ノルウェーから登場した若き天才 アレクサンダー・ウィズ 来日インタビュー(1)

ポスト
アレクサンダー・ウィズをご存知だろうか? 去る7月4日に『カミング・ホーム』と題されたデビュー・アルバムが発売されたばかりの新人だから、普通は知らなくてアタリマエなのだが、とにかくこのアルバムが素晴らしい。僕自身はずいぶん前に輸入盤で手に入れていたのだが、楽曲の充実度が普通じゃないのだ。

ノルウェー出身のアレクサンダーは、1987年6月30日生まれ。つまり、つい最近20歳になったばかりで、このアルバムを完成させたのは19歳のとき。その年齢ゆえに「若き天才」なんて言葉が無条件につきまとう傾向があるわけだが、実際、恥ずかしげもなくそんなベタな形容をしてしまいたくなるだけの才気を感じさせてくれるのが、この『カミング・ホーム』という作品なのだ。

で、実はこのアルバムのプロモーションのために来日した際、彼と話をする機会を得た。これから数回に分けて、“20歳目前の頃のアレクサンダーの肉声”をお届けしようと思う。まず今回はその“若さ”に似合わない音楽的背景について。

「確かに僕の音楽は、年齢に比べて成熟した印象のものかもしれない。でもね、僕が若いのは事実だし、そのことが取り沙汰されるのは仕方のないことだけど、常に“まだ十代の”みたいな枕詞が伴うのには正直ウンザリしてるんだ。早くそこから抜け出したくてたまらない。とはいえノルウェーでは22歳にならないとお酒も呑めないんだけどね(笑)」

「僕自身が音楽的に早熟だったことは、家庭環境とも関係があると思う。モノゴコロついた頃から、僕は父を音楽が大好きな人だと知っていたし、実際、クラシック愛好家の父は、昔から幅広くポップ・ミュージックにも精通していた。特にエルトン・ジョンとかね。僕にとって“ピアノを弾きながら歌う”ことが、あらかじめ自然な行為だったのは、そういったこととも無関係じゃないと思う。今は、ピアノを弾かずにマイクの前に立って歌うこともあるけれど、ピアノの陰に隠れられない場面だと、いまだにちょっとナーヴァスになることがあるのを認めなきゃならないな(笑)。逆に、ピアノの前に座ると集中できるというか、スイッチが入るようなところがあるんだ」

「そんなわけで、僕は小学校に上がるころからクラシックを聴いていた。まわりの1年生たちはみんなガンズ・アンド・ローゼズとかに夢中だったけどね」

ちなみにガンズの名前は、ガンズ馬鹿の僕が誘導尋問で引き出したものではなく、彼の口から勝手に出てきたもの。そして蛇足を承知で補足しておくと、アレクサンダーが生まれたのは、ガンズの『アペタイト・フォー・ディストラクション』が世に出たのと同じ年。もちろんそこには何の因果もないはずだけれども。

さて、次回はアレクサンダーの生まれ育ったノルウェーの音楽シーンについて語ってもらう。唐突にブラック・メタルの話も出てきたりするのでお楽しみに。

文●増田勇一
この記事をポスト

この記事の関連情報