【インタビュー】筋肉少女帯、デビュー35周年記念盤「医者にオカルトを止められた男」に浮かび上がった「35年も続いている理由」

“医者にオカルトを止められた男”がいることを君は知っているか? 筋肉少女帯の大槻ケンヂである。30年近く前、メンタルの調子が良くなかった大槻にとって、オカルトへの興味だけが心の支えになっていた。が、「体調を回復させるため、オカルトをやめましょう」とまさかのドクターストップ。時を経て、体調回復したことでオカルト解禁という、めでたいストーリーへと至ったわけだが、以来、大槻のUFOやオカルト事象への興味や妄想はとどまるところを知らない。雑誌『ムー』でコラム「医者にオカルトを止められた男」を連載しているほどだ。
◆筋肉少女帯 画像
5月8日、筋肉少女帯メジャーデビュー35周年のフィナーレを飾る新曲「医者にオカルトを止められた男」がリリースされた。大槻の描くコミカルなオカルトストーリーと、あっけらかんとしたファンキーな筋少サウンドが、お祭りムードをさらに盛り立てる仕上がり。カップリングには、30年前にリリースした『レティクル座妄想』から「さらば桃子」と「ノゾミ・カナエ・タマエ」の新録セルフカバーも収録。メジャーデビュー35周年&『レティクル座妄想』リリース30周年記念盤シングルとなっている。
そこで、最新シングル「医者にオカルトを止められた男」とアルバム『レティクル座妄想』リリース当時について、筋肉少女帯のメンバー全員にインタビューを実施した。忘れられた記憶をほじっていくように話す中で明かされたのは、様々な筋少オカルトや変わることのない筋少らしさ。徐々に暴走する大槻の話しっぷりも楽しんでもらいたい。

▲「医者にオカルトを止められた男」
◆ ◆ ◆
■連続ドラマ「医者にオカルトを止められた男」の
■第一回目タイトルが“サイキックアイドル握手会”
──ニューシングルのタイトルが「医者にオカルトを止められた男」ですよ。そのタイトルを知った直後、30数年前の大槻さんの病状のことが蘇ってきたんです。
大槻:今、『ムー』というオカルト雑誌の本誌とWEBの両方で僕、コラム連載をしていまして。そのコラムのタイトルも「医者にオカルトを止められた男」なんです。これこそ、一人コラボレーションという。
──でも昔、心療内科のお医者さんに「オカルトをやめたほうがいい」と診断されていましたが?
大槻:そうです、はい。それは『レティクル座妄想』(1994年発表)より後のことです。
──『レティクル座妄想』を作っていた時期は、UFOやUMAなどオカルトものに思いっきりハマり込んでたんですか?
大槻:うん。いや…、でも30数年も経つと、あの頃はなにをやっていたのか、もう分かんなくて(笑)。でも、おそらくそうだったかもしれない。なんかプロレスもすごくいっぱい見てた頃だったかな。あの頃は、UWFだったかな、リングスだったかな〜。
内田:ああ、アルティメット系だね。
大槻:いや、UFCはその後でしょ?
内田:1994年?
大槻:まあ、いいや(笑)。
本城:本当に記憶が曖昧だな〜(笑)。
大槻:本当に。1994年といったら、すごく昔のことに感じるよ。それで『レティクル座妄想』をこの前、聴き直したんだけど、すごく完成度が高いね。驚きました(笑)。
橘高:うん、いいアルバムだね。

▲大槻ケンヂ (Vo)
──『レティクル座妄想』の話も出ましたが、今回の新曲「医者にオカルトを止められた男」は、改めて30数年前の思い出話とか、当時のアルバムコンセプトなどもメンバー間で話しながら、ソングライティングしたんですか?
大槻:いや、そういうのは全然なかったですよね。
橘高:今回のリリースに関して言うと、去年、バンドのメジャーデビュー35周年を迎えたわけなんだけど、今年6月20日までに35周年記念曲を発表しましょうと。そして、どうせだったらおめでたいことはいっぱい重なったほうが楽しいから、今年は『レティクル座妄想』リリース30周年になるよ、と。だったら両方合わせて盛大にやろうじゃないかと(笑)。“デビュー35周年のフィナーレ&『レティクル座妄想』30周年記念”というのが、まず最初に決まったことで。だから、“35周年記念曲として新曲を書きましょう“、“『レティクル座妄想』からセルフカバーもしましょう“と。それで蓋を開けてみたら、35周年記念曲が、『レティクル座妄想』の頃とやっぱり同じバンドだな、みたいな(笑)。偶然だけど、『レティクル座妄想』的なものもリンクした新曲になって、いいパッケージになったなって。完成形を見て思った次第です。
──新曲「医者にオカルトを止められた男」の作曲を手掛けたのは本城さんですが、“デビュー35周年のフィナーレを飾るような曲を作ってみよう”というマインドで作曲に入っていったんですか?
本城:そもそも「医者にオカルトを止められた男」ってタイトルが先にあって、それで曲を書いてみようかなってところからスタートしたんですよ。コロナ禍によって、お客さんが声を出せない状態のライブがずっと続いていたんで、そろそろ、お客さんと一緒に声を出し合える曲を作りたいなって思ったんです。去年暮れの恵比寿リキッドルームのライブが終わった直後ぐらいから、いろいろ書き始めて。いくつか作ったんですけど、結果的に今回はこの曲をやろうかなってことになったんですよね。
内田:僕も「医者にオカルトを止められた男」というタイトルを大槻からもらって、曲を作っていたんですよ。だけどオイちゃん(本城)のデモを聴いたら、“あっ、これでいいじゃん”と思っちゃいました。それぐらいオカルトな曲ですね!
本城:あはは、やめてくれー(笑)。でも作曲してたときは、寝ても覚めても、「医者にオカルトを止められた男」って言葉が頭の中をグルグル回ってた状態だったからね。そりゃ、オカルトな曲になる…んなこたぁ〜、ないって(笑)。
──というか、“リフ先行”とか“メロディ先行”とか“リズムから”とかって、曲作りのときによくあるパターンだと思うんです。ところが筋肉少女帯の場合は、タイトルが決まっていて、そこから曲のアイデアを膨らませることも多いんですか?
本城:前回の「50を過ぎたらバンドはアイドル」という曲もそうだったんだけど、僕的には言葉を与えられると、どっちかと言えばラク。その言葉に合わせてずっと鼻歌を歌っている感じで。今回、サビの“♪医者にオカルトを止められた〜”ってのは、鼻歌でできているって感じでした。
内田:素晴らしい!
本城:鼻歌に肉付けしていく感じだから、タイトルとか言葉が最初にあると助かります。
──タイトルの「医者にオカルトを止められた男」は、一人コラボレーションということで、雑誌『ムー』のコラムタイトルをそのまま引っ張ってきた形ですか?
大槻:そうです。もっと言ってしまうと、『ムー』の連載コラムをいつか書籍化したいなと思っていて。じゃあ筋少の楽曲としても同じ曲名で出して、一人タイアップ的なことを考えていたんですよ(笑)。
──それが起点だったんですね。でもタイトルだけメンバーに投げれば、いろんな曲が出てくるだろうと?
大槻:どんな曲が出てくるのかって期待感もありました。オイちゃんのデモを聴いたとき、最初は“どういう曲なんだ”と。大概、聴いたときに僕は分からないんですけどね(笑)。でも1フレーズがずっと続くので、わりと言葉で埋め尽くして、歌詞を聴かせる方向の曲にしたらいいんじゃないかな、と自分なりに考えて。それで歌詞をちょっと物語調にしたわけなんですよ。最初に出てくる“♪サイキックアイドル握手会”という歌詞が耳につくと思うんです。でもこれは、長い長い物語の最初の第一回目だ、と僕は思っていて。「医者にオカルトを止められた男」という連続ドラマ、あるいはシリーズムービーの第一回目、もしくは第一作目。そのサブタイトルが“サイキックアイドル握手会”なんだろうなと思って書きました。
──「医者にオカルトを止められた男 〜サイキックアイドル握手会〜」みたいな感じですか。それに続くシリーズ二作目の構想も、すでに大槻さんの中には広がっているんですか?
大槻:はい。今、『ぴあ』というサイトで、『今のことしか書かないで』という隔週連載もしていて、今後、それとも歌詞世界が絡んでいく予定がちょっとありまして。一人でいろんなところに絡めて世界観を広げるというのを、楽しんでいます。
本城:そこも楽しんでいるんだ(笑)?
大槻:そうそう。だからいつかアイドルさんの歌詞を書く機会があったら、そこにこっそり、この話を入れちゃおうかなと思ったりね。
内田:こっそりやる?
大槻:うん、こっそり。
──今後もいろんなタイトルが先行して曲が作られそうですね。橘高さんも今回は候補曲を書いていたんですか?
橘高:今回は書かなかった。長年やっていると、“今回はオイちゃんの曲がハマりそうだな”って、デモができる前から曲を聴いたような気になっていたから(笑)。「今回は俺は書かないね」と言ったぐらい。
本城:言ってた、言ってた(笑)。
橘高:その分、俺は状況を見て動こうと思っていたんで。新曲とバランスを取りながら、俺がセルフカバーの選曲を提案して。
──曲を聴く前から本城さんの曲がピッタリだと分かっていたと。なんともオカルトな事件が。
橘高:筋少オカルトとして、これは普通のことだけどね(笑)。曲を聴く前から仕上がりも見えていたから。
本城:“これぞ、筋少”という出来事ですよ。
橘高:オイちゃんがメンバーのことを考えながら、だいたいのアレンジをしてきて。それを各自が色濃く自分らしくやっていった感じ。間奏はちょっとイジらせてもらったけどね。あとオープニングも。最初は歌アタマで始まっていたけど、その前にオカルトチックなSEがあったほうがいいんじゃないかなと。で、テレビシリーズ『トワイライトゾーン』のフレーズからちょっと音階の順列を変えて、しかもリバースさせて、6本ぐらい重ねたギターオーケストレーションで一度イントロを付けてみたんだよ。でもギターの割合が高すぎるし、なんかいまいちだなと思って。これを内田くんに投げてみようと。それで内田くんが前半部分を付けて、歌の直前に出てくるフレーズは、俺がもともと作っていたリバースフレーズ。
内田:俺がイメージしたのは日テレでやっていた『木曜スペシャル』。
大槻:うん。あの“パパパ〜”という感じは『木曜スペシャル』だね。
橘高:オカルトチックなSEをイメージして、内田くんと橘高のアイデアが合わさると、ああなる。そこだけ取り上げても筋少らしいのが良かったし、35年やっていてもマジックみたいなものがいっぱい起きるなと思って。今回のレコーディングも楽しかったし、まだまだやれるなっていう。
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