第一興商の生演奏へのこだわり── 下川一秀 氏(第一興商制作本部 制作部 部長)に訊く

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── 今日はレコーディングを見ていて、とてもスピーディーに進んでいくのに驚きました。

下川氏:まず原曲を聴き、1回通しでリハをやって、部分的な確認をしたら本番です。みなさん一流ミュージシャンですから大きなミスもない。だからさっさと進められますね。だいたい30分くらいで1曲を仕上げていきます。

── 演奏の内容はどのように決めていくんですか?

下川氏:基本的に生演奏で録るのは全部発売前の新曲なので、譜面がないんです。指揮をやっておられる山口順一郎先生が聴き取りで譜面を起こして、各ミュージシャンは当日それに基づいて演奏しているんです。

── ミュージシャンの方は当然原曲は事前に聴いているんですよね?

下川氏:いや、初見ですよ。みなさんプロ中のプロですから。エンジニアさんも、リハーサル前にオリジナルを一度聴いている間に、“こういう感じ”というのをつかんで、ミキサーの設定を全部済ませちゃうんです。これもプロの仕事。というかこれは“神業”ですね。

── 今後DAMで展開する予定の新しい機能やサービスがあれば教えてください。

下川氏:社内で“プロオケ”と呼んでいるものがすでにスタートしています。カラオケは基本的に音質のよさと歌いやすさを念頭に置いて制作しているんですが、これはそこを180度変えて、あえて難しいカラオケにしてるんです。キーもオリジナルと同じ、ガイドメロディーもない、歌詞の色が音に合わせて変わらない。しっかり覚えてないと歌えないという上級者向けのカラオケです。個人的には、ギターだけ、ピアノだけの演奏という“名演シリーズ”というのが現在あるんですが、これをもっと発展させて、弦楽四重奏とか、色々な楽器でやってみたいと思ってます。

── 最後に、カラオケファン、普段LIVE DAMで楽しんでいるユーザーにメッセージをお願いします。

下川氏:“音がよい”カラオケというのは、人それぞれ基準は違うと思います。人によって音質だったり歌いやすさだったり。MIDIで歌いなれている方もいるでしょうし、パッケージ商品の時代をご存じの世代の方なら生演奏がしっくり来るかもしれない。もうそれは好みで選んでいただいてよいと思います。同じ楽曲でも、生演奏を含め色々なバージョンがありますから、ご自分の好きなもので楽しんでいただきたいと思います。

text by 田澤 仁

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