鋼鉄神の咆哮、再び

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鋼鉄神の咆哮、再び

 

Rob Halfordは改心したメタル者である。こう書くと、世界で最高のヘヴィメタルバンドでフロントマンを務めていた頃の彼を知る、昔からのファンには奇妙に聞こえるかもしれない。しかし、これはRob自身が認めていることなのだ。「おもしろい話だろ?」と彼は言う。「全く凄い体験だったよ」。そして、その凄い体験は、彼の最新ソロアルバム『Resurrection』に見事に昇華されているのだ。

とはいえ、Robが全くヘヴィメタルを捨ててしまった訳ではない。かつてJudas Priestと共に20年ものあいだ頂点を極めた、あの古典的なブリティッシュサウンドからは離れてしまったというだけなのだ。彼はまず、FightというユニットでPantera風のモダンなメタルを展開し、さらにTwoではインダストリアル/エレクトロニック・ロックを追及した。高い評価を得られず短命に終わったこのバンドからは、現在Marilyn Mansonでギターを弾いているJohn Loweryが出ている。'90年代を通してRobは、この2つのバンドで様々なサウンドやスタイルの実験を重ねてきた。しかし、やがてこの伝説のヴォーカリストは、自らのルーツへと己の心を連れ戻す啓示を経験するのだ。

結局、すべては常に私自身の中にあり、決して消えてはいなかったんだ、ということが自分でもわかるようになったんだよ」とRobは答える。

ただ、ランプの明かりが少し小さくなっていただけなんだ。でも、今はバルブ全開で、また明々と輝くようになった。それも、ここ数年私が経験してきたことから得たことなんだ。特に、Twoでの経験が大きかった。あのプロジェクト自体が非常に変わっていたし、何かと問題の多い時期でもあった。でも、あのプロジェクトがあったからこそ、すべてが完璧に理解できるようになったし、これが自分の人生なんだ、ということもわかるようになったんだよ。つまり、私は“メタルゴッド(メタルの神)”なのだ、とね

熱心なファンが愛情込めて彼につけたあだ名を口にして、Robはくっくっと笑った。「私はメタルゴッドであらねばならない。それが私なのだから。本当に素晴らしい数年間だったよ。この数年間は自分にとって本当に重要な時期だったし、すべてがつながり合った時期だった。この年月があったおかげで、私は自分がいるべき場所、自分の愛する我が家へと戻れたのさ

エネルギー溢れるアルバム『Resurrection』の中で、彼は実際こう叫んでいる。「戻ってきたぞ!」と。このアルバムは、Judas Priest脱退以降の彼を特徴づける私的で内省的な歌詞をともなった、激しく炸裂するヘヴィメタルが全12曲収録されている。“Made In Hell”は、自らがメタル・シンガーとなるまでの日々を年代記的に綴り、“Silent Screams”ではメタルの救世主に戻るための険しい道のりを描いている(ここでの彼はメタル界最高の精神分析医だ)。Judas Priest時代の曲、“Electric Eye”に触発された“Cyberworld”ではインターネットの暗黒面を探り、Iron Maidenのフロントマン、Bruce Dickinsonと競い合うようなデュエットを繰り広げる“Then One You Love To Hate”では、一度は有名なバンドを離れた2人のシンガーが、脱退劇に対するファンの怒りに満ちた反応をつついている。

実際、'92年にRobがJudas Priestを脱退した時は、大きな騒ぎとなったものだった。彼の脱退、すなわちバンドとバンドが築き上げた時代の死、と受け取った昔からのファンは怒りに震えた。さらに、Fightの激しいパワーや、Nine Inch Nailsに大きく影響されたTwoのサウンドに、Judas Priestの熱心なファンは複雑な反応を見せた。そして、もののわからない少数派は、Robが'98年にMTVと代表的なゲイ雑誌『The Advocate』で、自らがゲイであると告白したことに対しても不満を述べたのである。

そこへ起こったのが、Robによるかの有名な「メタルは死んだ」発言である。同じく'98年になされたこの発言に関してRobは、最近行なわれたドイツのロック雑誌『Rock Hard』のインタヴューでこう懺悔している。「あの件に関しては、『本気じゃなかった。あの時メタルと言ったのは、自分がかつてやっていたような音楽や、Judas Priestのようなタイプのバンドは、今はもういないって言いたかったんだよ』と言って、話をごまかそうとしたんだけどね。実際には、ヨーロッパにはあの手のバンドがたくさんいるのにさ。あの発言1つとっても、当時の私の精神状態がわかるというものだろう。あれは、『Metal Edge』誌の元編集者のGerri Millerと一緒に、ツアーバスで話していた時に言ったんだ。あの時の私は凄くイライラして落ち着かない気分だった。それで、メタルは死んだなんていう馬鹿なことを言ったわけさ。全く馬鹿なことをやったよ

あの発言で私はヨーロッパ中を敵に回してしまった。そこで、あの時は本気じゃなかったんだ、どうかしていたんだ、という言い訳をし続けたんだよ。全く馬鹿なことを言ったもんだ。自分の過ちは認めるべきなのにね。本当にあれは大きな間違いだった。責任は全部私にある

ゆえに、タイトル曲の“Resurrection”は謝罪の言葉でもあるのだ。「あれは私自身のために、そしてファンのためにある曲だ」とRobは言う。

「メタルのファンは本当に忠実で、熱心な人達だ。だからこそ、私がしたように彼らを怒らせたら、立ち上がって手を挙げて『申し訳なかった』と言わなければならないんだよ。このアルバムの中には、それを説明している言葉も入っているんだ。うまく伝わってくれるといいんだが。みんながこのアルバムを聴いて『わかったよ、Rob。君が君にとって言う必要のあることを言っているのはちゃんとわかってる。さあ、この話はもうこれきりにしよう』と思ってくれればいいんだけどね。人間らしさがこのアルバムには含まれているからね。そのおかげで真実味のあるものになっているし。人間っていうものは馬鹿なことをするものなのさ。それだけのことだよ

過去は過去として、Robの眼差しはまっすぐに未来へと据えられている。シンプルにHalfordと名付けられた彼の最新プロジェクトは、結成までに18ヶ月を要した。Robが集めたバンドのメンバーは、ギタリストのMike Chlasciak、同じくギタリストのPatrick Lachman、TwoのベーシストだったRay Riendeau、そして元Riotのドラマー、Bobby Jarzombekだ。彼らはプロデューサー兼Tribe Of Gypsiesのギタリスト、Roy Zと共にレコーディングを行なった。Roy ZはBruce Dickinsonのプロデュースと曲作りを手がけ、ツアーにも参加した人物で、現在はHelloweenのプロデューサーを務めている。『British Steel』時代のJudas Priestをお手本にして行なわれた作業を経て、Robはメタルへの新たな信念に満ちた、新鮮で爽快な12曲を生み出した。

Rob自身は“Silent Scream”がこのアルバムの鍵だと感じている。一番最初にデモを制作したこの曲を、彼は自らのウェブサイトでMP3ファイルで公開した。圧倒的なまでのファンからの熱心な反応に勇気づけられたRobは、その方向性へと進むことを決意する。「すべてがこの1曲につながっていると考えているんだ。あの曲にはメタルの偉大なる世界にある様々な要素が含まれている。すべてがあの7分間に凝縮されているんだよ」Robはそう看破する。「様々な味わいが込められているし、そこから色々なサウンドが派生していっているんだ

Iron MaidenとQueensrycheのオープニングとして展開されている最新のライヴで、Robは“Locked And Loaded”や“Nightfall”のような新曲に、Fight時代の曲“Into The Pit”を取り混ぜ、さらに“Tyrant”や“Stained Class”といった長い間演奏されていなかったJudas Priestの名曲も演奏している。歌いこなすだけの能力を持つ若いフロントマンを入れながらも、Judas Priestがどういうわけか演奏しない曲達だ。とはいっても、Robはハーレーに乗って登場したりはしない。ハーレーに乗る彼の姿は、自らの新たなアイデンティティを明らかにすべく、新しいアルバムのアートワークにも使われていたが、ステージでまたあの姿を披露することはJudas Priestの財産を侵すようなものだとRobは感じているのだ。それは彼の望むことではない。彼はさらに、8年も話をしなかった時期があったが、ようやく前のバンド仲間達と再会したとも語っている。彼がJudas Priestに戻るのではないかという噂は相変わらず絶えないが、今のRobは、20年間続いてきた大切な友情がよみがえることを望んでいるだけのようだ。

個人的な感想を付け加えさせてもらうなら、この『Resurrection』は、'90年に出たJudas Priestの傑作『Painkiller』以来の、Robの最強アルバムだ。しかも、当時のファンタジーっぽい歌詞からRobは成長している。「私はただ、みんなに何がどうなっているのかを語っているだけだよ」と彼は言う。「私がどういうことを経験し、どう感じてきたか、をね

おかえり、Rob。

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