史上最大の爆音フェスティヴァル! Beast Feast 2001レポート

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史上最大の爆音フェスティヴァル!
Beast Feast 2001レポート


爆音の2日間、そこで観たもの、得たもの

Beast Feast 2001
2001年8月25日、26日
@横浜アリーナ

8月25日(土)

SLAYER(米) / SEPULTURA(伯) / STATIC-X(米) / VISION OF DISORDER(米) / ARCH ENEMY/ UNITED(日) / THE DILLINGER ESCAPE PLAN(米)/ RAGING SPEEDHORN(英)/ DEVIATE(白) / SHADOWS FALL(米) / CANDIRIA(米)/ CALIBAN(独) / YELLOW MACHINGUN(日) / SUNS OWL(米)/ マイナーリーグ(日) / 地獄車(日)

8月26日(日)

PANTERA(米) / MACHINE HEAD(米) / ONE MINUTE SILENCE / BIOHAZARD(米) / MORBID ANGEL(米) / COCOBAT(日) / KITTIE(加)/ PULLING TEETH(日) / SUCK DOWN(日) /BAT CAVE(日) / 宇頭巻(日)/ SOILENT GREEN(米) / SKINLESS(米)/ UP HOLD(日)/ DIABLO(韓)

米:アメリカ 日:日本 韓:韓国 独:ドイツ 白:ベルギー 伯:ブラジル
瑞:スェーデン 加:カナダ




▲Pantera pic by Teppei Kishida



▲Sepultura pic by Toru Takakusaki



▲Machine Head pic by Toru Takakusaki
BEAST FEAST 2001

“史上最大の爆音フェスティヴァル!”──8月25~26日の2日間に亘り横浜アリーナにて行なわれたBeast Feast 2001へ行ってきた。直前になってアーク・エネミーがキャンセルになるといったハプニングもあったが、世界中から様々なスタイルを持った激烈バンドがここまで日本で大集結したことは、当然ながらかつてなかったハズ。日本からも数多くのバンドが参戦を果たし、2日間で、何と計30ものバンドが互いにシノギを削ったのだから凄まじい!

slayer

pic by Toshiharu Ishibashi


pic by Toru Takakusaki
個人的に一番楽しめたのは、やっぱり初日のトリを務めたスレイヤーだ。ニュー・アルバム『ゴッド・ヘイツ・アス・オール』のオープニングを飾る「Darkness Of Christ」をSEに使っていたことから、いきなりアタマから新作収録曲をやるのか? と思いきや、"ダ・ダ・ダ…!"というドラムスからお馴染み「Raining Blood」がスタート。アドレナリンが出まくる中、その次にトム・アラヤ(B,Vo)が「War Ensemble」をコールした瞬間──無条件でキレてしまい、気が付いたらメモ取るのも忘れて叫んでました…(苦笑)。

ニュー・アルバムから2曲しかプレイされなかった(しかも、うち1曲はサントラ収録で既発の「Bloodline」)のは、このフェス終了後に発売日がズレ込んでしまったことを考慮してのことだったろうか。また、“ライヴの定番曲”に加えて、しっかり意表を衝いた選曲をやってくれるのがスレイヤーらしいところ。

何と言っても今回は、後半に用意されていた、「Postmortem」~「Altar Of Sacrifice」~(「Jesus Saves」へいくと思わせて)「Chemical Warfare」のリフへと切り込む流れが何とも言えず強力だった。当然ラストは「Angel Of Death」で、"格の違い"をまざまざと見せ付けた、文字通り怒涛の約1時間強は「アッ!」という間に過ぎ去ったと言っても過言ではないだろう。

Pantera

pic by Kae Tabuchi
一方、2日目のトリを務めたパンテラは、集まったオーディエンスの総数はスレイヤーを上回ってもいたものの、フィリップ・アンセルモ(Vo)のダラダラしたMCやキレのない歌いっぷりにノリ切れず、最後まで熱い思いはくすぶり続けるのみで──途中、「Fucking Hostile」でスレイヤーのケリー・キング(G)が飛び入りしたにもかかわらず──決して爆発までには至らなかったように思う。勿論、ダイムバック・ダレル(G)のギター・プレイは変わらず超強力で、耳をつんざくギター・ソロでは何度か身を乗り出してしまいそうになったのだが…。

Sepultura

pic by Toshiharu Ishibashi
完全燃焼出来なかったという点では、同じことがセパルトゥラのステージにも当てはまるかもしれない。新作『ネイション』の楽曲も含まれていたとはいえ、その他は基本的に定番曲ばかりで、飽くまで“フェスティヴァル仕様”といった中庸なセット・リストを組んでいたことが、これまたカタルシスを得られなかった要因だったろう。デリック・グリーン(Vo)の堂々たるパフォーマンスは充分に目を引いていただけに、もう一歩ブチ切れた演奏と選曲を期待したかった…。

Machine Head

pic by Toru Takakusaki
実際、セカンド・ビルとしては、マシーン・ヘッドの方が圧倒的な印象を残してくれたのではないだろうか。フロントマンのロブ・フリン(G,Vo)が髪を黒くし、いつの間にやらギタリストのアールー・ラスター(G)もドレッドをバッサリと切り落としていたことで、ルックス面での違和感は否めなかったが、ザクザクと重く刻まれるリフがタイトなリズムの上を突進していく演奏は、徹頭徹尾“ヘヴィ・グルーヴ”に満ち満ち、素直に「カッコ良い!」と思わせてくれたものだ。

他には、メタル魂満載のツイン・リードがうまくハードコアっぽさと融合していたシャドウズ・フォール、混沌とした轟音の中で圧倒的な存在感を放っていたモービッド・エンジェル(パンテラのフィルが飛び入りしたのにはビックリ!)、そして、「
音楽デハ…俺達ハ友達ダ!」というアジア~ンな一体感を伴うMCにジーンときた韓国のメタリック・コア・バンド、ディアブロ当たりが印象に残っている。

それから…忘れちゃならないのが、バイオハザードだっ! タイトな演奏で強烈なグルーヴとラップ・ヴォーカルを叩き付け、ミクスチャー・サ
ウンドの醍醐味を存分に味わわせてくれた彼等は、レアで危険なエネルギーを保ちながら、それでいて、しっかり「観せる」アリーナ・ショウを完成させていたところが、やはり只者ではなかった。

ちなみに、日本代表バンドの多くは、どこか気負った部分ばっかりが目立ち、ガキっぽいMCで自らを安っぽく観せてしまっていたような気がする。そんな中、媚びることも突っぱねることもなく、自然体で自分達を表現していた沖縄出身の地獄車(紫の曲をSE代わりに使っていたのも渋かった!)はかなり好感が持てた。

事実、「日本のバンドだから○○」と言われることを必要以上に気にして、それに反発するあまり、余計に深みにハマってボロを出してしまうバンドはあまりにも多い。だが、何も勢いが空回りしていたのは、日本のバンドだけではなかったのだ。個人的には、鳴り物入りだったワリには、押し一辺倒のステージングが単調に思えたレイジング・スピードホーン、リード・シンガー嬢のデス声ちっくなブルータル・ヴォイスの狂暴さ以外に特別な"何か"が見出せなかったキティー辺りは、いずれ、またの機会を楽しみに待ちたいと思う。

ほぼノン・ストップで行なわれたフェスの全編を観ることは正直言って難しく、幾つか見逃したバンドもあったものの、全体を見終わっての感想は、動員の点での不満もあって「やや密度に欠けるものだった」…というもの。

それぞれ、トリのスレイヤーとパンテラがキチンと締めてくれたとはいえ、やはり、両日ともに9時間余に亘って緊張感を持続させることは、ちょっと無理があったのかもしれない。しかしながら、今年はまだ第1回目だし、今後も継続させていけば、もっともっと凄まじいイヴェントに成長していくことは必至。

果たして、来年はどんなメンツが大集結してくれるのか──今から楽しみではないか!

当然、我々リスナーもそれ相応の体力と気合いをもってして、来たる次回のBeast Feastを待ちわびるという寸法だ。

文●奥村裕司/Yuzi Okumura

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