スペシャル第二弾【音楽的才能】

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音楽的才能とは何だろうか?

僕は“フィーリングを正しくつかんで音楽で表現する力”だと思う。“Love is Feeling”と歌ったのはジョン・レノンであるが、INVISIBLE ONE(見えないもの)を音で表した時に、フィーリングはより強い訴求力を持つ。

音楽もまた目には見えないが、フィーリングを羽ばたかせる力を持っていると思うのは、僕だけだろうか?

小林建樹は「“オマエはフィーリングで音楽をやっている”と他人から言われることが多いです」と言う。フィーリングで音楽をやっている、そのことを表面的にとらえると“曖昧に音楽を作っている”と考えられがちだけれども、実は全く逆で、“音楽の本質をしっかりと掴んでやっている”というのが真実だろう。

小林の楽曲と発言がそのことを裏打ちしている。


小林:
音楽はわりと明確な歌詞とかも大事ですけど、もう少し違う面も大事だったりするじゃないですか。時代の雰囲気とか気分とか。

●フィーリングとか大事ですよね。

小林:
そう。絵でフィーリングを出すのは難しいと思ったんですけど、(音楽なら)出せるなと思ったら…やっぱり音楽の方がフィーリングは出しやすいんで。

● そのフィーリングを掴むのは自分では得意だと思えたんですか?

小林:
やり始めたとき?

● そう。やっぱり、小林さんの書く楽曲にはフィーリングって大事だと思うんですよ。音の使い方とか。

小林:
窪田晴男さんと一緒にやってるんですけど、窪田さんもそういうことを言いますねぇ。“感覚だけでお前は歌ってる”って。めちゃくちゃに楽器を弾いてるんだけど、出来上がるとちゃんと曲になってるのが驚いたって言ってました。窪田さんとかはきっとコピーをして、いろいろ理論的に重ね合わせていって頭で判断しよるけど、僕はそうじゃないって言われるんです。実際はそんなこともないんですけどね。

● たとえば、勉強になった楽曲とかってありますか?

小林:
やっぱりビートルズですね。

● それはコードを分解したり、アレンジの仕方のコーラスだったりとかっていうのを分解して学んだんですか?

小林:
コード進行ですね。20歳になるまでアレンジしたことなかったんで。けっこう10代で宅録してる人っているじゃないですか? 僕は20歳まわってからなんですよ、宅録。それまではシンセサイザーもエレキギターも持ってなかったし。ましてやカセット4chのMTRとか持ってなかったんですよ。アコギとピアノしか家になかったんで。カシオトーンが一台あっただけなんで、それをラジカセに録って。そんなに宅録に思い入れがあるわけでもないんですけどね。

●構築っていうところには、初期の頃は興味がなかったんですかね。

小林:
バイオリンがどうとかっていう? あったんですけど、オーケストラだったんで、譜面でやるもんだと思ってたんで。そっちは勉強しましたね。けっこう勉強しましたね。

● バイオリンが3本だったらどういうふうに音を重ねていけばいいか、とか。

小林:
いやそれがね、違うんですよね。感覚的に勉強しただけなんで。すごい勉強したと思ってたんですけど。理屈っていうのは解らないんですよね。三管がどうとか、ああいうのはよく解らないです。第二バイオリン=6、ヴィオラ=3とか、イマイチ解らない。感覚だけで成り立ってるんで、今ちょっと苦労してます。

● 小林流の学習の仕方っていうのは、いま感覚的っていう言い方をしてましたけど、学習したことを自分の曲の中に取り入れて、それが学習ってことなんでしょうか?

小林:
……僕ね、不思議な力がひとつあって(笑)。“いいなぁ、このコード進行”って思うじゃないですか? まだ見ず知らずのコード進行。そのコード進行だけで1曲出来たりするんです。…今喋りながらぜんぜん不思議じゃないと思ったんですけど(笑)。それになったときに、“あ、腹に入ったな”と思う。腹に入った時点で学習したことになる。

● コードに分解しただけでは学習ではなくて、そのコードが頭の中に入って、小林さんの中から出てきたら。

小林:
出てきたら、学習完了って感じですね。

● 格好いいですね。

小林:
え? でも普通そうじゃないですか?

 普通は、コードを分解してそれに違うメロディを当ててみたり、あるいは、決まり切った循環コードに付くメロディなのに「天から降ってきた」などと言うのが凡人の限界なのだ。

でも普通そうじゃないですか?”…ここに小林建樹の非凡さが出ている。

取材・文●音楽文化ライター・佐伯明(00/07/10)

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