目で見るジェネシスの歴史~ファン必見のお宝VIDEOリリース!

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目で見るジェネシスの歴史

ピーター・ガブリエルとフィル・コリンズ――

このふたりのスーパースターを輩出したというだけでもすごいのに、ブリティッシュ・プログレッシヴ・ロック・シーンを代表するグループとしても、30年間以上に渡って第一線で活動を続けてきた偉大なるグループ、それが“ジェネシス”だ。

このビデオは、そんな彼らの30年間に渡る歴史を、メンバーや関係者のインタヴューと、当時の貴重なライヴ映像、テレビ番組、ビデオ・クリップなどで構成した作品である。まさに“目で見るジェネシスの歴史”だ。

ミュージシャンシップの高さ、センスのすごさ、そしてその人格

最新ビデオ

『The Genesis Songbook(VHS)』
VIDEOARTSMUSIC VAVG-1088
2001年7月25日発売 3,990(tax in)

1ゴーイング・アウト・トゥ・ゲット・ユー
2スタグネーション
3サルマシスの泉
4ホライズンズ
5
ザ・ミュージカル・ボックス
6サパーズ・レディ
7アイ・ノウ・ホワット・アイ・ライク
8眩惑のブロードウェイ
9イン・ザ・ケイジ
10ダンス・オン・ア・ヴォルケーノ
11
アフターグロウ
12
フォロー・ユー、フォロー・ミー
13ミスアンダースタンディング
14ターン・イット・オン・アゲイン
15ママ
16インヴィジブル・タッチ
17セカンド・ホーム・バイ・ザ・シー
18ドミノ
19混迷の地
20
アイ・キャント・ダンス
21ノット・アバウト・アス
22フェイディング・ライツ
ピーター・ガブリエルフィル・コリンズ/マイク・ラザフォード/トニー・バンクス/スティーヴ・ハケットという“ジェネシス史上最強の5人組”はもちろん、オリジナル・メンバーのアンソニー・フィリップス、結果的にジェネシス最後のヴォーカリストとなったレイ・ウィルソンといった歴代メンバーに加えて、'80~'90年代の彼らのライヴには欠かせない存在だったセッション・メンバーのチェスター・トンプソンやダリル・ステューマー、そしてプロデューサーのヒュー・バジャムや歴代マネージャー、ジャーナリストなど、インタヴューでの登場人物はとても豊富だ。そのきめ細やかな取材にも敬意を表したい。特にピーターのインタヴュー、しかも彼がジェネシスのことを語るのは珍しいだけに、これはなかなか貴重な映像だといえそうだ(それにしても、ピーター、歳を取ってしまったなぁ)。

それぞれのインタヴューの内容は、どれも興味深いものだが、特にフィル加入のいきさつや、大問題作『ザ・ラム・ライズ・ダウン・オン・ブロードウェイ』前後のメンバー間の葛藤、またピーター脱退の真相などは、とても興味深く観ることができた。

さらにピーター脱退から、フィルがリード・ヴォーカリストになるまでの経緯や、そこから彼らがよりポップな方向へと進んでいった理由など、彼らの変遷を、時間経過とともに進行していく構成は、とても見応えがある。

そしてそんなインタヴューの合間に挿入される彼らのパフォーマンスの映像も、とても貴重なものだ。

特にピーター在籍時のパフォーマンスはすごい。化粧をし、被り物をし、奇抜な衣装で、舞うように歌うピーターの姿は圧倒的だ。

“シアトリカル・ロック”とも呼ばれた彼らのライヴのすごさの一端が垣間見られる映像がいっぱい登場する。中でも女性もののドレスを着て、キツネの被り物で歌うピーターの姿は圧巻。こんなロッカー、後にも先にもいない。なんてカリスマ性があって、なんて才気があり、なんてカッコいいんだろう。彼こそ、真の意味でプログレッシヴで、アヴァンギャルドなアーティストだということが、これらの映像が見事に証明している。

今から30年近く前に、こんな事をやっていたアーティストがいたということが、驚きだ。そんな彼らの姿が見られるだけでも、このビデオは価値があるといえるだろう。

でも欲を言えば、そのライヴ・パフォーマンス、ぜひ完全な形で見てみたいものだ。

そして『ザ・ラム・ライズ・ダウン・オン・ブロードウェイ』という壮絶な置きみやげを残してピーターが脱退し、フィルがリード・シンガーになってから、ピーター時代とはまた違った形で、圧倒的なライヴを展開するようになっていった彼らの歩みを、様々なライヴ映像とともに紹介している。

当時“世界最高のライヴ・バンド”と呼ばれ、演奏、ヴィジュアルとも凝りに凝った彼らのステージは、すさまじいものがある。そんな彼らのコンサートのすごさが、これらの映像から伝わってくる(このビデオでは紹介されていないが、今やコンサートにはなくてはならない“バリライト”という照明システムを開発したのも、実は彼らなのである)。またMTV時代になってからの、彼らのビデオ・クリップに対するこだわりなども、とても彼ららしいな、と思う。

ジェネシスというバンド、プログレッシヴ・ロックであってポップ、ポップでありながらもプログレッシヴという、不思議なバンドだった。そして彼らはまったく妥協せず、彼らが信じた音楽を、30年間に渡ってクリエイトし続けていたのだということが、この映像から伝わってくる。

彼らのミュージシャンシップの高さと、センスのすごさ、そして何よりもその人格の温かさと真面目さが、ヒシヒシと感じられる作品になっている。現在は活動を停止してしまった彼らだが、その残してきた音楽は、今でもまったく色あせていない。

最初と途中にチラリとしか出てこないが、おそらくこのビデオのために、フィル、トニー、マイクの3人が再び集結し、“再結成”ジェネシスの、アンプラグド・セッションを聴かせてくれている。この映像には、思わず胸が熱くなってしまった。

ジェネシス――確かに変わったグループだったが、愛すべき、グレイトなグループだった。

文●熊谷美広

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