ジャンルを超えて癒しの歌声を響かせるソプラノ・シンガー

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ジャンルを超えて癒しの歌声を響かせるソプラノ・シンガー
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「自分のキャリアの最後には、シンフォニーを書いてみたいと思ってるの」

最新アルバム

アヴェ・マリア~サラ・ブライトマン・クラシックス~/CLASSICS
東芝EMI TOCP-65933
2001年11月28日発売 2,548(Tax in)

1 アヴェ・マリア
2 私を泣かせて下さい
3 ウインターライト
4 エニィ・タイム・エニィ・ウェア(ライヴ・ヴァージョン)
5 アルハンブラの想い出
6 さようなら、ふるさとの家よ~歌劇「ワリー」第1幕より(未発表バージョン)
7 夜の踊り
8 セレナーデ/ここは素晴らしい場所
9 私のお父さん~歌劇「ジャンニ・スキッキ」より(新バージョン)
10 ラ・ルーナ
11 ピエ・イエス
12 フィリオ・ペルドゥート
13 ネッスン・ドルマ(誰も寝てはならぬ)
14 バイレロ
15 タイム・トゥ・セイ・グッバイ(ソロ・ヴァージョン)
16 あたりは沈黙に閉ざされ~歌劇「ランメルムーアのルチア」より(日本盤ボーナス・トラック)


国際的に絶賛されているソプラノ歌手Sarah Brightmanは、ジャンルを越えた成功を収めてきた。過去3枚のアルバムがBillboardのクラシカル・クロスオーヴァー・チャートの1位を飾り、世界中で800万枚以上という驚愕のセールスを記録。『La Luna』は、2000年8月の発売時にBillboardチャートで17位に登場し、すでにゴールドを獲得している。しかし、彼女をクロスオーヴァーなアーティストと呼ぶのは誤りかもしれない。Brightmanには他のジャンルへ自らを投じるという目論見はなく、むしろそれらを自分の世界へと招き入れ、彼女独自の解釈を与えているからだ。

崇高な『La Luna』と、続いて発売されたホームビデオ/DVDの中で、彼女は5カ国語で歌い、Ennio Morricone、Beethoven、Procol Harum、その他多数のアーティストの曲をカヴァーしている。タイトルから想像できるように、月がこのアルバムのテーマになっており、それが一見共通点のなさそうなアーティストたちを結びつけている。Brightmanにとって、アルバム制作は絵を描くことに似ているというのもうなずける。彼女がひとつの場面を思い浮かべるや、アイディアは次々に形になるのだ。

一貫性のあるアルバムが好きやみくもに曲を次から次へとつなげていくのは好きじゃないわ。次の曲、そのまた次の曲と、つながりを持たせているのがいいの。クラシック音楽ではシンフォニーが好きだけど、シンフォニーには普通、導入と中間と結末があって、それには理由があるでしょう。だから私にとっては、その場面が浮かんでこそ、絵を描いていける。それが楽曲を選ぶのにも役に立ったということかしら。言うまでもなく、収録曲は月や月に関しての民話がテーマになっている。私にとって月にまつわるアイディアは、いつも過去と現在を混ぜ合わせることにあるの。もちろんこのアルバムでも、現代的な楽曲にならんで古い楽曲もたくさん収録されてるわ

過去のアルバム同様、『La Luna』には多彩なレパートリーが満載だ。今回収録されているのは“Scarborough Fair”“Gloomy Sunday”“Figlio Perduto”“A White Shade Of Pale”、そして“Hijo De La Luna”。全曲にBrightmanの特徴である雰囲気豊かなオーケストラ調のひねりが加えられている。彼女の芸術性における雄大さは自然なもので、クラシックの教育を受けているからこそ、Cocteau TwinsからSergei Prokofievに至るまでの幅広い音楽をこなせるのだ。

Brightmanがそのキャリアをスタートさせたのは10代の頃、'78年のUKディスコヒット“I Lost My Heart To A Starship Trooper”(Hot Gossipというグループとの共演)からだった。その後彼女はブロードウェイに進み、『Cats』に出演し、『Nightingale』や『Phantom Of The Opera』の主役を務めた。'88年にブロードウェイでその地位を不動のものにしたのに続いて、彼女は数多くのソロアルバムをリリース。『The Trees They Grow So High』『The Songs That Got Away』『As I Come Of Age』『Dive』『Fly』『The Andrew Lloyd Webber Collection』『Time To Say Goodbye』、そして『Eden』といった作品を通して、Brightmanはブロードウェイ、ポップ、ロック、フォーク、そしてクラシックといった多様な音楽性を開拓してきた。

最近ではすっかり“クラシカル・クロスオーヴァー”のアーティストと見なされている彼女はこう告白する。
純粋主義者は私のことなど眼中にすらないと思う。
純粋主義者の分野で仕事をしていないから。だから私のレコードはクラシック・セクションには置かれてないの

しかし、その他のありとあらゆるセクションには置かれているらしい 。
あるCDショップへ行った時――確かボストンだったわ。私の作品はそこではニューエイジ、ロック&ポップ、イージーリスニングのセクションに置かれていたの。クラシック・セクションにはなかった。どこに並べたらいいのか分からないから、あちこちに並べておくんじゃないかしら。『Fly』なんてゴスのセクションにあったんだから!

最後の告白はかなり興味深い。たしかに『Fly』のアルバム・カヴァーでピッタリとしたラテックス・スーツを身に着けていることを考えれば、それも納得できる。さらにBrightmanのアルバム・アートは、宗教的肖像画の表現法から触発されている。『La Luna』のカヴァーの彼女は、白い衣装にラインストーンの王冠といういでたちで、キリストのようなポーズで佇んでいる。
宗教的画法からイメージを得ることが多いわ、今までもいつもそうだったし」「私は子供の頃、それほど信仰深くはなかったけど、教会の中に入るのが好きだった。今まで修道女になりたいと思ったことが2回あるのよ。宗教的なものすべてに大きく影響を受けてきているわ

特に信仰心の篤い人間ではないが、スピリチュアルなものは大いに感じるとBrightmanは語る。
私の人生のあらゆるものがスピリチュアルなことに根付いているの。歌うことは私にとって、とてもスピリチュアルなこと。私のイメージすることも、何もかも。アルバム・カヴァーにそういった種類のイメージを用いるのは、おそらくそれが理由だと思うわ

修道女姿の彼女を思い浮かべるのはなかなか難しいのではないだろうか。
修道女のような格好をしたいということではなくて、何かに傾倒したい、スピリチュアルなものにつき動かされる存在になりたい、ということよ。説明するのは難しいけど。そういうことって説明できないものよね

多くのファンにとって、彼女というシンガーはまさに天使のような存在だ。ファンは彼女の華麗な歌声とコンサートでの贅沢なパフォーマンスに魅了される。過去のミュージカル経験のおかげで、Brightmanが大規模なスケールのパフォーマンスにひるむことなどありえない。自分のショウについて彼女はこう語る。

信じられないほど複雑な作りよ。でも、私にはそれほど複雑とは感じられないの。劇場で何年も仕事していたから。その時にたくさんのことを学んだ。でも、ポップチャートで活躍していてアリーナタイプのショウができる多くのアーティストが、必ずしもそういった経験をしているとは限らないでしょう。私にはとても自然なことだけど。何が効果的で、何がそうでないか、そういうコツはすべて心得ている。私のアイディアはすごく直接的で、それをどう実現するかも分かってるわ。私の仕事のチームは優秀なの。トップクラスの人たちよ。実を言うと、それほど凝ったセットは使っていないけど、ドラマチックな背景の幕をたくさん使って、それからあらゆる雰囲気作りに照明を上手く使っているわ。すばらしい照明をね。それは本当に見事なものよ

過去何年間というもの、この花形ソプラノ歌手はロンドン交響楽団、Placido Domingo、Andrea Bocelli、Tom Jones、Jose Cura、Andrew Lloyed Webberといった人々と仕事をする大きな幸運に恵まれ、Puccini、Brian MayGipsy Kings、Carl Orff、Ennio Morricone、Rachmaninovらの曲をレコーディングしてきた。『Time To Say Goodbye』のタイトルトラックでBocelliとデュエットした曲のシングルは、世界中で500万枚を売り上げた。成功を収めた数々のコラボレーションの中で、彼女のキャリアにとって最も意味深い経験はどれだろう。

まだそこまでの経験はしていないんじゃないかしら」とBrightmanは答える。それでは、探し求めている途中ということだろうか?「探してはいないの、そのうち向こうからやってくるわ」と彼女は楽観的だ。

私は自分のキャリアの締めくくりに、シンフォニーを書いてみたいと思ってる。つまり、それが私にとって最高の経験になると考えているわけで、ぜひやってみたいけど、そのためには経験を山ほど積まないとならないし、それを可能にするには自分の人生に奥深さが必要だわ。すばらしい作品を生むためにも。それが私のキャリアの最終地点になることは確かね

Brightmanのファンにとって幸運なのは、彼女のキャリアが長くて実り多いものになりそうだということである。

Bryan Reesman/LUANCH

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