【連載】いま、聴きたい演歌・歌謡曲 vol.14(本人歌唱指導付き)鳥羽一郎、三山ひろし、木村徹二、楠木康平

世代を超えて愛される「うた」がある。歌唱したい「うた」がある──。
◆本人による歌唱アドバイス 動画
演歌・歌謡曲シーンから注目の作品を毎月紹介する連載企画「いま、聴きたい演歌・歌謡曲(本人歌唱指導付き)」の第14回目をお届け。
今回は聴きどころ満載の、鳥羽一郎「朋輩よ」、三山ひろし「酒灯り」、木村徹二「雪唄」、楠木康平「北へひとり旅」を紹介する。
(協力:日本クラウン)
■鳥羽一郎「朋輩よ」

2024年末に発売となった、実弟の山川豊との初のデュエット曲「俺たちの子守唄」が大きな話題となり、今も連日のようにメディアを賑わせている。癌のステージ4からの復活を目指している実弟を心配して、普段は口数の少ない鳥羽が頻繁に電話してくるという話は、兄弟というのはこういうものなんだと胸が熱くなる。
2025年の最初の新曲は、酒場の片隅で気安い間柄の友と酒を酌み交わし笑い合う、同じ時代を生きた同じ言葉を持った男と男の友情の風景を描いた歌。鳥羽の歌は、かつては海の男の豪快な歌いっぷりが売りだったが、近年は噛み締めるような味わい深さが加わり、年輪のようにじわりじわりと沁みてくる。男の気持ちを歌わせたら鳥羽の歌は天下一品だ。
カップリングの「長谷寺の雨」は、演歌のレコーディングの現場には欠かせない名ギタリスト、斉藤功の作・編曲作品。ショートムービーを見ているかのようなドラマティックなイントロから、流れるように歌が風景を描写する。アレンジの芸術性が非常に高い楽曲だ。カラオケだけ聴いても楽しめてしまった。
「朋輩よ」発売情報
CRCN-8728 定価:¥1,500(税抜価格 ¥1,364)
【収録曲】
1. 朋輩よ
作詩:原文彦 / 作曲:水森英夫 / 編曲:南郷達也
2. 長谷寺の雨
作詩:髙畠じゅん子 / 作曲:斉藤功 / 編曲:斉藤功
3. 朋輩よ [オリジナル・カラオケ]
4. 長谷寺の雨 [オリジナル・カラオケ]
■三山ひろし「酒灯り」

年末の『NHK紅白歌合戦』では、恒例となったけん玉の連続記録で前年のリベンジを達成。前年に失敗した16番さんは今年は8番目で参加し、見事成功。128人連続ということで、毎年、全員が終わる前に歌が終わってしまうのだが、昨年の歌唱曲「恋…情念」はよりコッテリしたアレンジのロングバージョンがあるので、どうせならけん玉が終わるまで超ロングバージョンで聴かせてほしかった。無理か(笑)。
今年の新曲は打って変わって、昭和の時代を追想するかのような懐かしいムードの2曲。「酒灯り」は悲しい女の酒場歌。悲しい気持ちをほのかに照らしてくれる酒場の温かな出来事を追想する。カップリングの「昭和の恋歌」はタイトルそのままに、居酒屋のラジオから流れる昔の歌に今はいない人を追想する。三山の柔らかで温もりのある歌声にはこういう曲が似合っていると思う。ただし、さらりと歌っているように聴こえるが、節回しなどはなにげにかなりテクニカルで、プロのプライドが滲む。
「酒灯り」発売情報
CRCN-8722 定価:¥1,500(税抜価格 ¥1,364)
【収録曲】
1. 酒灯り
作詩:さいとう大三 / 作曲:弦 哲也 / 編曲:南郷達也
2. 昭和の恋歌
作詩:結木 瞳 / 作曲:弦 哲也 / 編曲:南郷達也
3. 酒灯り [オリジナル・カラオケ]
4. 昭和の恋歌 [オリジナル・カラオケ]
5. 酒灯 [一般用カラオケ]
6. 昭和の恋歌 [一般用カラオケ]
■木村徹二「雪唄」


父である鳥羽一郎の新曲と同じ日にリリースとなる3枚目のシングル。近年の男性演歌歌手には珍しく、非常にタフな声を持った歌い手で、その声がアイアンボイスと名付けられたのも納得だ。
作詞・作曲は、デビューから3作連続で実兄である木村竜蔵が担当。前2作はその声をフルに活かした、パワフルなロック演歌とでも呼びたくなるような楽曲だったが、今回は少し方向性を変えて、ポップス調の非常にスケールが大きくドラマティックな楽曲となった。自分の心に問いかけるようなメッセージが込められた歌詞は文学的な匂いがする。以前からうっすらと感じてはいたが、今回の徹二の歌はまるで玉置浩二のよう。これはおそらく玉置からの影響が強いと思われる竜蔵が歌ったデモテープのニュアンスをそのまま取り入れたのではないか。これまで以上に声のパワーが増しているし、実に見事な歌唱を聴かせる。竜蔵もここしばらく名曲を連発しており、作曲家としても絶好調。これは今後も代表曲の1つとして歌われ続けていくであろう名曲だ。
今作はAタイプとBタイプが同時発売となっており、カップリング曲はそれぞれに「湯の町」と「忘らりょか」を収録。どちらも演歌調の曲ではあるが、どこか新しさを感じる。木村兄弟、ちょっと凄いことになってきた。
「雪唄」発売情報
◾︎Aタイプ
CRCN-8724 定価:¥1,500(税抜価格 ¥1,364)
【収録曲】
1. 雪唄
作詩:木村竜蔵 / 作曲:木村竜蔵 / 編曲:遠山 敦
2. 湯の街
作詩:木村竜蔵 / 作曲:木村竜蔵 / 編曲:遠山 敦
3. 雪唄 [オリジナル・カラオケ]
4. 湯の街 [オリジナル・カラオケ]
◾︎Bタイプ
CRCN-8725 定価:¥1,500(税抜価格 ¥1,364)
【収録曲】
1. 雪唄
作詩:木村竜蔵 / 作曲:木村竜蔵 / 編曲:遠山 敦
2. 忘らりょか
作詩:木村竜蔵 / 作曲:木村竜蔵 / 編曲:遠山 敦
3. 雪唄 [オリジナル・カラオケ]
4. 忘らりょか [オリジナル・カラオケ]
■楠木康平「北へひとり旅」

2023年度の日本クラウン新人オーディションで準グランプリを獲得した23歳の新人のデビュー曲。キャッチは「魅惑の裏声ボイス」。演歌で裏声を武器に歌う人はなかなか珍しいので、それだけで個性をアピールできそうだ。だが、気になることがある。
デビュー曲は3連のムード歌謡で、東京から青森へと向かう女の歌。通り過ぎる街の名前が歌われていくのだが、東北新幹線がある時代に山形・角館と、わざわざ内陸ルートを取るところがロマンだ。そんな女の哀愁を、ひっくり返るような裏声を時折混ぜ込みながら少し線が細い声で歌っていくのだが、気になったのは、実は平歌もすべて裏声なのではないかということだ。氷川きよし以降の男性演歌歌手は、ミドルボイスからヘッドボイスを行き来するような滑らかな歌い方をする人が増えたが、この新人の歌い方は少しやさぐれている。実は地声はもっと低いのではないか。
もう1つ気になったのが、歌の表現に昔の美川憲一や矢吹健などと近い狂気のようなものを感じることだ。もし、本当に地声が低いのだとすれば、ブルース系のムード歌謡ファンが長年に渡って待望した歌手が誕生した可能性があるのだ。もし地声がハイトーンだったとしても、カップリング曲の「おんなのワルツ」の歌唱表現の見事さだけで素質は十分。とにかく気になる新人。もっとダークな怨念系のブルース曲を歌わせてみてほしい。
「北へひとり旅」発売情報
CRCN-8723 定価:¥1,500(税抜価格 ¥1,364)
【収録曲】
1. 北へひとり旅
作詩:日野浦かなで / 作曲:あらい玉英 / 編曲:夏目哲郎
2. おんなのワルツ
作詩:井上登美子 / 作曲:あらい玉英 / 編曲:夏目哲郎
3. 北へひとり旅 [オリジナル・カラオケ]
4. おんなのワルツ [オリジナル・カラオケ]
文◎池上尚志
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