強烈に感じさせる'60年代、そして、'70年代のソウルシンガーの匂

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強烈に感じさせる'60年代、そして、'70年代のソウルシンガーの匂

それは、ゲットー・ラヴのバラであり、そして、ハーレムのバラでもあった


<Jaheim at Club Harlem>
2001/5/11(Fri)

1. Waiting On You (イントロ)
2. Love T.K.O. <Teddy Pendergrass> (16小節)
3. Could It Be (Anything You Want Remix. (2コーラス)
4. Let it go (2コーラス)
5. Ghetto Love (2コーラス)
6. Lookin For Love
7. House Is Not A Home <Luther Vandross>
8. Remarkable
9. Just In Case
10. Forever
11. Between The Sheets <The Isley Brothers> ( イントロ)~Sweet Thing <Rufus & Chaka Khan>(イントロ)~Close The Door <Teddy Pendergrass> (イントロ) ~Love Still Here
12. Could It Be
---encore---
13. Lil' Nigga Ain't Mine (2コーラス)
14. Ready, Willing & Able


1st ALBUM

『Ghetto Love』
ワーナーミュージック・ジャパン WPCR-10937
2001年4月25日発売 ¥2,079(tax in)

1Intro
2Du & Jah
3Lookin' For Love
4Interlude:Answering Machine
5Let It Go(Featuring Castro)
6Could It Be
7Ghetto Love
8Hapiness
9Interlude:Jah's Seed
10Lil Nigga Ain't Mine(Featuring Castro,Duganz and Precise)
11Finders Keepers(Featuring Lil' Mo)
12Just In Case
13Heaven In Your Eyes
14Anything(Featuring Next)
15Waiting On You(Featuring Miss Jones)
16Remarkable(Featuring Terry Dexter)
17Ready,Willing And Able
18Love Is Still Here
19Forever
20For Moms
21Could It Be(Anything You Want Remix)



やっぱ流れている血が違うねぇ…と思わずにいられないノリのいいコメントを寄せてくれました!

予定の午前1時はとっくに過ぎていた。金曜深夜の渋谷ハーレム。

来たるべくライヴへ、皆が期待をはずませていた。たださえ週末のハーレムは混みあうのに、この日はジャヒームのショウケース・ライヴがあるというので、さらに入場者のヴォルテージはあがっていた。


撮影●岸田哲平
2時過ぎ。もはや身動きが取れない状態になったそこに、「ウエイティング・オン・ユー」のイントロが流れ、すぐにテディー・ペンダーグラスの大ヒット「ラヴ・TKO」のトラックが流れ始めた。ジャヒームがこれを歌い始める。彼のソウルフルな声に完璧にフィットする選曲だ。

この瞬間だけで、ジャヒームが伝統的な男性ソウル・シンガーの王道の流れに乗ったシンガーであることがわかる。かつて、サム・クック、オーティス・レディングマーヴィン・ゲイ、テディー・ペンダーグラス、ルーサー・ヴァンドロスジョニー・ギルキース・スウェットといったシンガーたちが歩んできた「一流の男性ソウル・シンガー」という名の黄金の絨緞(じゅうたん)の上を歩みはじめているのだ。

熱くシャウトし、腰をくねらせ、マイクを愛撫し、時にはバック・ダンサーとともに激しく踊り、パフォーマンスを徹底的にエンタテインメントとして昇華していく。黄金の絨緞を歩けるのはほんの一握りのクラスのあるシンガーだけだ。ジャヒームにはそのクラスと資格があった。

ゆったりとしたスロー・テンポの「ルッキン・フォー・ラヴ」に続いて、ジャヒームにとっての思い出の作品「ハウス・イズ・ノット・ア・ホーム」に突入する。

この曲は、ディオンヌ・ワーウィックをアイドルとしたルーサー・ヴァンドロスが、そのディオンヌの作品をカヴァーしたもので、ルーサーのヴァージョンでもヒットしていた。それをジャヒームが気に入り、自らオーディションやライヴで歌っていた記念すべき作品である。声質もルーサーに似ているジャヒームが、こうしたルーサー・タイプの曲を歌うと、本当にルーサーそっくりだ。


撮影●岸田哲平
シングル・ヒットした「ジャスト・イン・ケース」が始まった。「もしも万一、今夜、オレが家に帰ってこれなかったら…」という歌だ。主人公の男は、おそらくギャングなのか、街の不良なのか、なにかヤバイ仕事をしているのか。今日、無事に帰って来られないかもしれない、そんな状況にいる。そして、「万一帰ってこれなかったら」と言って、彼女と愛しあう。

この曲のビデオ・クリップは、まさにそんな物語を映像化したものだ。ガールフレンドと愛しあっていた主人公が街にでると、ギャング抗争に巻き込まれ、敵のギャングの銃弾に倒れる。彼の体は路上に倒れ死んでしまうが、彼の魂はその体から抜け出て、自分の住んでいた街をさすらう。恋人が泣き悲しんでいるのを見て、初めて自分が死んだと気がつく。

ゲットーの厳しい現実と、そこに危うく育まれる愛を描いた作品だ。

ステージ上のジャヒームの動きも、はぎれがいい。その後、これまたルーサー風の「フォーエヴァー」をじっくり歌い切って、再び'70年代ソウルのヒット曲がメドレーで登場した。アイズレイ・ブラザースルーファス、そして、テディー・ペンダーグラスときた。ジャヒームが、'70年代ソウルのモードで、ハーレムを覆った瞬間だ。

ジャヒームの生の歌声を聴いていると、古くは'60年代、そして、'70年代のソウルシンガーの匂を強烈に感じる。おそらく、そうした過去の先達にしっかりと敬意を表し、彼らのソウルを理解し、自らの体内に吸収しているからだろう。

アンコールで、スローの「レディー・ウィリング・アンド・エイブル」になった。すると、彼はステージから観客に向かって赤いバラを、次々と投げ始めた。観客の腕が、あちこちで上にあがり、そのバラを必死につかもうとする。かつて、ジョニー・ギルが、ピーボ・ブライソンが、ベイビーフェイスが、ステージからバラを観客に投げ入れたように。

ジャヒームのバラは、ゲットーからのバラの贈り物だ。それは、ゲットー・ラヴのバラであり、そして、ハーレムのバラでもあった。

文●吉岡正晴(01/05/25)

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