スーパープロデューサー、ヒップホップ界に君臨す

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スーパープロデューサー、ヒップホップ界に君臨す

 


 

Dr. Dreにとって、この1年は非常に良い年だったと言えるだろう。まず第一に、彼が立案した「Up In Smoke」というコンサートツアーがヒップホップ史上最大の成功を収めた。Dreをはじめ、EminemSnoop DoggIce CubeXzibitといった出演者のパフォーマンスを生で観ることのできなかったアンラッキーな人たちも、今ではDVD『Up In Smoke』でこのツアーの模様を楽しむことができる。DVDでしか見られないバックステージの映像も売りのひとつだ。

彼自身、『The Chronic』に続く待望の最新作『Dr. Dre 2001』が、自らが所有するレーベル、Aftermathからリリースされた。このアルバムは現在までに600万枚以上ものセールスを記録している。また、700万枚以上を売り上げたEminemの2ndアルバム『The Marshall Mathers LP』もAftermathの作品だ。さらに、No LimitからリリースされたSnoop Doggの『The Last Meal』には、Dreのプロデュースとミキシングの才能が発揮された曲が数曲収められているし、Loud Recordsからは、Dreがエグゼクティヴプロデューサーを務めたXzibitの『Restless』が発売となった。どちらの作品もビッグセールスが期待されている。

確かにいい年だったね」。Xzibitの1stシングル“X”のビデオクリップ撮影の合間、自分のトレーラーの中でDreは言った。「絶好調だ

Xzibitとタッグを組んだことに対する周囲の騒ぎ方に、Dreは少なからず驚かされたようだ。「(『Restless』が)あんなに期待されているとは知らなかったよ」と彼はいぶかしげに言う。「あれを聴いてショック受けるのを皆が心待ちにしてるってことは知ってたさ。けど、あれほどとは思わなかった。すげえよな。でも、よかったぜ。あいつもいい奴だし。それだけの価値のある奴さ

DreがXzibitのアルバムにこれほど深く関わることになった理由は、一体何なのだろう? 「あいつから頼まれただけだよ」と彼は笑う。「別にデカい決断が要ることでも何でもなかったぜ。ある日、奴がスタジオにやって来て、自分のアルバムのエグゼクティヴプロデューサーをやってくれないかって俺に頼むから、『いいよ』って答えたのさ。それから俺たちは企画を練り始めた。どういうふうに作っていくかってプランをね

このヒップホップ界の重鎮がコンプトンの伝説的ラップグループ、N.W.A.のメンバーとしてそのキャリアをスタートさせたことは確かに事実かもしれない。しかし、今や彼のプロデューサーとしての能力は彼の音楽と同じくらい有名だ。天才クリエイタ-であり、同時に抜け目ないビジネスマンでもある彼は、曲をひとつプロデュースすることと、エグゼクティヴプロデューサーとしてアルバム1枚を手掛けることの違いを即座に見抜く才覚を持っている。「たいていの奴らは、レコーディングに金を払えば“エグゼクティヴプロデューサー”のクレジットをもらえると思ってる。そうじゃねえのにな」と彼は説く。

エグゼクティヴプロデュースってのは、俺に言わせりゃ曲選びから始まって、何曲か実際にプロデュースしたり、音作りに実際に手を貸すってことだ。例えば俺は『Xzibit、お前がこれこれから拾ってきたこの曲はホットじゃねえ。ここにあるこれこれの中の曲を使おうぜ。お前、これをライムったらいいんじゃないの』てなことを言った。つまり、基本的には作品を完成させるための手助けをするってことだ。エグゼクティヴプロデュースのクレジットが入ったアルバムなんかゴマンと出ていて、普通はせいぜいスタジオ代を払ったとかそれくらいのもんだろうけどね。かたやプロデュースってのは、ちゃんとスタジオに入って1から10までレコード制作のディレクションをするってことなんだ。俺がプロデュースするってことは、最初にハイハットの音を決めるところからミックスが完了するまで、すべてを手掛けるってことさ

Dreは、プロデュース作業を終えると同時に、自分が手掛けた作品がヒットするかどうか分かるという。「何かこうピンとくるものがないとダメだね」。そう語る目の輝きは彼が真剣であることを物語っているが、笑いを加えるのも忘れない。「タマタマにビリビリ刺すような衝撃が来れば、当たりだって分かるんだ

では、その最新プロデュース作品について、Dre自身はどれくらい売れると思っているのか? いつものビリビリくる感覚は果たしてあったのだろうか? 「(『Restless』は)売れると思うよ」。彼はそう予言する。「まあ、200~300万枚はいくだろうね。だが、本当に期待すべきなのはその次のアルバムさ。Eminemの場合に例えてみよう。奴は1stアルバムで皆の関心を引くことに成功したが、今出ている2ndアルバムは1000~1200万枚くらい売れそうな勢いだ

スタジオでのDreの完璧主義者ぶりには定評があるが、彼自身もそれを否定しない。こうした評価について、彼は頷きながらひと言で言い切った。「その通り」。だが、その実績から察するに、彼と仕事をしたアーティストたちは、彼の完璧主義を嫌がってはいないようである。

スタジオに一歩足を踏み入れれば、どんな奴だって必ず高い水準ってのを要求されるのさ」。Xzibitはそう断言した。

皆が思うほどキツくないし、クソまじめにやってるってわけでもない。仕事の環境って意味では確かにそうだけど、でもリラックスしてるし、けっこう即興的だよ。彼は本物のライヴミュージシャンたちと仕事をしてる。だから、より多くのヴァイブを感じられるし、あとは方向性さえきっちり把握できれば全てOKなんだ

EveがDreとともにスタジオ入りした2ndアルバム『Scorpion』は、2月20日にRuff Ryders/Interscopeから発売される予定だ。「彼とこんなに密接に仕事したのは初めてね」とプラチナセ-ルスを誇るヒップホップ界のディーヴァは言う。彼女はかつてAftermathに所属していたが、その後Ruff Rydersのレーベルと契約、デビューアルバム『Let There Be Eve...Ruff Ryders' First Lady』をリリースしている。

(Dreとは)1曲終わったところで、もう1曲一緒にやるためにL.A.に戻るの。ある種の流れみたいなのをつかまえろって言われたわ。その流れを私がどう作るかってことに関して、彼はホントに力になってくれた――歌詞よりも曲そのものの勢いって部分でね――素晴らしいことよ。彼はとてもクリエイティヴだし、今回のプロジェクトをとても楽しみにしてくれてる。ホントにいいエネルギーに満ちてるわ

今後は、いかに2000年を超える活躍ができるかということがDreの課題となってくるだろう。2001年、彼はAftermathと契約したセントルイスの女性R&Bシンガー、Truth Hurtsをはじめ、いくつかのR&Bプロジェクトを手掛けることになっている。また、西海岸に新しく設立されたL.A. Confidentialというラップレーベルに所属する新人アーティストたちのプロデュースにも手を貸す予定だ。

だが、こうした外部との仕事がどれだけ活発であっても、ファンは彼の次のソロアルバムの発売をそれほど長く待つ必要はなさそうである。「インターネットが、俺の次のアルバムのコンセプトさ」。2000年初頭にDreがNapsterを相手取って起こした訴訟のことを考えると、少し意外なコメントではある。「だいたい2001年の夏くらいから取りかかって、たぶん10カ月から1年で完成するんじゃないかな

Dreにとってはまさに『2001: A Musical Odyssey』(2001年音楽の旅)となりそうだ……。

 

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