Message Shuttle Vol.1 2002年3月9日レポート

ツイート
~

Message Shuttle Vol.1 2002年3月9日@新宿LOFT
~LOVE & COMPROMISE ―NO TERRORISM, NO WAR―~


老舗ライヴハウス・新宿ロフトを運営するLOFT PROJECT社長、小林茂明氏が“言い出しっぺ”となって立ち上がったライヴ・イベント<Message Shuttle>。
キッカケは小林社長だけど、様々なアーティスト、ボランティア団体が賛同して企画を膨らませていき、当日に観客が集まって、イベントは成功し……。
この日を境に、それぞれの思いはそれぞれに膨らんでいったハズ。

撮影●三浦麻旅子

眠らない街“新宿”で、メッセージがひとつの輪となった夜

平和的解決を願う人々のネットワーク団体、
“CHANCE!”

●“CHANCE!”は、John Lennonの「Give peace a chance」から命名。





▲会場では、以前行なわれたピースウォークの映像と、アフガン難民たちのパネル写真も展示された。

▲当イベントの企画立案者、ロフト・プロジェクト小林社長。イベント開催前に、ビデオ取材を行ないました!


しかし、新宿歌舞伎町は、まさに“眠らない街”だ。

この街のド真ん中に位置する新宿LOFTで、ライヴイベント<Message Shuttle>が行なわれた。昨2001年9月11日に起こったアメリカ同時多発テロチャリティーイベントだ。しかも、オールナイト。加えてアコースティック・オンリーなライヴ。なかなかディープでしょう?

それで、23:30pmにロフト前で筆者はMさん(ともに♀)と待ち合わせしたのだけど、これから歌舞伎町はバリバリと目覚めていくのさ、といった具合に人々が街を活性化させている。ヘタな住宅街の夜道よりも、ある意味、安全。

そしてMさんと合流し、雑居ビルの地下にあるロフト目指して階段を下りると「あれ? これから出勤?」などと、おっさん予備軍(そう、まだ若い男性だった)に声をかけられつつ、入場。ロフトの中も変わらず“歌舞伎町”。人がずいぶんと集まっていた。


▲中原明彦


▲浜崎貴司
この日のトップバッターは、中原明彦。筆者、初めて名前を知り、初めて演奏を拝聴。なかなかに安定した歌声とアコギで好感度、高し。尾崎豊をもっと明るくした感じ、とでも言っていい?…という感じ。米同時多発テロ事件の後に作った「あいのうた」など3曲を披露した。

次に現われたのが、浜崎貴司。筆者、フライング・キッズのイメージしかなく、ソロになってからまともに聴くことなく食わず嫌いしていた。

が、今日のステージで……脱帽。エレピだけをバックにスウィングし、自在に音に乗って歌うシンガー浜崎のステージは、素晴らしかった! 「あれれれれ、こんなに歌、うまかったんだ!」とはMさんともに持った感想。

3月27日にリリースされるアルバム『AIと身体のSWING』から数曲披露、そして、テロについて「世界はやっかいなシステムで成り立ってるけど、世の中にちゃんと届くように…」とフライング・キッズの名曲「幸せであるように」をスローテンポで聴かせてくれた。

次のミュージシャン……の前に、なにやら若き男女3名が登場。“CHANCE!”という団体で、ピースウォーク、つまり“平和を考えよう”という目的で、プラカードや旗を掲げてみんなで街を歩く、といったものを提唱。この日も翌日(というか当日。すでに日付が変わっていたから)の午後1時から都内を歩くので参加を、と呼びかけていたが……、ゴメンナサイ。体力ないので、ここで平和について考えます。


▲In the Soup
そして、In the Soupが登場。ロックバンドの彼らも、この日は4人でアンプラグド。スタンダード童謡であり、彼らのライヴ定番であり、次のシングル曲に決定となった「グリーングリーン」などをプレイ。

途中、「
アメリカではいろんなことが起こったけれど、今僕らは、うれしいと思えることが、うれしい」と語った中尾諭介(Vo&G)。なるほど、彼らしいコメントで、ストレートに心に入ってきた。

深夜3時になろうとするころ、白髪・白ヒゲのおじいちゃん登場。ナナオサカキ氏というポエトリー・リーダーで、「
何者が出てきたかとお思いじゃろうが、詩を読んでみるので聞いてくれ」と、詩を朗読した。

歳をとるということは、いいことだなと思う。筆者もかつては若さをむやみやたらに求める時期もあったが、「あの時期に戻りたいな」とは思わないし、むしろ「未来が楽しみだなぁ」と最近思う。こういうおじいちゃんがいると、ああなりたい、って思うからなんだと思う。こういうカッコいい年寄りが増えてほしいし、そうなりたいな、と。そうすると少しは平和になるんじゃないかな、と。


▲佐藤タイジ(Theatre Brook)
そのナナオ氏の朗読が終わるやいなや、佐藤タイジ(Theatre Brook)が拍手をしながらステージに登場。

僕、ああいうおじいちゃん大好きで、楽屋で会ったとき抱きついてしもたわ!」と熱く告白。そんなタイジは、アコギをひっさげて、弾き語りスタイルで。「Knockin' On Heaven's Door」(Bob Dylan)、「Sunday Bloody Sunday」(U2)、「A Day In The Life」(The Beatles)、「Ironic」(Alanis Morissette)らをカヴァー。

これは“ラジオ放送に不適切な曲”として米大手ラジオ局がリストアップした中から選ばれている。テロを喚起するような曲でない、名曲もかなり挙げてあると賛否両論だったこのリスト。テロを忘れないという意図からなのだろう、タイジは渋谷FMの番組で、毎回1曲ずつこのリストからカヴァーし歌っているそうだ。

戦争が起こるたびに、“戦争反対!”って叫んで……。その繰り返し。次はその場に行って、“やめてくれ~!”って言いに行くわ!」と宣言。ツレのMさんは「マジで行きそうで恐い……」とポツリ。そんな観客の気持ちはどこ吹く風で、タイジは最後にTheatre Brookの「ありったけの愛」を歌い、「仕返しな~し!」と叫ぶのだった。


▲坂本サトル
そして、坂本サトル。「
そろそろみんな、眠たいだろうけど」とまずはコメント。弾き語りにかけては、ベテランの坂本氏は、オリジナル曲を中心に演奏。さすが、という安定した演奏で安心してじっくり聴ける上質な弾き語りを聴かせ、最後にはアコギなしのアカペラで最新シングル「木蘭の涙」を歌った。

ライヴは終わり、DJが曲を廻しだした新宿ロフト。

そこをあとにし、地上へ出ると、まだ暗い。それでも人の途切れることのない歌舞伎町。Mさんと筆者はマックで始発を待つことにした。そして、深夜料金ならぬ、早朝料金を取られることを、この日初めて知った。そして思った。

人間、常に勉強なのだ、なと。

文●星野まり子

※<Message Shuttle>の収益金の一部は、毎日新聞社会事業団を通じて、アフガン難民救済へ寄附された。
この記事をツイート

この記事の関連情報

*

TREND BOX

編集部おすすめ

ARTIST RANKING

アーティストランキング

FEATURE / SERVICE

特集・サービス