【佐伯 明の音漬日記】世阿弥「風姿花伝」にJ-POPの進化を思う

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2007.01.□

「新春だから、古典でも読もうかな」と思い、
世阿弥が著した「風姿花伝」を読むに到った。

フツーに読んでも充分に趣はあるのだが、
「ここは、リンボウ(林望)先生の解説付きで」と考え、
林望氏著「すらすら読める風姿花伝」(講談社)を手に取る。

先生の解説を引用すれば
「そもそも、この“風姿花伝”という伝書は、世阿弥が亡き父・観阿弥
から受けた教えを祖述しつつこれを敷衍し、徹底するという底のもので
あった」わけである。

能を幽玄(優美艶麗)にまで高めた父子の偉業は、
半ばすべての「芸事」に通用する理り(ことわり)を持っていると、
僕は考えている。

したがって、たとえJ-POPの領域であろうと、汎用性はあるわけで、
自分の側に引きつけながら(仮にそれが卑近なことになろうとも)、
読んでいった。

そして、「能の面白さの極地」という章にあった“物狂い”なる概念に、
とても興味をそそられた。
先生も解説しているように“物狂い”を現代的に“精神障害”ととらえ
てみても、この概念はまったくわからない。
“狂う”とは“憑依する”と訳すのが適切だ。

考えてみれば、僕らがこの30年ほどやってきた“ロックを中心とする
欧米の大衆音楽を再表現する行為”は、なんとかロックを憑依させようと
してきたことにほかならない。~例えば30余年前、エリック・クラプトンは
僕らにとって見まごうことなき「神」だったのである。~

そして、その行為は現在において、一つの完成を見たような気がする。
完成までの行程を僕はつぶさに観察してきたわけだから、
近い将来、その行程内容を書いてみるのも悪くないと思った次第。

ともあれ、節目となる時節に古典を読むのは、大変にタメになる。
「やってきたこの30年」が、美しく相対化されるからである。
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