【BARKS編集部レビュー】ORBのJADE casaはビンテージ楽器のごとし

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我が目の前にドンと鎮座しているイカした野郎をご紹介したい。ORBのJADE casa様である。どどーん。発売は半年ほど前の2012年10月だが、質実剛健を絵にかいたような頼れる相棒だ。

◆ORB JADE casa画像

▲これが「DigiFi 第10号」の付録「USB DAC搭載デジタルヘッドフォンアンプ」。おまけの癖に凄いヤツ。

▲ここにRCA端子が。

▲そこにJADE casaをつなげた状態。

「いきなり何の話ですか?JADE casaってなんですか?」という状況だと思うが、事の発端は、他でもない、先日記事(下記リンク参照)にて紹介した、PCオーディオ専門雑誌「DigiFi 第10号」の付録「USB DAC搭載デジタルヘッドフォンアンプ」にある。とってもいいものですよ!とご紹介したわけだが、そこにJADE casaというこいつをつなげるだけで、私の聴く音楽が一気に極上パラダイスな天国サウンドに生まれ変わっちゃったのだ。色気と深みが加わった芳醇なサウンドは、艶めかしいおねいさんの濃厚なモーションのように、快楽のツボを突いてくる。いい音って美味いワインみたいだ。いや~自然とニヤケちゃうよ。

「DigiFi 第10号」付録のUSB DAC搭載デジタルヘッドフォンアンプは、そのままヘッドホンをつなぐだけでグッドサウンドが楽しめるというものだ。それだけで十分に満足できる優れものなのだけど、見ての通りヘッドホン端子の反対側にはRCA端子が付いている。要するにアナログのライン出力が可能なので、ここから高品位なアンプにつなげれば、超絶お手軽にお好みの高品質PCオーディオの出来上がり、ということになる。そこで私はJADE casaに白羽の矢を立てサウンドを確認、その出来過ぎなトーンに悦に入っている状態なのである。

JADE casaとは、ORBから発売となっているヘッドホンアンプだ。USB DAC(USB端子経由でパソコンから音楽信号をデジタルで取り出し、アナログ信号へ変換する機能/機器)など様々な機能を有した多機能アンプが多い中にあって、JADE casaはアナログ・アンプのみの機能に特化させた分、高品質を徹底追及したという本質重視設計のシンプルなヘッドホンアンプである。そもそもORBは職人気質のブランドで、限りなく手作りで組み上げており、ピュアオーディオのデリケートさとやんちゃな音作りをバランスよく持ち合わしている貴重なブランドだったりする。ポータブルヘッドホンアンプのORB JADE to goも、上質さを基にとんでもないワイルドさを聞かせる魅力あふれるモデルなのだけど、その筐体は人知れずアルミブロックから削り出すというどえらい労力をかけていたりする。サウンドクオリティへの呆れるほどの徹底追及は、まさに純朴な職人気質こそが成せる業だ。

▲PCのUSB端子から出力された音楽デジタルデータが、「DigiFi 第10号」付録USB DAC搭載デジタルヘッドフォンアンプでアナログへ変換され、そのままJADE casaへ受け渡される。サウンドの増幅をJADE casaが担う形だ。

▲ORB製JADE casa。採算度外視の本格的な作り。5万円前後の市場価格だが、お買い得感は高い。

▲バックパネルには電源スイッチと電源コード、RCA端子とステレオミニジャックの2系統の入力が用意されている。

▲オーディオプレイヤーとステレオミニジャックをつなげることも可能。写真はハイレゾ音源の再生も可能なAstell&Kern(アステル&ケルン)のAK100。

そんなORBが気合を入れて設計したのがJADE casaなのだけど、こいつは非常に甘い音がする。温かく活き活きとした艶めかしい匂いが香り立つサウンドだ。ウォームなトーンだけに、まったりとしたイメージを受けてしまいがちだけど、その実、狂おしいほどにクリアで繊細な音だとも思う。デリケートなディテールを描き出す力を持ち合わせながら、真正面からぶっといサウンドを叩き出すこの感覚は、まるでめっちゃめちゃ鳴りの良いビンテージ楽器のようだ。

豪快で深遠なビンテージの鳴りと同様、音の粒が素晴らしいスピード感であちこちに広がって、各帯域のひとつひとつが手に取るように分離して聞き取ることができる。ただ肝心なのは、高解像度でぐったりしちゃうようなハイスペックっぷりを押し付けるサウンドではなく、全帯域で素晴らしく調和がとれているので、立体感がありながらもまるでまったりしているかの攻撃性の薄いピースフルなサウンドが作り上げられる点だ。

くっきりシャープでキレッキレなサウンドを求める人には、地味に聞こえることだろう。…が、注目すべきポイントはまさしくここで、サウンドの趣がまったり系と思えど、サウンドは当然寝ぼけているわけではないところが重要。各帯域に散らばるサウンドのひとつひとつはクリアに存在しており、これらの全ての音がチームプレイでフォーメーションを組むように、全域で等しく音圧をかけるような鳴り方をしてくれるのだ。多くのブランドが、スピード感やメリハリを強調し分かりやすく高音質をアピールする傾向にある昨今において、この音質設計を全うするブランドは、やはり信頼できる。というか、ピュアオーディオに根差したブランドにとっては当たり前のことなのかもしれないけど。

JADE casaには「Dynamic」というボタンが用意されているが、これもJADE casaの魅力を表わす一端だ。このスイッチひとつで「礼儀正しき暴れん坊JADE to go」がやってくる。清楚なFAD heaven sを剛毛なオッチャンにかえ、礼儀正しいSHURE SE535を大暴れ兄さんに変えてしまう、ガッツあふれるJADE to goサウンドがお目見えする感じで、ずどんと深みある低域が追加される。もちろん音源にもよるところだけど、低域の薄いヘッドホンでも十分にボトムのしっかりとしたサウンドがお目見えして刺激的だ。イコライザーなどで作り上げた音のバリエーションではなく、完全に別設計のアンプが立ち上がるイメージで、まさしくふたつのアンプが楽しめる。

▲試してみたヘッドホン。上左からSHURE SRH1840、オーディオテクニカATH-A2000X、GRADO GRADO 325is、下左からゼンハイザーHD700、Fischer Audio FA-002W、そしてGRADO PS1000。中でも最高の相性を見せてくれたのは「Dynamic」でドライブさせたFischer Audio FA-002W。もうAメロだけで昇天。

「Dynamic」モードでのオーディオテクニカATH-A2000Xとの絶妙なコンビネーション、SHURE SRH1840との組み合わせによる鉄板の安定感、空間美を存分に堪能させてくれるゼンハイザーHD700のハイエンドサウンドなどは、時間を忘れる至宝のひと時の一例だ。もちろん、万能なわけでもないのは偽らざる事実で、大好きなGRADO 325isなどは、お互いの特性が遠慮し合うようなよそよそしさを感じ、本領発揮には今ひとつといった感じだった。温かくしなやかで余裕と色艶が魅力のJADE casaのサウンドを、全帯域を豪快にぶっ飛ばすように鳴らす、鋭さとキレを最大の武器としたGRADOにぶち込めば最高だろうと思ったのだけど…。一方でGRADO並みにキレの鋭い高テンションで音楽を鳴らすFischer Audio FA-002Wは、これまで以上に惚れ込んでしまいそうな神がかりな相性を見せてくれた。飛び出したのは、イケイケでド派手なのに調和がとれてバランスが良いという、スウィートながら超絶スピード感がある奇跡のサウンド。もう、この音と出会えただけで、あたしゃ大満足。

「こうやってオーディオの深みにはまっていくのかな…」という、生々しいレポートになってしまったが、雑誌の付録を機に、たったひとつのヘッドホンアンプ購入だけで、トップクラスのオーディオ環境が簡単に手に入ってしまう事実が凄い。PCオーディオってなんだか難しくめんどくさいイメージが付きまとうのだけど、実は低予算で高性能を構築できるとんでもない世界なのだということが垣間見れた。そりゃそうだよな、デジタル革新って、そもそも豊かな生活を簡単に実現するためのものだったんだもの。

text by BARKS編集長 烏丸

ORB JADE casa
・オープン価格(市場価格¥49,800前後)
・入力端子:RCA端子 1系統 / ステレオミニジャック 1系統
・出力端子:ヘッドフォン ・Φ6.3ステレオジャック×1
・推奨負荷インピーダンス:16~600Ω
・周波数特性:20Hz~20KHz +0dB、-0.5dB
・全高調波歪率:0.005%以下
・定格出力:180mW+180mW (32Ω負荷)
・電源:AC100V 50/60Hz
・消費電力:20W
・重量:約2kg
・サイズ:W:220mm D:241mm H:50mm
・ケーブル長さ:80cm

◆ORBオフィシャルサイト
◆BARKSヘッドホン・チャンネル

BARKS編集長 烏丸レビュー(■イヤホン ●ヘッドホン ◆カスタムIEM ◇他)
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◇雑誌「DigiFi 第10号」付録(2013-04-06)
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◆Westone AC2(2012-12-25)
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■音茶楽Flat4-楓(2012-12-03)

◆Stage93 Stage 6(2012-11-26)
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◇Astell&Kern AK100-32GB-BLK(2012-11-15)
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◇VORZUGE VorzAMPduo(2012-10-26)
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●beyerdynamic T 90(2012-10-08)
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◆ACS T1 Live!(2012-09-11)
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●GRADO RS1i、SR325is、PS500(2012-08-20)
◆FitEar MH335DW(2012-08-15)
●DIESEL VEKTR(2012-08-07)

◆カナルワークスCW-L51 PSTS(2012-07-30)
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◆LEAR LCM-2B(2011-12-26)
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◆Ultimate Ears UE 5 Pro(2011-12-06)
■REALM IEM856(2011-12-02)
■ファイナルオーディオデザインAdagio III(2011-11-26)

◇Ultimate Ears用交換ケーブルFiiO RC-UE1&オヤイデ電気HPC-UE(2011-11-25)
●Reloop RHP-20(2011-11-22)
■オーディオテクニカ ATH-CK100PRO(2011-11-14)
■SOUL by Ludacris SL99(2011-11-04)
■Fischer Audio Ceramique(2011-10-25)

■SHURE SE535 Special Edition(2011-10-21)
■JVCケンウッドHA-FX40(2011-10-16)
■BauXar EarPhone M(2011-10-10)
■SONOCORE COA-803(2011-10-02)
◆TripleFi 10 ROOTHリモールド(2011-09-25)

■AKG K3003(2011-09-18)
■Atomic Floyd SuperDarts+Remote(2011-09-11)
■Bowers & Wilkins C5(2011-09-06)
■Westone3(2011-09-02)
◆カナルワークスCW-L31(2011-08-26)

◇ORB JADE to go(2011-08-22)
■YAMAHA EPH-100(2011-08-14)
■NW-STUDIO(2011-08-09)
■NW-STUDIO PRO(2011-08-02)
◆FitEar MH334(2011-07-29)

◆ROOTH SE530×8(2011-07-26)
■Westone ES5(2011-07-21)
●SHURE SRH940(2011-07-17)
◆Ultimate Ears 18 Pro(2011-07-15)
■クリエイティブAurvana In-Ear3(2011-07-06)

◆カナルワークス CW-L01(2011-07-01)
■GRADO GR10&GR8(2011-06-25)
◇SAEC(サエク)SHURE SE用ケーブル(2011-06-21)
■フィアトンPS 20&PS 210(2011-06-17)
■ZERO AUDIO ZH-BX500&ZH-BX300(2011-06-11)

■フィリップスSHE8000&SHE9000(2011-06-03)
■アトミック フロイド(2011-05-26)
■モンスター・マイルス・デイビス・トリビュート(2011-05-20)
■SHURE SE215(2011-05-13)
■ファイナルオーディオデザインPiano Forte IX(2011-05-06)

■ラディウス・ドブルベ/ドブルベ・ヌメロドゥ(2011-05-01)
■ローランドRH-PM5(2011-04-23)
■フィリップスSHE9900(2011-04-15)
■JAYS q-JAYS(2011-04-08)
◇フォステクスHP-P1(2011-03-29)

■Klipsch Image X10/X5(2011-03-23)
■ファイナルオーディオデザインheaven(2011-03-11)
■Ultimate Ears TripleFi 10(2011-03-04)
■Westone4(2011-02-24)
■Etymotic Research ER-4S(2011-02-17)

■KOTORI 101(2011-02-04)
■ゼンハイザーIE8(2011-01-31)
■ソニーMDR-EX1000(2011-01-17)
■SHURE SE535(2011-01-13)
■ビクターHA-FXC51(2011-01-12)
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