膨大な音楽的な引き出しと秀逸なセンス

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膨大な音楽的な引き出しと秀逸なセンス

そもはや好事家の間だけではなく、広くクラブミュージックのファンに評価されているフレンチハウス。
その中でもBOSCOはかなりエキセントリックな存在だ。

ステファン・ボダンとフランソワ・マルシェの2人から成るこのユニットは今までに3枚のアルバムをリリースしているが、その音楽はディスコハウスを基調にブレイクビーツ、エレポップ、カントリー(笑)、果てはパンクまでをも飲み込んだクラブ・オリエンテッドなもので、その中に随所にフランス人独特のギャグが散りばめられたもの。

これだけだとかなりのキワモノと思われるかもしれないが、単なるノベルティものにとどまらないのは膨大な音楽的な引き出しと秀逸なセンスがあるためのようだ。

不思議な感覚というのは、正しく僕らが目指しているところ

最新ALBUM

『ACTION』

イーストウエスト・ジャパン WPCR-11034
2,520 (tax in) 発売中

1 Satellite
2 Action
3 Mr.Fresh
4 M.C.KUDASAI
5 Self Satisfaction
6 Hey! Hey! Hey!
7 Electric
8 Nonstop Nonsence (featuring FRED SCHNEIDER)
9 Christian's Decision
10 Distotheque
11 Runk Pockers
12 Spermunion
13 Delta Card

▲2001年はダフト・パンク『Discovery』を、またエール『10000hz Legend』をリリースし、大いにフランス・テクノ・シーンが盛り上がっている年であるが、ここでまた、フランス・テクノ界の異端児ボスコが新作『Action』をドロップ。彼らは「高性能な機材が使えなかったんだ」と素直に言っている通り、ロウ・テクだがアイデアを駆使したサウンドを作ることに徹した結果が、とてもメロディアスな彼らオリジナルの作品に仕上がっている。 歌ものもかなり多く、M5はとてもメロウな仕上がりに、M8ではB-52'sのフレッド・シュナイダーをヴォーカルに迎えている。歌詞はシンプルでちょっぴり意味不明。M4などは日本語で力強く“Ku-Da-Sa-I~”と連呼しているところが結構、笑える。やっぱりフランス・テクノ界は日本ブームなのだろう。歌詞&メロは昔の電気グルーヴを少しばかり彷彿させる。また、歌ものばかりでなくM10&ボーナス・トラックは完璧フロア向け。BPMは全体的にハウスよりちょい遅め。ハウスではなくディスコ寄り、そしてディスコよりもさらにポップ。その全ての狭間にいる彼らの音楽性がおもしろく表現されている気がした。



▲フランソワ・マルシエ
──あなたたちの生まれ育ったニオールというのはどんな町なんですか?

ステファン:
もしよかったら地図を書くよ(と言って本当にホワイトボードに地図を書いてくれた)。パリの南西300kmくらいのところにある小さな村なんだ。そこで19歳まで過ごした。海に近くて、週末はよくビーチで遊んでいたりしたな。

フランソワ:
まぁ静かで快適なところだよ。

──その頃聴いていたのはどんな音楽?

フランソワ:
僕はパンクが多かった。

ステファン:
僕はどっちかというとニューウェーブかな。New OrderB-52'sThe Clashとか。

──でもそういう小さい街で育つと音楽に関する情報が少なかったんじゃないですか?

ステファン:
そうでもなかったよ。飛行機に乗っちゃえばロンドンもそんなに遠くないから、ある程度の年齢になると週末ごとに出かけてレコードを仕入れたりもしたし、僕らの町にもレコードショップが充実していたからね。友達にも音楽好きな奴が多かったし。ハイスクールに通っていたころは、みんなでガレージに集まってろくに弾けない楽器をいじりながら、よくいろんな曲のコピーをしたもんだよ。全然オリジナルとはかけ離れた演奏しかできなかったけど(笑)。


▲ステファン・ボダン
フランソワ:
曲の一番美味しいところだけコピーするんだ。それでみんな何の曲か分かってくれたみたい(笑)。

──クラブ・ミュージックに出会ったきっかけは?

ステファン:
最初はやっぱりNew OrderDepeche Mode辺りだね。その後Deee Liteとかが出てきてハウスを知った。当時のフランスではクラブよりも、週末ごとに古いお城を借り切ってパーティーが行われてたりしたんだ。すごくヒップな場所だったな。'60~'70年代のポップミュージックから最新のハウスまでかかっていた。ニューシェイズって城でよくやってたんだけど、その手のパーティーにはよく遊びに出かけたよ。

──BOSCO結成のいきさつは?

フランソワ:
ちょっとしたアクシデントみたいなもんだね(笑)。

ステファン:
音楽をやっていたら自然にグループになっていくもんだよ。最初は単なる遊びでやってたんだけど、CDを作るという話になって初めて名前を付けた。

フランソワ:
グループをやるとなると楽器を用意して、それを運ぶ車が必要で……って具合いに面倒なことが多いけど、サンプラーさえあればそういうこととは無縁だろ? だからサンプラーとの出会いが大きなきっかけになったのは事実だね。

ステファン:
BOSCOとして活動し始めて1年ほどで幸いレコード会社と契約してCDを出すことができた。それまでは暗中模索だったね。いろんなコンサートに行って、いろんな人に手当たり次第にテープを配ったりしていた。僕らのアートワークを担当しているシルヴィアって友達がたまたま誰かに渡したテープが、人づてで運良くレコード会社まで届いて契約の話が来たんだ。

──今回のアルバム『Action』は3作目だってことで、特別なプランはあったんですか?

ステファン:
いろんな音楽のミクスチャーで僕たちの音楽は成り立っている。その混ぜ方の具合いが少し変わったかもしれないけど、特別な変化というのはないと思うよ。日本語を使ってみたり(M4「Mr.Kudasai」)、言葉遊びの要素は結構取り入れたね。前作を出したときに、レコード会社との契約書に入っている言葉を適当に入れ換えた歌詞を作ったりして遊んでたりしたんだ(笑)。今回も例えば1曲目の「Satellite」では、自分が今関心を持っている言葉を並べてみんなの関心を引きつけるような歌詞にしてみたりしてるわけ。

──BOSCOの音楽には懐かしい感じもあるんだけど、すごくエキセントリックな要素が入ってますね。

フランソワ:
その感想は嬉しいね。不思議な感覚というのは、正しく僕らが目指しているところなんだ。今までの音楽の中からいろいろなエッセンスを抽出して、どこか懐かしいんだけど誰も聴いたことのない音楽を作ろうとしているわけだからね。例えばカントリーも今回のアルバムに取り入れてるけど(M6「Hey!Hey!Hey!」)、僕らは実はカントリーなんか聴いたことがない(笑)。だからカントリーを聴き馴染んでいる人にとってはすごく変な音楽に聴こえるだろうね。

──B-52'sのFred Schneiderも参加してますけど、ふだんから付き合いがあるんですか?

ステファン:
彼とは年齢も国籍もバックグラウンドも全然違うんだけど、とても仲よくしているんだ。B-52'sの昔の曲を僕らがリミックスしたものも彼はとても気にいってくれたしね。今の彼はグリーンピースと契約してAIDS撲滅のキャンペーンをやっている。ソロアルバムもSteve Albiniのプロデュースで制作してるよ。彼とは今後もいろいろ一緒にやっていきたいね。
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