【BARKS編集部レビュー】飛行機のスタイルに触発?カリフォルニアから新ヘッドホン登場

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<ヘッドフォン祭>にも出品されておらず、ほとんど知られていないブランドだけれども、注目すべきナイスなサウンドを奏でるブランドを発見した。ご存じだろうか、California Headphone(カリフォルニアヘッドホン)である。その名の通り、カリフォルニアのサン・フランシスコに2012年8月に誕生した新たなヘッドホン・ブランドで、オーバーヘッドのアラウンドイヤータイプのSilverado(シルバラード)と、オンイヤータイプのLaredo(ラレド)の2モデルが発表されている。

◆カリフォルニアヘッドホン画像

▲左がオーバーヘッドのSilverado(シルバラード)¥22,980、右がオンイヤータイプのオンイヤータイプのLaredo(ラレド)¥9,980(税込)。
▲左のSilveradoはダイキャスト製のハウジングに折りたたみ機構、着脱式ケーブルというスペックで、中域にピークを持つフラット・サウンド。右のLaredoは押出成形による小型ハウジングで、弱ドンシャリ系のフラットサウンド。
▲Silverado。
▲Silveradoは深いふかふかのイヤーパッドで耳をすっぽり覆うアラウンドイヤー・タイプ。耳介に触れないので痛みや不快さが皆無。
▲Silveradoのケーブルは着脱可能。
▲こちらはLaredo。
▲ハウジングが小型のため、耳の上に乗せるオンイヤータイプ。側圧も強めなので、人によっては痛みを感じやすいが、サウンドは¥9,980(税込)とは思えない、高品質な弱ドンシャリのフラット系サウンド。
▲ドライバーは40mm。折りたたみ機構はなくケーブル着脱もできないが、質実剛健で高い堅牢性を誇る。
▲どちらのモデルにもケーブルの途中にデイジーチェーンのためのアダプタが付いている。ここに別のイヤホン/ヘッドホンを挿せば、音楽が共有できる。
▲各パッケージ。左がSilverado、右がLaredo。
成り立ちが昨今のトレンドそのもので、個人ファンド募集サイト「Kickstarter.com」で出資を集め誕生にこぎつけたというもので、わずか2ヵ月の間に1500万円もの出資を集めたという期待の新興ヘッドホンブランドなのだ。

14ヵ月の開発期間を経て完成に至ったこの2モデルは、ご覧のとおり個性的で、既存のどのブランドにも似ていない特徴を携えている。カッパーカラーの頑強なダイキャストとスティールに手縫い風味の革を組み合わせたちょいレトロな意匠は、第二次世界大戦で使用された飛行機のスタイルに触発されたものだとか。高級感もありながら、踏んでも落としても壊れそうもないこの堅牢性は非常に頼もしい。

肝心のサウンドだが、これまたどうして、なかなか素晴らしいのだ。カリフォルニアの名を語り西海岸の文化をリスペクトする彼らは、「ロックやカントリー、オルタナティブといった音楽において魅力が最大限発揮される様にチューニングしている」というが、サウンドのバランスはナチュラルで良く練られている。極端に偏重したトーンではなく、青い空に抜けるような!…とまで大仰には言わないけれど、クリアに爽やかなトーンを持ちコモリ感は感じられない。それでいて軽々しい音ではなく、全体的なトーンは重厚で重量感のある安定感がある。このあたりは、がっちりしたハウジングの持つ特性が音に反映しているのだと思われる。

アラウンドイヤータイプのSilverado(シルバラード)が¥22,980(税込)で、オンイヤーのLaredo(ラレド)が¥9,980(税込)と両者の価格差は大きく、ハウジングの大きさ、可動部分の設計や着脱可能なケーブルの採用、ヘッドバンドの作り込みなどSilveradoがフルスペックで作られ、一方のLaredoはその廉価版のような位置付けに見える。実際そのような設計なのかもしれないが、面白いのは、サウンドが上下関係に位置していないこと。サウンドキャラが全く違い、品質の上位下位の関係では語れないところが最大の着目ポイントだ。

まずSilveradoだが、イヤーパッドには耳をすっぽりと覆う深めで肉厚なものがセットされており、これによるフィット感は最上位クラスだ。遮音性は標準的だが音漏れもなく装着感は極上となっている。はめた時の耳のまわりを囲むようにミチッと密着する感じは、ULTRASONE edition 8やFischer AudioのFA-002Wなどとも似て、音楽が耳になだれこんでくる密閉型特有の感覚が訪れる。イヤーパッドの形状が演出すると思しき箱庭のような音場も、ポピュラーミュージックを楽しむにはちょうどいい塩梅だ。

カリフォルニアのサウンドというと、サーフミュージックやウェストコースト・サウンド、あるいはヴァン・ヘイレンやLAメタルあたりをイメージするのだけれど、そういった分離の良いギターサウンドを心地よく再生するという単純なサウンドではなく、低域も適量、中域が非常に充実しているのが特筆点だ。中域500~800Hzあたりにハウジング固有のピークがあるように感じるが、この特性がむしろボーカルを聞き取りやすく押し出してくれるトーンに一役買っているような気もする。

正直な話、第一印象はなんだかパッとしない音だなと感じたのだけど、毎日少しずつ愛用する中で2ヵ月近く経った今では、全帯域で過不足なく鳴ってくれるので、中域を厚めに聴きたい時のリファレンスとして欠かせない相棒となっている。イケてない要素としては、350gもある重量であろうか。私の場合は、図体がでかいので350gくらいヘでもないけれど。側頭部にしっかりとホールドされているので、実重量ほどの重さを感じない付け心地もよいところだ。

さて、もう一方のLaredoだが、Silveradoとはまるでブランドが違うかのように鳴り方が違っており、むしろ私は安価なLaredoのサウンドの方が好きだ。耳に近い生々しい音を聞かせてくれるもので、ローの出方も強烈で、昨今の低域偏重モデルほどではないにしろドフッと空気を感じるようなベードラの深い鳴りを分かりやすく伝えてくれる。そして高域も鮮やか。ざっくり言えばSilveradoよりもドンシャリ傾向なのだとは思うが、よどみない瑞々しく若々しいサウンドが直球で飛び込んでくる健康的な心地よさを持っているのだ。

Laredoはオンイヤータイプで、側圧はミチッと強めのため、遮音性や音漏れに関しても問題はないだろう。ただ、耳介の形状によっては耳が潰される痛みで長時間の使用は厳しい。私の場合、頭がでかいのもあってか側圧パワーに拍車がかかり小一時間で悲鳴が上がる。Laredoの最大の厄介ごとがここだけど、通勤/通学などには使い勝手がとてもいい。作りはかなり頑強で不安げな要素はゼロ。武骨なまでに頑丈な作りのため、頻繁な持ち運びにこそ打ってつけな頼もしい相棒になりそうだ。折りたたむことはできないが、Silveradoよりも作りはシンプルで重量も250gと程よい重さとなっている。

SilveradoとLaredoのサウンドの根本的な違いは、ドライバーの違いもさることながらハウジングの差異が最大の要因と思われる。大きさや形状も違うが、何より製造方法が異なっており、Silveradoが鋳造方式のダイキャスト製で、Laredoはいわゆる金属板の押出成形でできている。指でコンコンと叩いたときのハウジングの持つ固有振動数が各サウンドの特徴と合致しており、Silveradoは中低域に、Laredoは軽量で高域に寄った特性を確認することができる。

価格からそのサウンドを推し測ると、¥9,980(税込)のLaredoは振り切れたお買い得度だ。耳介が痛くなるという残念なポイントは、数時間でも全く問題ないという人もいることだろうし、10分でNGという人もいるかもしれない。個人差が大きいので冷静にご判断いただき手にしてもらいたい。ちなみにSilveradoであれば、使用感において問題点を感じることはほぼないだろうが、2万円を超える激戦区では、この「デザイン」と「堅牢性」に「堅実なサウンド」という他ブランドにはない特異な魅力をどうとらえるかだ。

text by BARKS編集長 烏丸

●California Headphone Silverado(シルバラード)オーバーイヤーヘッドホン
DMRショップ価格¥22,980(税込)
・ドライバー:40mm Titanium(1-9/16インチ)
・周波数帯域:20-20,000 Hz
・インピーダーンス:32Ω
・音圧感度:123dB
・全高調波歪(THD):<0.2%
・ケーブル:ナイロンカバー 1.2m セパレータージャック付き※本体から取り外し可能

●California Headphone Laredo(ラレド)オンイヤーヘッドホン
DMRショップ価格¥9,980(税込)
・ドライバー:40mm Titanium(1-9/16インチ)
・周波数帯域:20-20,000 Hz
・インピーダーンス:32Ω
・音圧感度:123dB
・全高調波歪(THD):<0.2%
・ケーブル:ナイロンカバー 1.2m セパレータージャック付き

◆DMR渋谷店Laredo
◆DMR渋谷店Silverado
◆DMR渋谷店(試聴・試着)
◆California Headphoneオフィシャルサイト

BARKS編集長 烏丸レビュー(■イヤホン ●ヘッドホン ◆カスタムIEM ◇他)
■音茶楽Flat4-楓(2012-12-03)

◆Stage93 Stage 6(2012-11-26)
●GRADO SR60i(2012-11-19)
◇Astell&Kern AK100-32GB-BLK(2012-11-15)
●オーディオテクニカ ATH-WS99(2012-11-10)
■アトミック フロイドPowerJax+Remote(2012-10-29)

◇VORZUGE VorzAMPduo(2012-10-26)
●ファイナルオーディオデザイン heaven VI(2012-10-16)
●beyerdynamic T 90(2012-10-08)
●GRADO GS1000i(2012-09-30)
●SENNHEISER HD 700(2012-09-16)

◆ACS T1 Live!(2012-09-11)
●オーディオテクニカ ATH-AD2000 ATH-AD1000(2012-09-03)
●GRADO RS1i、SR325is、PS500(2012-08-20)
◆FitEar MH335DW(2012-08-15)
●DIESEL VEKTR(2012-08-07)

◆カナルワークスCW-L51 PSTS(2012-07-30)
●Fischer Audio FA-002W(2012-07-25)
●Pioneer SE-MJ591(2012-07-16)
■GRADO iGi(2012-07-12)
●HiFiMAN HM-400(2012-06-26)

●Klipsch Reference One(2012-06-17)
●GRADO PS1000(2012-06-09)
●ULTRASONE edition 8(2012-06-02)
●PHONON SMB-02(2012-05-28)
■音茶楽Flat4-粋(SUI)(2012-05-20)

●<春のヘッドフォン祭2012>、Fischer Audio FA-004(2012-05-13)
◇Hippo Cricri、Go Vibe Martini+、VestAmp+(2012-05-04)
■ファイナルオーディオデザインheaven IV(2012-04-28)
■フィッシャー・オーディオ Jazz (2012-04-22)
●SHURE SRH1840 & SRH1440(2012-04-16)

■FitEar TO GO! 334(2012-04-08)
◆Unique Melody Mage(2012-03-26)
●Takstar PRO 80、HI 2050、TS-671(2012-03-20)
●klipsch Mode M40(2012-03-15)
■Fischer Audio DBA-02 Mk2(2012-03-07)

◆AURISONICS AS-1b(2012-02-27)
■UBIQUO UBQ-ES503、UBQ-ES505、UBQ-ES703(2012-02-21)
◆Heir Audio Heir 3.A(2012-02-15)
■moshi audio Clarus(2012-02-12)
◆Thousand Sound TS842(2012-02-08)

◆Heir Audio Heir 8.A(2012-02-01)
■CRESYN(2012-01-17)
◆Unique Melody Merlin(2012-01-08)
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◆LEAR LCM-2B(2011-12-26)
●SOUL by Ludacris SL100、150、300(2011-12-23)
●AKG K550(2011-12-20)
■SENNHEISER IE80 & IE60(2011-12-16)
■DUNU(2011-12-14)

◆カナルワークスCW-L10(2011-12-12)
■オーディオテクニカ ATH-CK90PROMK2(2011-12-09)
◆Ultimate Ears UE 5 Pro(2011-12-06)
■REALM IEM856(2011-12-02)
■ファイナルオーディオデザインAdagio III(2011-11-26)

◇Ultimate Ears用交換ケーブルFiiO RC-UE1&オヤイデ電気HPC-UE(2011-11-25)
●Reloop RHP-20(2011-11-22)
■オーディオテクニカ ATH-CK100PRO(2011-11-14)
■SOUL by Ludacris SL99(2011-11-04)
■Fischer Audio Ceramique(2011-10-25)

■SHURE SE535 Special Edition(2011-10-21)
■JVCケンウッドHA-FX40(2011-10-16)
■BauXar EarPhone M(2011-10-10)
■SONOCORE COA-803(2011-10-02)
◆TripleFi 10 ROOTHリモールド(2011-09-25)

■AKG K3003(2011-09-18)
■Atomic Floyd SuperDarts+Remote(2011-09-11)
■Bowers & Wilkins C5(2011-09-06)
■Westone3(2011-09-02)
◆カナルワークスCW-L31(2011-08-26)

◇ORB JADE to go(2011-08-22)
■YAMAHA EPH-100(2011-08-14)
■NW-STUDIO(2011-08-09)
■NW-STUDIO PRO(2011-08-02)
◆FitEar MH334(2011-07-29)

◆ROOTH SE530×8(2011-07-26)
■Westone ES5(2011-07-21)
●SHURE SRH940(2011-07-17)
◆Ultimate Ears 18 Pro(2011-07-15)
■クリエイティブAurvana In-Ear3(2011-07-06)

◆カナルワークス CW-L01(2011-07-01)
■GRADO GR10&GR8(2011-06-25)
◇SAEC(サエク)SHURE SE用ケーブル(2011-06-21)
■フィアトンPS 20&PS 210(2011-06-17)
■ZERO AUDIO ZH-BX500&ZH-BX300(2011-06-11)

■フィリップスSHE8000&SHE9000(2011-06-03)
■アトミック フロイド(2011-05-26)
■モンスター・マイルス・デイビス・トリビュート(2011-05-20)
■SHURE SE215(2011-05-13)
■ファイナルオーディオデザインPiano Forte IX(2011-05-06)

■ラディウス・ドブルベ/ドブルベ・ヌメロドゥ(2011-05-01)
■ローランドRH-PM5(2011-04-23)
■フィリップスSHE9900(2011-04-15)
■JAYS q-JAYS(2011-04-08)
◇フォステクスHP-P1(2011-03-29)

■Klipsch Image X10/X5(2011-03-23)
■ファイナルオーディオデザインheaven(2011-03-11)
■Ultimate Ears TripleFi 10(2011-03-04)
■Westone4(2011-02-24)
■Etymotic Research ER-4S(2011-02-17)

■KOTORI 101(2011-02-04)
■ゼンハイザーIE8(2011-01-31)
■ソニーMDR-EX1000(2011-01-17)
■SHURE SE535(2011-01-13)
■ビクターHA-FXC51(2011-01-12)
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