タイナカサチ、両A面シングル「Lipstick/一番星」インタビュー

ポスト

――6枚目のシングルは両A面ですが、ずいぶんとカラーの違う2曲をカップリングしてますよねぇ。

タイナカサチ(以下、タイナカ):そうなんです! でも、わざとじゃないんですよ。最初に映画のエンディング・テーマのお話を頂いて「一番星」を作り、その後に書いたのが偶然「Lipstick」だっただけで。どっちも私、どっちも正直な気持ちなんです。

――じゃあ、どんな想いが込められているのか、一曲ずつ探っていきましょう。まず1曲目の「Lipstick」はブラス・アレンジの心浮き立つキュートなナンバーで、こういう曲がタイナカさんのシングルで来るとは正直意外でした。

タイナカ:シングルでアップ・チューンは初めてですね。去年の夏から「最高の片想い」「会いたいよ。」「愛しい人へ」と3枚続けてメイン曲はバラードだったから、今回はあえてアップの「Lipstick」のほうを両A面の1曲目に持ってきたんです。まぁ、いい意味でのチャレンジですね。

――そのチャレンジをしようと思ったキッカケは?

タイナカ:4月に初めてのワンマン・ライヴをしたとき、単純に“もっと楽しみたいな”っていう気持ちが沸いてきたんです。ピアノの弾き語りでバラードをしっとり聴いてもらうのもいいけれど、せっかくだったらお客さんと一緒に盛り上がりたい。そんなライヴを作るためにも、ここでアップテンポの曲を推そうと。

――だから、PVのほうも楽しそうなバンド・シーンがメインなんですね。そんなノリのいい曲に、初デートで彼を待つ女の子の期待と不安を書いた詞がまたピッタリで。これって、もしや実体験?

タイナカ:もちろんですよ!(笑)ま、そもそもは駅前で待ち合わせをしている女の子たちを見たときに、インスピレーションを受けたんですね。もし彼氏を待ってるんだったら、きっと今、心の中は葛藤してるんだろうなぁ……って。だって、私も同じですもん。待ってる体勢や着てる服はもちろん、メール打ってるほうが自然でいいのか逆にイヤな印象を与えるのかなとか、もうホントにいろいろ考えちゃう。

――彼が到着したときに、一番可愛い自分でいたいから?

タイナカ:うん。初デートだったらなおさらですよね。それで最後に何をするかな? って考えたとき、自分だったらもう一回グロスを塗るかなぁと思ったんです。それでダメ押しして、自分に自信つける。だから、この詞は私の実体験でもあり、みんなが共有できる気持ちでもあるんじゃないかな。

――なるほど。挑戦といえば、この曲では初めて作詞家さんと共作されてますよね。

タイナカ:最初は一人で書いていたんですけど、気づいたら私、気持ちばっかり書いちゃってて。ちょっと独り善がりになってたから、他人の視点を入れることで少し風通しを良くしたかったんです。誰かと一緒に詞を書くという作業を一度してみたかったし、やってみたら自分一人では出てこない発想がどんどん出てきて、ホント楽しく共作できました。

――生のブラスにコーラスを重ねたアレンジも、変に凝ったところがないからわかりやすいし。結果、愛らしいポップ感が際立ってワクワクしました。

タイナカ:素直にはなってますよね。なんか楽しい(笑)。この曲をやりだしてから、ライヴでのお客さんのノリも明らかに良くなったんですよ。“ここからまた何か新しく始めたい”っていう気持ちを打ち出していってるので、それが伝わってるのかも。

――メッセージを伝えるというよりは皆で共感して楽しむ、これはタイナカサチの新境地ですよね。でも私は、「一番星」も新しい挑戦なんじゃないかなぁと思うんです。

タイナカ:あら、気づいてくれました? バラードはずっと歌ってきたんですけど、その中でも「一番星」は新しいんですよ。

――具体的に言うと?

タイナカ:実は私、“命”だとか“魂”というものについて、すっごく興味があるんですね。考えすぎちゃって、もう朝まで眠れないこともあるくらい! でも今までは、そんな重いテーマを楽曲で扱う勇気がなかったんです。そんなとき、ちょうど映画「ペルソナ」のエンディング・テーマのお話をいただいて。実際に拝見すると、命の尊さや生命力をテーマにした映画のように感じられたので、この作品のエンディングとしてなら普段考えていることが書けるんじゃないかと思ったんです。おかげで「一番星」では、限界まで自分をさらけ出すことができました。

この記事をポスト

この記事の関連情報