【BARKS編集部レビュー】Stage93 93PCは、極上環境に笑みを与えるスパイス

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2012年12月にご紹介した、Stage93製の「93SPEC」という名のプレミアムシルバーケーブルがとてもよかったので、更なる新製品が登場したと聞いて飛びついてしまった。「93PC」と名付けられたプレミアムカッパーケーブルである。

◆Stage93 93PC画像

▲Stage93製の93PCケーブル。ご覧のように丸めれば素直に円を描き、まっすぐに広げればクセも付かずにそのままストレートになる。使いまわしの良さが伝わるであろうか。

▲ジャック部はストレートかL字かを選ぶことができる。イヤーフック部分に針金(形状記憶フフック)は付いていないが、自力で自然に耳にフィットする。

▲ケーブルの太さの比較。上からUltimate Ears UE900、Ultimate EarsカスタムIEM[用ケーブル、Stage93製 93SPEC、そしてStage93製 93PC。93PCが群を抜いて太いことがお分かりだろうか。

「93SPEC」も「93PC」もカスタムIEM用の交換ケーブルで、Stage93製のカスタムIEMはもちろん、Ultimate Ears、Westone、JH AUDIO、Unique Melody、Heir Audio…といった主だったカスタムIEMにも問題なく使用できるカスタム専用ケーブルだ。ご覧のようにごつい四つ編みで組まれたケーブルはその名の通り銅でできており、新品の10円玉のようなピンクっぽく光る綺麗な銅色が素晴らしく綺麗。高品質な無酸素銅でクライオ処理もされており、プレミアムの名にふさわしいスペックにはどこにも隙がない。まだ使用してトータル3ヵ月程度だが、緑化の兆しは見られない。詳細は分からないが、ウェブサイトの記述によると酸化を防ぐ独自処理も施されているという。今やUEのクリアケーブルも緑化を起こさない仕様となっており、今後はいつまでも綺麗なクリアケーブルが当たり前になっていくのかもしれない。

さて、問題は実際の使い心地とそのサウンドだが、ご覧のとおりケーブルのぶっとさは他に例を見ないほどの威圧感だ。ただ、意外にも取り回しはさほど悪くなく、反発力も強くはないので、使用時に踊ったりぴんぴん跳ねて持て余すといったありがちな問題点はほとんど起こらない。変に癖がつくこともないので、ケーブルは耳からオーディオプレイヤーまでごく自然なカーブを描いて取り回しはなかなかの好印象。これだけぶっといと邪魔でしょうがないのではないかと覚悟していただけに、嬉しい誤算だ。そもそもデファクトスタンダードといえるWesotone製ケーブルやUltimate Ears製旧型ケーブルの完成度が非常に高く、使い勝手は限りなく100点に近いので、むしろ交換用高級ケーブルは使い心地はほどほどのところで手を打ち、その分素材選びに妥協を見せずサウンドクオリティに最大限のコストと工夫を凝らすという設計の商品が多い。

さて肝心のサウンドだが、愛用しているStage93のStage 6のスバ抜けたクリアさが、さらに一歩クリアに押し出されて、その結果、高域の伸びを感じさせるものとなった。「この効能は普通シルバーケーブルの特徴じゃなかったっけ?」という既成概念があったので、これもちょっとした嬉しいサプライズ。特定の帯域の出方が変わるという印象ではなく、全体のキメの細かさが変化するという感覚だ。圧縮されたMP3音源の場合、256Kbpsから129Kbpsに落とすと、その音質劣化の印象は“クリアさを失いちょっと薄汚れた不潔な音になる”という感覚を持つのだけれど、この93SPECケーブルからノーマルケーブルに変えた時の変化が、このときと似たような感覚でクリアさの欠如を想起させる音質変化を感じてしまう。精神衛生上においても、これは使い続けたいと思わせる説得力のある魅力がある。

実際、聞き比べをシビアに行うと、中低域の充実が図れることもわかった。ただ、こちらも物量が上がるというよりも、その分離の良さや歯切れの良さを付加してくれるものなので、使用IEMによってはすっきりとまとまった聞こえ方となり、物足りなさを感じさせる逆転現象も発生する。品質は確実に上がるのだが、それが全体の印象としていい方に転がるかどうかは、聴く人の好みや捉え方で変わるだろうというのが、冷静な判断だと思う。

▲今回サウンドを確認するために使用したKORG DS-DAC-10。使用した音源はFLACやALACといった劣化のないデータ。モバイル時にはAK100を使用してサウンドを確かめた。

時間をかけていろいろ聞き比べをしたことで分かったことはもうひとつ。当たり前の話かもしれないが、「93SPEC」の交換してその効能がしっかりと実感できるのは、非常に高スペックなオーディオ環境にセットアップされた状態であることが条件のようだ。言い方を変えれば、ケーブルを交換することでその変化が検知できるようなハイファイな状況であることが必要なのかもしれないし、ケーブル部分が品質阻害のボトルネックになっている状況でのみ、その効果が分かりやすく発揮されるとも言い換えられるかもしれない。

ちなみに、私が上記感想を得られたのは、PCからKORG DS-DAC-10でFLACやALACをDSDリアルタイム変換で再生した環境下においてである。ケーブルを交換したことで変わったであろう微細な表現変化を感じ取るにしても、iPodでの128bps音源の再生などでは、とてもとても捉えることはできない。音源、再生プレイヤー、使用するカスタムIEM…など、あらゆるポイントで妥協なきセットアップをしたうえで、更なるサウンドのブラッシュアップに「93SPEC」の類まれなるカッパーサウンドをご注目頂きたいと思う。ハマったらきっと戻れなくなる、個性派高品位ケーブルのひとつとして検討いただきたい一品だ。

text by BARKS編集長 烏丸

●Stage93 93PC - Premium Copper Cables
160.3シンガポールドル(≒13,100円)

◆Stage93 93SPECオフィシャルサイト

BARKS編集長 烏丸レビュー(■イヤホン ●ヘッドホン ◆カスタムIEM ◇他)
●Meze Headphones(2013-05-08)
●Fischer Audio Jubilate(2013-04-29)
◇ORB JADE casa(2013-04-21)

◆lime ears LE3(2013-04-14)
◇雑誌「DigiFi 第10号」付録(2013-04-06)
●Ultimate Ears UE 9000、UE 6000、UE 4000(2013-04-01)
■開放型インナーイヤーイヤホンおススメ5モデル(2013-03-19)
◆LEAR LCM-5(2013-03-16)

●フィリップスFidelio L1(2013-02-25)
○スマホが与えた音楽リスニングのモラル変革(2013-02-17)
■Klipsch Image X7i(2013-02-04)
◆LEAR(2013-01-27)
◆カナルワークスCW-L05QD(2013-01-13)

◆earmo(2013-01-02)
◆Westone AC2(2012-12-25)
◇Stage93 93SPEC(2012-12-16)
●California Headphone Silverado、Laredo(2012-12-09)
■音茶楽Flat4-楓(2012-12-03)

◆Stage93 Stage 6(2012-11-26)
●GRADO SR60i(2012-11-19)
◇Astell&Kern AK100-32GB-BLK(2012-11-15)
●オーディオテクニカ ATH-WS99(2012-11-10)
■アトミック フロイドPowerJax+Remote(2012-10-29)

◇VORZUGE VorzAMPduo(2012-10-26)
●ファイナルオーディオデザイン heaven VI(2012-10-16)
●beyerdynamic T 90(2012-10-08)
●GRADO GS1000i(2012-09-30)
●SENNHEISER HD 700(2012-09-16)

◆ACS T1 Live!(2012-09-11)
●オーディオテクニカ ATH-AD2000 ATH-AD1000(2012-09-03)
●GRADO RS1i、SR325is、PS500(2012-08-20)
◆FitEar MH335DW(2012-08-15)
●DIESEL VEKTR(2012-08-07)

◆カナルワークスCW-L51 PSTS(2012-07-30)
●Fischer Audio FA-002W(2012-07-25)
●Pioneer SE-MJ591(2012-07-16)
■GRADO iGi(2012-07-12)
●HiFiMAN HM-400(2012-06-26)

●Klipsch Reference One(2012-06-17)
●GRADO PS1000(2012-06-09)
●ULTRASONE edition 8(2012-06-02)
●PHONON SMB-02(2012-05-28)
■音茶楽Flat4-粋(SUI)(2012-05-20)

●<春のヘッドフォン祭2012>、Fischer Audio FA-004(2012-05-13)
◇Hippo Cricri、Go Vibe Martini+、VestAmp+(2012-05-04)
■ファイナルオーディオデザインheaven IV(2012-04-28)
■フィッシャー・オーディオ Jazz (2012-04-22)
●SHURE SRH1840 & SRH1440(2012-04-16)

■FitEar TO GO! 334(2012-04-08)
◆Unique Melody Mage(2012-03-26)
●Takstar PRO 80、HI 2050、TS-671(2012-03-20)
●klipsch Mode M40(2012-03-15)
■Fischer Audio DBA-02 Mk2(2012-03-07)

◆AURISONICS AS-1b(2012-02-27)
■UBIQUO UBQ-ES503、UBQ-ES505、UBQ-ES703(2012-02-21)
◆Heir Audio Heir 3.A(2012-02-15)
■moshi audio Clarus(2012-02-12)
◆Thousand Sound TS842(2012-02-08)

◆Heir Audio Heir 8.A(2012-02-01)
■CRESYN(2012-01-17)
◆Unique Melody Merlin(2012-01-08)
◆カナルワークスCW-L01P(2012-01-03)
■ファイナルオーディオデザイン Adagio(2011-12-31)

◆LEAR LCM-2B(2011-12-26)
●SOUL by Ludacris SL100、150、300(2011-12-23)
●AKG K550(2011-12-20)
■SENNHEISER IE80 & IE60(2011-12-16)
■DUNU(2011-12-14)

◆カナルワークスCW-L10(2011-12-12)
■オーディオテクニカ ATH-CK90PROMK2(2011-12-09)
◆Ultimate Ears UE 5 Pro(2011-12-06)
■REALM IEM856(2011-12-02)
■ファイナルオーディオデザインAdagio III(2011-11-26)

◇Ultimate Ears用交換ケーブルFiiO RC-UE1&オヤイデ電気HPC-UE(2011-11-25)
●Reloop RHP-20(2011-11-22)
■オーディオテクニカ ATH-CK100PRO(2011-11-14)
■SOUL by Ludacris SL99(2011-11-04)
■Fischer Audio Ceramique(2011-10-25)

■SHURE SE535 Special Edition(2011-10-21)
■JVCケンウッドHA-FX40(2011-10-16)
■BauXar EarPhone M(2011-10-10)
■SONOCORE COA-803(2011-10-02)
◆TripleFi 10 ROOTHリモールド(2011-09-25)

■AKG K3003(2011-09-18)
■Atomic Floyd SuperDarts+Remote(2011-09-11)
■Bowers & Wilkins C5(2011-09-06)
■Westone3(2011-09-02)
◆カナルワークスCW-L31(2011-08-26)

◇ORB JADE to go(2011-08-22)
■YAMAHA EPH-100(2011-08-14)
■NW-STUDIO(2011-08-09)
■NW-STUDIO PRO(2011-08-02)
◆FitEar MH334(2011-07-29)

◆ROOTH SE530×8(2011-07-26)
■Westone ES5(2011-07-21)
●SHURE SRH940(2011-07-17)
◆Ultimate Ears 18 Pro(2011-07-15)
■クリエイティブAurvana In-Ear3(2011-07-06)

◆カナルワークス CW-L01(2011-07-01)
■GRADO GR10&GR8(2011-06-25)
◇SAEC(サエク)SHURE SE用ケーブル(2011-06-21)
■フィアトンPS 20&PS 210(2011-06-17)
■ZERO AUDIO ZH-BX500&ZH-BX300(2011-06-11)

■フィリップスSHE8000&SHE9000(2011-06-03)
■アトミック フロイド(2011-05-26)
■モンスター・マイルス・デイビス・トリビュート(2011-05-20)
■SHURE SE215(2011-05-13)
■ファイナルオーディオデザインPiano Forte IX(2011-05-06)

■ラディウス・ドブルベ/ドブルベ・ヌメロドゥ(2011-05-01)
■ローランドRH-PM5(2011-04-23)
■フィリップスSHE9900(2011-04-15)
■JAYS q-JAYS(2011-04-08)
◇フォステクスHP-P1(2011-03-29)

■Klipsch Image X10/X5(2011-03-23)
■ファイナルオーディオデザインheaven(2011-03-11)
■Ultimate Ears TripleFi 10(2011-03-04)
■Westone4(2011-02-24)
■Etymotic Research ER-4S(2011-02-17)

■KOTORI 101(2011-02-04)
■ゼンハイザーIE8(2011-01-31)
■ソニーMDR-EX1000(2011-01-17)
■SHURE SE535(2011-01-13)
■ビクターHA-FXC51(2011-01-12)
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