【BARKS編集部レビュー】LEARのフラッグシップLCM-5は、高い解像度&抜群の鮮明度

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「【BARKS編集部レビュー】新参カスタムIEMブランドLEARは「速い・安い・美味い」の衝撃3拍子」とのタイトルで先にレポートしたとおり、2011年冬に私が初めてLEARのカスタムIEM(In Ear Monitor、イヤモニ、イヤーモニター)をオーダーしたモデルはLCM-2Bだった。理由は「9モデルものラインナップの中で、一番人気のモデルだったから」なのだけど、そのメリハリのあるドンシャリ系のサウンドは2ドライバーの美点が前面に推しだされた好設計で、当時の円高のご利益もあり最高の満足度を味あわせてくれた。

◆LEAR LCM-5画像

▲香港のカスタムIEMブランドLEAR(リア)のフラッグシップモデルLCM-5。5つのドライバーを搭載したハイエンドモデルだ。

▲フェイスプレートは、3Dインプリントのトゥルーテクスチャー面板を選択してみた。カーボン模様に似ているが、質感はまるで別物で、地味すぎず派手すぎないブラックのプラ板という感じだ。

▲ドライバーはカナル部分の下面にきれいに並ぶようにセットされている。シェルのクリアさも世界トップ水準だ。

▲LEAR LCM-5の音導孔は3つ。導管の太さでトーンのコントロールを行っていることがうかがえる。

▲LCM-1~LCM-3の9モデルは金属製のボックスに入っているが、LCM-5は、Otterの防水ボックスとポーチが付属する。

その後2012年末のLEAR日本上陸を機に、試聴機にて9モデルのサウンドを聞く機会を得たことで、LEARに対する信頼は確かなものとなり、そのままLCM-5のオーダーへとなだれ込んだ。入手後既に2ヵ月の愛用を持って評価も安定したので、そのサウンドをご紹介したいと思う。

9モデルの試聴機の中でも当然ながら、好みのもの・そうでもないもの・ピンときたもの…がいろいろあったわけだが、実はLCM-2Bのサウンドは9モデルの中でも比較的異端で、最もドンシャリ傾向が強く一番低域が強いモデルであるという真事実もわかった。最初に手にしたLCM-2Bのそのサウンドから、LEARというブランドにはパワフルでごついサウンドを出すマッチョな印象を抱いていたのだけど、9モデルを試聴したことで、LEARのサウンドはドライバーの特性を素直に引き出すのが得意で、高品質で優れたバランスを信条としているように、その印象も変わっていった。

中でも私が感銘を受けたのはLCM-1Fだったのも先にお伝えした通り。シングルドライバーのくせして完璧とも思えるバランスを持ち、何か至らぬところを突っ込もうにも何の隙も与えない素晴らしいサウンドをすんなり出す逸品だったため、5つものドライバーを組み合わせたLCM-5となれば、9モデルものサウンドデザインを設計したことから得たノウハウを持って、制約なく理想とするサウンドが確実に設計されているはずだと、その期待は大きく膨らむばかり。

発注からものの3週間程度で到着するスピーディーさもうれしかったが、そのサウンドクオリティは期待に反することなく、私の知る限りにおいては最高レベルのサウンドと断言できるものだった。

LEARが考える理想のサウンドとはどのようなものだったのか。LCM-5のサウンドを詩的に表現するとすれば、「鮮度の高いフルーツをカットした時に飛び散る果汁のようなジューシー感」といった感じか。とにかくシズル感あふれる中~高域の表現力がすばらしく、鮮烈かつ新鮮なサウンドで、非常に明快、透明感のあるトーンなのだ。

不思議なのは、その新鮮さがいつまでも色褪せないところで、既に2か月以上もヘビロテ愛用しているのだけれど、未だ耳にして一発目のサウンドは感嘆するほど“綺麗な音”だ。毎度毎度その瑞々しさに感銘を受けるわけで、そのたびに音楽を聴く楽しさのテンションを一段持ち上げてくれる。一般的に、最初は感動したサウンドもいつの間にか慣れて慢性化してしまい、その凄さ・良さに気付かなくなるのが愛用イヤホン・ヘッドホンの常なのだけど、LCM-5だけはいつも最初の一滴が素晴らしく心地良い。いつまでも新鮮さを失わない永遠の美少女のような在り様なのである。

分析的にLCM-5を評価すれば、“極めて高い解像度”と“抜群の鮮明度”が最大の魅力だと思う。非常にクリアで高域の伸びが心地よいサウンドだが、エティモティック・リサーチのER-4Sのような冷徹なシャープさではなく、過激なエッジは立っていない。あくまでも爽やかで抜けるような高域であり、サウンドの質は穏やかだ。歯擦音に悩まされることも全くない。

一方で、低域の量は多くない。重低音もゴリゴリ出るイヤホンも増えてきた昨今、そういう意味ではこの控えめな物量は必要最小限といったところだろうか。ただ、ボーカル領域から上物の音場を心地よく響かせるために、土台として支えるに必要な低域を最小限に品質高く確保したイメージで、低域中毒気味の私でも、そこに不満は全く感じない。むしろ、心地よいサウンドバランスのために寸止めしたのであろうその設計センスに、拍手を送りたいくらいだ。

LCM-5の心地よさは、いわば春~初夏を思わせるサウンドで、湿度も低く爽快で清潔感に満たされている。強いて比較するならば、Heir Audio 8.Aが真夏の灼熱サウンド、カナルワークスCW-L05QDが極寒の冬を思わせる引き締まったサウンドのイメージだ。ちなみにUltimate Ears UE18 Proは、ちょっと湿気の多い夏のサウンド、FitEar MH334はきっちりエアコンディショナーの制御が効いたビジネスフロアのようなサウンド、Unique MelodyのMerlinはサウナである。

スピード感もあるので、音楽的なジャンルも問わないと思う。フルオーケストラから、弾き語り系、メタルまで、そのキャパシティは広い。ちなみに、LCM-5はLow×1、Mid×2、High×2というドライバー構成だが、見た限り、低域はknowles製CI、中域はDTEC、高域はDFKではないかと思う。CIはLCM-1Bの使用ドライバーであり、DTECはLCM-2C、DFKはLCM-2Fの使用ドライバーと思われるものなので、LCM-5の中身は、使用ドライバーの面だけで言えば、LCM-1BとLCM-2CとLCM-2Fの合体モデルと言えそうだ。あるいは、LCM-3BがCI+DFK、LCM-3CがCI+DTECと思われるので、LCM-3BとLCM-3Cを融合させた最終理想形がLCM-5であるとも考えられる。

通常仕様で94,800円、フェイスプレートに3Dインプリントのトゥルーテクスチャー面板のオプションを加えるとさらに価格が上がることになる。決して安価なモデルではないが、その完成度は現在のカスタムIEM商品群の中でもトップレベルであり、様々なモデルで回り道をするくらいなら一気にLCM-5を手にした方が、賢い買い物かもしれない。

なお、シェルの造形の美しさ、フィット感、使用感に関しても、申し分のない高いレベルにある。LEARに関しては制作時期の異なる3モデルを所有しているが、どれも使用感もよく、遮音性の面、疲労感の面からみても全く問題は発生していないので、製作クオリティのばらつきの心配もなさそうだ。そして何より、日本国内で日本語による注文・サポートが完備されている日本法人LEAR Japanの存在がありがたい。不安を抱えることなく安心してオーダーできるということは、何よりうれしいことだ。

text by BARKS編集長 烏丸

●LEAR LCM-5
・販売価格(税込):94,800~109,200円
・周波数特性:20~22kHz
・インピーダンス:28Ω@1000Hz
・感度:112dB
・搭載ドライバ:BA 5基(Low 1, Mid 2, High 2)
・化粧箱寸法:155(L)×110(W)×50(H)mm
・重量:480g
・付属品:化粧箱、ソフトキャリングポーチ、ポリッシュクロス、クリーニングツール、取扱説明書・(英語表記)
・保証期間:購入後1年(ケーブルは6ヶ月)
[問]lear@solidgreen.co.jp
カスタム IEM イヤホン LEAR Japan:Tel 042-505-4350

◆LEARオフィシャルサイト
◆LEAR LCM-5ページ

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■ローランドRH-PM5(2011-04-23)
■フィリップスSHE9900(2011-04-15)
■JAYS q-JAYS(2011-04-08)
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■Klipsch Image X10/X5(2011-03-23)
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■Ultimate Ears TripleFi 10(2011-03-04)
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■KOTORI 101(2011-02-04)
■ゼンハイザーIE8(2011-01-31)
■ソニーMDR-EX1000(2011-01-17)
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