Dave Gahan、4年ぶりの新作とバンドの20年間を語る

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Dave Gahan、4年ぶりの新作とバンドの20年間を語る
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「一時期、みんなを納得させようと悪戦苦闘していたけど、今はもう、そういうことは考えない

最新 Album

Exciter
Virgin VJCP-68312
2001年5月30日発売 2,548(Tax in)

1 Dream On
2 Shine
3 The Streetest Condition
4 When The Body Speaks
5 The Dead Of Night
6 Lovetheme
7 Freelove
8 Comatose
9 I Feel Loved
10 Breathe
11 Easy Tiger
12 I Am You
13 Goodnight Lovers


キーボード奏者のAndy Fletcherと、楽器なら何でも来いのMartin Gore、そしてVince Clarkeが'76年にスタートさせたDepeche Mode(以下、DM)は、当初ニューロマンティック一派のギターシンセ・トリオだった。ほどなくしてシンガーのDavid Gahanが加入すると、トリオは革命的ともいえる決断により、シンセサイザー以外の楽器を一掃してしまう。'81年に放った印象的なデビュー作『Speak & Spell』を最後にグループを脱退した曲作りの中心人物Clarkは、Yazoo、そしてErasureといった後続部隊を結成していく。その後を引き継いだのがGoreで、新たにAlan Wilderをメンバーに得て、Depeche Modeはやがて(といっても、あっという間のことだったが)当時を代表するエレクトロポップ・バンドへと成長していった。

DMは、その絶妙なバランス――わざとらしさのない哀愁と味気なさのない電子音――を舞台に、5枚のスタジオ作と1枚のコンピレーション、そして1枚のライヴ盤を'80年代に展開。そのいずれもが完璧な品質を誇るものだった。'90年、驚異的なフルアルバム『Violator』で自らの実績を塗り替えたDepeche Modeは、メインストリームのスーパースターの座を確立するはずだった。ところが残念なことに、Gahanがドラッグ禍にはまって自殺未遂を図り、Wilderが'90年代半ばでバンドを脱退するなど、グループはこの頃から崩壊し始める。しかし'97年、再び3人になったDepeche Modeは沈黙を破り、リハビリ治療で健康を取り戻したGahanを堂々とフロントに擁した『Ultra』のリリースで再浮上。2枚目のベスト盤の発表に続いて、大々的なツアーも行なわれた。彼らの最新作は、今年発表された『Exciter』だ。GahanはこのほどLAUNCHのエグゼクティヴ・エディター、Dave Dimartinoと、新作について、そしてこれまでの20年のキャリアについて、腰を据えて語り合った。


今までのどのアルバムよりも心から楽しんで歌えたよ

――前作と比較して、今作が一番違うところはどこでしょう?

DAVE GAHAN:
そうだな、曲のクオリティはなかなかのものだと思うよ。それと僕の歌い方やなんかも、すごくいいって人から言われるんだ。1月にアルバムが完成した時は作品に密着し過ぎていたから、自分からわざわざ聴く気になれなかったんだけど、そう言われて改めて聴き直したくらいだよ。で、正直なところ自分でも驚いた。声に工夫を凝らした努力の跡がうかがえたんだ。僕は、この声で曲にしっかり入り込んでいって、この声である種のムードやフィーリングを醸し出すことで、自分なりに考えている方向へと曲を導いていきたかった。Martinが書いた歌詞は、恋愛や人間関係にまつわる個人的なものが多いけれど、僕にとっても実感して歌うのは難しいことではなかったんだ。

今回のアルバムでは、今までに参加した他のどのアルバムよりも心から楽しんで歌えたよ。特にそういう――例えば“When The Body Speaks”とか“Goodnight Lovers”がそうなんだけど――なんだかその場から自分が消えてしまったような、周囲がまったく気にならないような心境になった箇所がいくつかあって、それくらい没頭していたんだ。



――あなた達の場合、どうしてこんなに作品の間があくんですか?

DAVE GAHAN:
前のスタジオアルバムからは随分になるね。『Ultra』から4年か。でも、その間にも僕らはシングル集を出して、そのツアーを6カ月もやったから、準備も大変だったんだ。真面目な話、シングル集に伴なうツアーが終わってすぐに、僕らは新譜の制作を考え始めたんだけど、とにかく……わかるだろう? 時間のかかるプロセスなんだよ。本当のところ、他に理由なんかない。


――あまり長く表舞台から離れていると、ファンの基盤を失うのではないかという危惧はありませんでしたか?

DAVE GAHAN:
ここへきてようやく、果たして僕らにファンがいるのかどうか、そして今この時代に僕らのやっていることに興味を示す人がひとりでもいるんだろうか、という思いが頭をかすめ始めたぐらいだよ。曲が完成して、CDにまとめる段になって初めて、この作品になんらかの意味があるんだろうかと思い始める。僕のやっていることに、この時代に相応しい意味があるんだろうかと。だけど、それは結局、主観的なものだからね。大事なのは、僕はクリエイティヴになっている自分を心から楽しんでいる、自分でも予想できなかったくらい楽しんでいる、という事実なんだよ。


――アルバムタイトルの意味するところは?

DAVE GAHAN:
僕らは毎回、印象的でさまざまな思いを呼び起すようなタイトルを探してきたつもりだ。だから、必ずしもアルバムの内容とは関係なかったりする。でも、あれこれ考えるのがエキサイティングなんだよ。曲の感じにも制作の過程にも、ワクワクするものがあった。思慮深い、哀愁を帯びたところもあるけれど、それでも高揚感はある。あと、信念もね。このタイトルを持ってきたのはMartinなんだ。いくつかタイトルの候補はあって、『Love』とか『Lovers』なんてのもあった。今、おたくのCD-ROMを観ていたら、Richard Ashcroft(の“Song For The Lovers”の演奏)が出てたから笑っちゃったよ。とにかく僕は今回のアルバムをすごく気に入っていて、なんとかあの雰囲気を伝えたいと思っていたから、『Exciter』っていう案が出た時は本当にピッタリだと思ったんだ。


コンサートで新曲を初披露する時が今でも大好きなんだ

――もしも私が時を遡り、このアルバムを結成当初のあなた達に届けて「ほら、あなた達はこういうアルバムを将来作るんですよ」と告げたら、どう思うでしょうね。一番大きな、そして顕著な変化は何なのでしょうか?

DAVE GAHAN:
20年前にああいうのを作っていなかったら、今こういう音楽を作れたとは思わない。ああやっていわゆる修行時代のようなものを経験できたのは、本当に幸運だし恵まれていた。バンドで自由に音楽を作って、セルフプロデュース的なことまでやらせてもらってたんだからね。成長は遅々たるものだったけど、僕らはミュージシャンとして本当に大きくなったと思うんだ。そして、例えば10年前の、様々な影響を受け入れることを恐れていた頃の僕らと比べて、たくさんの影響を許容するようになった。

だから、例えば今度のアルバムには、Airto Moreiraというパーカッショニストが参加してるけど、この人は僕らがサンタバーバラのスタジオに出向いた際に、そこでよく仕事をしているらしい彼の姿を見て、「誰かコントロールルームにいるな」くらいに思ってたところ、僕らに続いてライヴルームのほうへ入ってきたから、何をしている人なのか聞いたらパーカッショニストだって言うじゃないか。ちょうど、このアルバムをプロデュースしたMark Bellが、僕らが作業中だった曲に合うリズムを模索していたところでね。やたらロボット的で感情が感じられないリズムだと指摘されていたんだ。それで「俺が味付けしてやろう」って言うから、僕らもまぁいいかと思って「いいよ、じゃ、用意してよ。お手並み拝見といこうじゃないか」なんて言ったんだけど、後になって彼がMiles Davisと仕事をしていたと知った時には、かなり情けない気分になったもんだよ。

彼は見事だった。小さなテーブルの上に道具を並べた彼が、このアルバムに入っている“I Feel Loved”という曲に合わせて演奏を始めると、ありとあらゆるパーカッションを駆使する彼に、スタジオのエネルギーが一気に上がっていったんだ。ハードな電子音のバックビートと、僕の引きずるようなダークでムーディな声のメロディ、そしていきなり火がついたような彼の演奏。すごい組み合わせだよね。これをあちこちで使わせてもらったんだけど、僕はとても気に入っている。異質なものが入ってくることで、僕らが自分たちに対して持っている固定観念が破られるというのが、僕はたまらなく好きなんだ。やり甲斐があるし、僕はどんどんやっていきたいと思ってる。



――同期のアーティストたちを凌いで生き残っていることに驚きを感じますか?

DAVE GAHAN:
ある意味、確かに驚かされるけれど、ほとんど気にはしていないよ。僕は他の誰かを目指したことはない。自分たちの得意とするものを伸ばしていこうとがんばってきただけだから。作業の上でそれを自由にやらせてもらえたのは幸運だったよ。だって、線路を敷かれてしまう――どういった方向に進んでどういう音を出すべきか――バンドは多いんだから。僕らにはそれはなくて、ゆっくりと成長してくることができた。どうして続けてこられたのかは、自分でもよくわからない。とても熱心なファンがついてきてくれているのは本当に嬉しいことだし、僕らも常に腕を磨こうと努力してはきたけど――もっと良い曲を、もっと上手いパフォーマンスをってね。僕はコンサートで新曲を初めて披露する時の、緊張感からくる気持ちの盛り上がりとか刺激とかが大好きなんだよ。僕らのやっていることには色々な側面があるけれど、やっぱりそれが、今でも一番好きだな。


――このバンドが単なる趣味以上のものになると確信したのはいつのことですか?

DAVE GAHAN:
まさに今、それを確信してるよ! こうしてアルバムからアルバムへと振り返っていくうちにね。僕らが初めて世に送り出したのは“Dreaming Of Me”という曲で、'80年のことだったと思う。あれがラジオで流れるのを最初に聴いた時は――ロンドンのCapital Radioという局だったんだけど――自分たちの曲がラジオでかかっているというだけで有頂天になったもんだ。あの時僕は初めて、「僕らにもここで何かやって耳を傾けてもらえる可能性があるかもしれないぞ」と思った。そんな話を今ここで、キミにしているなんて、その頃には思いもよらなかったことだよ。本当にありがたいね。


――VinceやAlanとは何か連絡を取っていますか?

DAVE GAHAN:
うん、Alanとは2度ほど会ったよ。Vinceとはもう長いこと会ってないし、話もずっとしていない。実は最近、Alanのところのホームページ用にアンケートに答えたんだけど、その中で彼がやっているRecoilっていうプロジェクトについて質問しておいたんだ。Alanのことは大好きだし、懐かしく思ってる。彼がDepeche Modeにもたらしてくれたものも、彼の存在そのものもね。彼の最新作『Liquid』は素晴らしいと思う。すごく気に入ったよ。ちょっとビックリして、彼に電話したくらいさ。彼はニューヨークまでやって来て――プロモーションで来たついでに僕のマンションに寄って行ったりして――本当に久し振りに会ったんだ。彼の奥さんも一緒にね。実に楽しかったよ。あんなに元気な彼の姿を見られて、とても嬉しかった。


――最後の質問です。Depeche Modeは相応のリスペクトを受けていると思いますか?

DAVE GAHAN:
僕らは一時期……'80年代の終わり頃には、みんなを納得させようと悪戦苦闘していたように思う。マスコミとか世間とか他のミュージシャンとか、みんなに僕らの価値と存在意義を認めさせようとしていたんだ。今はもう、そういうことはあまり考えない。実際、マスコミからはすごく良い反応をもらっているし――時間は少しかかったけど、もはや僕らを無視するわけにはいかなくなったというところなんじゃないだろうか。これだけ長くやってこられたのには、それなりの理由があるはずだ。キミも言ったように、20年間も一緒に音楽を作り続けてきたといえるバンドは、ほんの一握りほどしかいないんだからね。

By Dave Dimartino/LAUNCH.com

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