心へしっかりと想いがプレゼントされた聖なる夜

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心へしっかりと想いがプレゼントされた聖なる夜

街中がきらびやかなイルミネ-ションに覆われた、12月25日・渋谷の町並み。

公園通りの坂道を代々木公園の方へ向かって歩いてると、すれ違うのはカップルがほとんど。他は、女の子の集団。たま~に男どうしや家族連れが通るくらいか……。まさに、この日の渋谷の街は、“クリスマス・ムード一色”に染まっていたと言っても、過言ではあるまい。

そんな聖なる夜を、思いきりムーディでロマンチックなパーティ会場へと昇華してくれた女性がいた。

今宵の古内東子は、SHIBUYA-AXを舞台に、いつもとは一味違ったライブを開催……それが、3人のキーボーディストをバックに従え実践した、“心へ歌を届ける”シンプルなコンサ-トだった。


「toko furuuchi concert tour 2000 "A secret night"」と題し、開催された全国ツアー。今回は、スペシャルな内容ということで、ツアー本数も少なかったうえに、会場もさほど広い場所ではなかったぶん、当コンサートへ参加出来た人は、本当に「ラッキー」と言う言葉が相応しいだろう。なにせ滅多に企画的な色を出さない彼女が、クリスマスを題材にした楽曲演出を施してくれたほどだもの。まさに、"A secret night"というタイトルにピッタリのステージだった。ではさっそくだが、その日の舞台の模様を、拙い言葉を通しながらだが、伝えていこう。

pic by Takeshi Oguni
舞台の上に据えられたのは、グランドピアノと、2組のキーボード群。場内が暗くなり、壮麗なストリングスの調べが流れ始めるや、シンプルなステージの上に、3人のミュージシャンが登場。遅れて古内東子が現れるや、そのまま演奏は、1曲目「恋上手」へ。黒のロングスカートに白のシャツと、とてもシンプルなスタイルで、舞台の上へと現れた彼女は、親指をスカートのポケットに軽く差し込みながら、しっとりとした表情へアレンジされた「恋上手」を切々浪々と歌いあげてゆく。そんなムーディな楽曲の雰囲気に合わせ、バックの巨大なスクリ-ンがほの赤い光に包まれてゆく。

とてもシンプルながらも、一切の無駄がない…。本当に歌声と楽曲の持つム-ドをしっかりと伝えてくれる“演奏”であり“ステ-ジ演出”だ。さりげなくピアノの演奏から始まった「逢いたいから」では、ブルーとグリーンの光がステージ上の古内東子を優しく照らし出していく。

本当に伝えたい……しっかりと響かせたい。そんな彼女の想いが、はっきりと心へ伝わってくる。

なんてム-ディな演出なんだろう…。

MCでも古内東子は、「
今宵をしっとり、しっぽりとした夜にしていきます」と発言。さらに「今夜はあえてスタンディングな会場にしたので、好きな人と寄り添い、揺れながら楽しんでください」と語りつつ、その言葉へ似合う演出を施し始めていった…。

オレンジの光を浴びながら、しっとり歌いかけていった「彼の背中」。中盤から、テンポを上げ、心地よい揺れを場内へと導き出していった「さよなら」。ボサノバ調のシンプルなリズムに乗せ届けてくれた「あなたのためにできること」。ホント楽曲の風景が映り変わるごとに、自然と身体が心地よくスウィングしていく気分だ。

MCでは、「
クリスマス・イブの日に、カニやアンコウ等を入れたちゃんこ風の豪勢な鍋…その名も“富鍋”をみんなで食べた」などなど、日常の彼女の風景を報告。そんなリラックスした雰囲気とム-ディな楽曲とが織りなす不思議なコントラスト……。まぁ、そこが古内東子のステ-ジの魅力になっているのは、間違いのない事実だが…。

pic by Takeshi Oguni

女の子の旅立ちの想いを綴った「ウソだとしても」をムードたっぷりに歌う古内東子。「星空」では、憂いを秘めた表情までも、舞台の上から彼女は魅せてくれていた…。「星空」の長いエンディングを受けつつ、着替えを終えた古内東子が、再びステージへ登場。金色のシルクドレスを身に付けた彼女は、さっそうとグランドピアノへ座るや、いきなり弾き語りで「おしえてよ」を演奏。続く「くすり指」を彼女は、白い明かりに包まれながら歌いあげてゆく。

古内東子の歌には、街を舞台にした物語がとても多い。中でも印象的なのが、冬の銀座を舞台にしたナンバー、その名も「銀座」。清とした風景が浮かんでくる、この「銀座」。続く「誰より好きなのに」が奏でられ始めたとたん、場内から嬉しい歓声がとんでいたのも、印象的な一場面…。

10年ぶりに、男性の立場から想いを綴ったという、最新シングル「そばにいて」を真っ赤なスポットライトを全身に浴びながら、切々と歌いあげてゆく古内東子。壮麗なストリングスの調べに心地よい興奮を覚えつつ、オレンジの光に包まれながら熱唱した「助手席」。そしてオ-ラスは、白い光のベールが彼女を覆うなか、心地よく身体を揺らしながら、気持ち良さそうに「My Brand new day」を歌う古内東子が、ステ-ジ上には居た……。

pic by Takeshi Oguni
アンコール。

派手やかなピンクのスパンコ-ル・ドレスへと着替えた古内東子が、颯爽と登場。グランドピアノの前へと腰を下ろした彼女は、再び弾き語りで「歩き続けよう」を歌いあげてゆく。

そしてここからは、時節にピッタリな雰囲気を醸し出していくクリスマス・タイム。「Santa Claus Is Coming To Town」では、場内のお客さんを2手に分け、サビメロの♪Santa Claus Is Coming To Town♪を、掛け合いや合唱という形を取りながら、一緒に歌いあげていく。古内東子のコンサートでは、とても珍しいコール&レスポンス。そんなハートフルな雰囲気を受け、続けざま彼女は「Give love on Christmas day」を熱唱。そしてオーラスは、自身の初クリスマス・ナンバー「Xmas present」を、無数の真っ白な光のシャワーを浴びながら、まるで天から舞い降りた女神のような佇まいで切々と歌いあげていた…。

とてもシンプルな……でも何より、心へしっかりと想いがプレゼントされた、とても至福を覚えるクリスマスとなった、今宵。

その歓喜の想い……再び2001年にも味わいたいと切に願うこの頃だ。

文●長澤智典(00/12/26)

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