C&M Project

■<[Sunny Side Up] Side:A>2024年4月8日(月)@東京・SHIBUYA PLEASURE PLEASURE セットリスト

01. EDY(Revolver)
02. Timer
03. SINDRA
04. THEATER OF ENVY
05. アーティスト
06. CRACK&MARBLE CITY
07. Recipe
08. alo[n]e
09. ORDER MADE
10. B
11.- OZONE-
12. DANCE IN THE DARK
13. 深海魚の夢は所詮、
14. EVE
15.MONOGRAM
16. DIGEST -Independent Blue Film-
17. Sara
18. GLOSTER IMAGE
19. Hameln
20. Invisible

■<[Sunny Side Up] Side:B>2024年4月9日(火)@東京・SHIBUYA PLEASURE PLEASURE セットリスト

01. EGOIST(Sara)
02. Which-Hunt(CONTRAST)
03. 想い出CG(Hameln)
04. Mr. Grim(-OZONE-)
05. DIRECTOR'S CUT(CRACK&MARBLE CITY)
06. Scapegoat(Jack)
07. the surface(Recipe)
08. 墜落(Hameln)
09. chapter:ask(SINDRA)
10. Locoism(Period)
11. Legacy(drop note.)
12. PERFECT CRIME(B)
13. Laser(Jack)
14. LIFE(alo[n]e)
15. NEXT(STRAWBERRY BUTTERFLY)
16. Public GAME(-OZONE-)
17. Secret File(深海魚の夢は所詮、/ アーティスト)
18. BAKE(COLD CASE)
19. HEART ch.(深海魚の夢は所詮、/ アーティスト)
20. SIREN(COLD CASE)

■<vistlip ONE MAN LIVE[Sunny Side Up]>

4月08日(月) 東京・SHIBUYA PLEASURE PLEASURE[Side:A]※SOLD OUT
4月09日(火) 東京・SHIBUYA PLEASURE PLEASURE[Side:B]※SOLD OUT
4月20日(土) 大阪・Yogibo META VALLEY[Side:A]
4月21日(日) 大阪・Yogibo META VALLEY[Side:B]
▼チケット
前売 6,500円 / 当日 7,500円 (税込)
※入場時ドリンク代別途必要
https://x.gd/c00nk

■<vistlip ONE MAN LIVE[ENCORE:BLAZE SHOW DOWN]>

5月3日(金/祝) 東京・新宿BLAZE
▼チケット
前売 6,500円(税込)
※入場時ドリンク代別途必要
一般発売:2024年3月23日(土)

■<BugLug VS vistlip>

5月4日(土) 東京・吉祥寺CLUB SEATA
▼チケット
前売 6,500円(税込)
※入場時ドリンク代別途必要
一般発売:2024年3月16日(土)


■<vistlip presents[Party On]>

6月08日(土) 大阪・Yogibo META VALLEY
 w/ 甘い暴力
6月09日(日) 大阪・Yogibo META VALLEY
 ※ONE MAN LIVE
6月15日(土) 愛知・SPADE BOX
 w/ DOGinThePWO
6月16日(日) 愛知・SPADE BOX ※ONE MAN LIVE
 ※ONE MAN LIVE
▼チケット
・6/8、6/15公演:6,000円(税込) ※入場時ドリンク代別途必要
・6/9、6/16公演:6,500円(税込) ※入場時ドリンク代別途必要
一般発売:2024年04月27日(土)
【オフィシャルFC先行 ※MEMBERS LiST(月額)先行】
受付期間:4月6日(土)18:00〜4月14日(日)23:59
https://www.vistlip.com/posts/pages/qqukwy 
【イープラス プレオーダー】
受付期間:4月6日(土)18:00〜4月14日(日)23:59
https://eplus.jp/vistlip/ 


■<vistlip 17th Anniversary ONE MAN LIVE>

7月7日(日) 東京・Zepp DiverCity Tokyo
※チケット詳細等は後日発表


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