【ライブレポート】NIGHTMARE、2012年最後のワンマンで見せたバンドの成熟と変わらぬ衝動

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「お前達の声を聞かせてくれ、東京! 今日は、NIGHTMARE2012年最後のライブだぜ!」。YOMI(Vo)の叫びともに響き渡る音色に包まれた客席は、筆者がいた2階席の床が揺れるほどの勢いでファンがジャンプを繰り返す。「よし! 今日、NIGHTMAREとみんなで今年一番のライブにしていこうぜ! いいか!」。再び叫んだYOMIの言葉通り、NIGHTMAREの2012年のファイナルツアーは、彼ら自身約1年半ぶりに立つ東京国際フォーラムホールAを、まさに今年一番と言っても良いほどの熱気で包み込んだ。

◆NIGHTMARE 画像

そのライブのオープニングは、今回のツアータイトルにもその名が冠された最新シングル「Deus ex machina」だ。咲人と柩のギターのアンサンブルから、スピードを加速させていくリズムにメンバー全員の動きがシンクロする中で、サビで一気にYOMIの歌声が広がっていく。NIGHTMAREらしい細やかな音使いを駆使しながら、会場いっぱいに響き渡っていく雄大なメロディで聴き手の胸を打つドラマチックな幕開けでスタートしたライブ。「fragment」では咲人がマンドリン~アコースティックギター~エレキギターを巧みにスイッチ。「Mr. trash music」はパンキッシュな爆音が炸裂、かと思えば「Ugly duck will」ではNi~yaはチョッパー奏法を披露、アタックの強いリズムを弾き出して演奏のグルーヴ感を上げていく中で、咲人はギターを弾きながらサンプラーを操り自らの音にその場でエフェクトをかけてサウンドに起伏をつけてゆく、etc……。ときにテクニカルに、またあるときはトリッキーに、様々なサウンド・アプローチを駆使して1曲1曲の世界観を描いていく、NIGHTMAREらしい彩り鮮やかな音世界で魅せる。

「3月に日本武道館のライブがあって、夏はbaroqueとの2マン、そして、久しぶりに野音もできたり、RUKAさん(Dr)が体調を崩したり色々あったんだけど……」(YOMI)。MCでは2012年の自らの思い出を振り返りながら、彼らの視線はさらなるその先をとらえていた。

「そろそろ、47都道府県とか行きたいな……」(柩)
「47歳のときに47都道府県、やる?」(咲人)
「絶対キツいよ(笑)。点滴とか置いとかないとダメじゃない?」(柩)

と、冗談めかしながらも、バンド結成から今年で12年を迎え、これまでに訪れたことのない土地も含めて全国で待っている人々へ会いに行きたいと語る彼らに、ファンはもちろん大歓声だ。「頑張って実現させましょう!」(YOMI)。来るべき2013年への抱負を力強く宣言したYOMIは、さらに言葉を繋いでいく。

「この前、初めてやった日本武道館のDVDを久しぶりに観たんですよ。あの頃と比べて自分達はちゃんとカッコよくなれてるのかなとか、もしかしたら失くしちゃった部分もあるのかな、とかね……。色んな部分を失くしたり、迷ったりしながらやってる中で、やっぱり音楽が大好きだっていう気持ちと、バンドが大好きだっていうことはあの頃と変わってないなって思ったんだよね。そういう、俺達の変わってない部分を感じてもらえたら嬉しいなと思います」(YOMI)

その言葉に続いた1曲は、2008年にリリースしたシングル「Lost in Blue」収録曲の「邂逅カタルシス」。<変わりゆくもの、変わらないもの、僕は何を選んだ?>。まさにYOMIの言葉どおり、過ぎ去っていく時の中で彼らが抱いた心情と重なるような歌詞が印象的に響く。

そして、2005年にシングルとしてリリースした「livEVIL」、2006年リリースの3rdフルアルバム『anima』収録曲の「まほら」など懐かしい2曲に挟まれる形で披露されたのは、「Deus ex machina」の収録曲「rubbish」。マーチングドラムのようなリズムからエイトビートへ展開、疾走感の中で細かいフレージングを駆使しながら、5人の声と音のアンサンブルがダイナミックに広がっていく。変わらない灰色、小さな世界で始まりを探している――。「rubbish」のそんな歌詞は、様々な思い出を重ねていきながら、作品を生み出すたびに新たな“始まり”を拓き続けるNIGHTMAREのリアルな姿を映し出しているかのようだった。

さらに、「mimic」「VERMILION.」というシングル曲、そして「ジャイアニズム死」で攻撃的に締めくくった本編から、アンコールではYOMIがメンバーそれぞれと言葉を交わしていく中で、RUKAは病気療養からの本格復帰をファンへ報告。「ただいま帰りました……」(RUKA)。普段は寡黙なRUKAの言葉に、ファンは「お帰り!」の祝福の声を送る。

「2ヵ月、3ヵ月ぐらい休んでたわけなんだけども、今回のツアーが久しぶりのツアーということで……。大変でした(笑)?」(YOMI)「大変だねぇ……。もうね、(曲順を思い出して数えながら)1、2、3……。「ByeBye」ぐらいから眠気が来るんだよ(苦笑)」(RUKA)

そんな会話をしながら、RUKAが突然足がつって苦しみだすアクシデントもありつつ(笑)、ライブはさらに見応えのあるシーンが続いていく。

「トラヴェル」は、Ni~yaがアップライトベースを、その隣の咲人は椅子に腰かけてアコースティックギターを爪弾き、先ほどまでの爆音と熱気を鎮めるような優しい感触の音色を奏でる。激しさとは一線を画す、この“大人”な表情は、それこそ12年前の結成当初の彼らにはない成熟ぶりが垣間見える瞬間だったかもしれない。

「東京! かかってこい!」。そして、ライブは再び、YOMIの叫びとともにアグレッシブに展開だ。「東京傷年」、「クラッシュ!ナイトメアチャンネル」、「ジャイアニズム誤」、そしてファンの大合唱が響きわたった「極東乱心天国」は、キャリアの成熟とともにバンドとしてのクオリティを上げていくのと同時に、結成当初の衝動的な感覚は変わらないと物語っているかのよう。

そんな爆発的なテンションで締めくくった2012年最後のツアーで、YOMIがさらに届けた言葉は……。「東京ありがとう! NIGHTMARE、2013年1月30日、ニューアルバム出します!」。前作『NIGHTMARE』以来、約1年2ヵ月ぶりとなるオリジナルアルバム『SCUMS』リリース決定の報せに、ファンはこの日一番と言っても良い大歓声を上げる。その『SCUMS』を引っさげて2月からスタートする全国ツアーでは、さらなる新曲達がこの日のライブのように各地の会場を熱くさせるはず。2013年、バンドとして13回目の誕生日を迎える彼らがどんな景色を描くのか、大いなる期待とともに待っていよう。

取材・文●道明利友

New Album
『SCUMS』
2013年1月30日発売

【type A】
YICQ-10284/B ¥3,780(tax in)
[CD]
「mimic」「Deus ex machina」を含む全12曲収録予定
[DVD]
MUSIC CLIP「ASSaulter」

【type B】
YICQ-10285/B ¥3,780(tax in)
[CD]
「mimic」「Deus ex machina」を含む全12曲収録予定
[DVD]
MUSIC CLIP「終わる世界の始まりは奇なり」

【type C】
YICQ-10286 ¥3,150(tax in)
[CD]
「mimic」「Deus ex machina」を含む全14曲収録予定

◆NIGHTMARE オフィシャルサイト
◆BARKS ヴィジュアル系・V-Rockチャンネル「VARKS」
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