小林武史、初のソロ・ワーク集『WORKS I』リリース記念超ロングインタビュー特集

ポスト

小林武史 初のソロ・ワーク集『WORKS I』リリース大特集

ap bank、『ネオコラ! neo-collage TV 東京環境会議』、ブラッドベリ・オーケストラ、ソロ作品のすべてを語りつくす

ネオコラとブラッドベリ・オーケストラ

僕らはどこから来て、どこに向かって、いまどこにいるのかを感じることが重要

──『ネオコラ! neo-collage TV 東京環境会議』もその延長線上にあるものですよね。出演者がかなり豪華で、ツッコミどころ満載で、軽やかでちょっとブラックな笑いのなかにメッセージが提示されていて。

「うんうん。」

──楽しく興味深く見ましたが、この企画はどういう流れのなかで生まれたんですか?

「『ネオコラ!』は、『東京環境会議』を構想したときに最初からテレビ番組というのはパッと浮かんでいたんですよ。僕は昔からモンティ・パイソンが大好きだったし、笑いってもともとある種の社会的な風刺が盛り込まれているものだと思っていて。それで、映像作家の丹下鉱希くんやアート・ディレクターの森本千絵さんにいろいろ相談したら、森本千絵さんが『同じようなことをずっとやりたがっている放送作家の人がいるんです』って紹介されたのが倉本美津留さんだったんですよ。」

──ダウンタウンの番組を手がけていることで有名ですよね。『一人ごっつ』の大仏の声が印象的で。『ネオコラ!』でも声の出演で中川翔子さんと共演していますね。

「そうそう。倉本美津留さんって、僕と同い年なんですよ。だから世代的に共有できる感覚がすごく多くて。それで『ネオコラ!』のようなショート・フィルムを実際に彼は作ろうとしていたらしいんですよ。そういうなかで僕がプロデューサーという立場で関わって、『エコエコブーム』とか現実味のない環境標語を真に受けたりしない人たちに協力してもらって──まさにミーティングをしながら 笑いとアートをコラージュしようということでスタートして。そこで何を表現したいかといえば、カッコよく言えば、僕らはどこから来て、どこに向かって、いまどこにいるのかを感じることが重要だと思っていて。それは音楽を作ってる作業でもなんでもそうなんだけど、すべてはそういうベクトルのなかで感じて、行動するので。『いま』をどういうふうに捉えるかなんですよね。」

──それは、「いま」という視点を基軸に過去や未来について考察しなければ、そこにリアリティはないということでもあって。

「そうそう。そういう視点をもたないと『そもそも僕たちは地球にヒドいことをしてきた、あしたから地球のために生きなければ』みたいな、『嘘つけ!』と言われそうなことになってしまうんですよね。最近、『ベターの連鎖』ということをよく考えるんですよ。以前、NHKの『ビューティー☆ウォーズ』という番組を観たんですけど、女性はなぜいつまでも化粧をするのかみたいなテーマがあって。お父さんたちが5、60歳になった奥さんたちに『化粧なんてしたってもうすぐおばあちゃんになっちゃうんだよ』なんて言いたくなるのもわからなくないんですよ。でも、これは比較論になってしまうんだけど、もし自分が実年齢や友だちより『若い』って言われると、ものすごく前向きな気持ちで生きていけるなと思うんですよね。」

──そうですね。

「うん。そういう気持ちがいい循環を生んでいくと思って。これは『ベターの方程式』だなって思ったんです。で、僕らは絶対的に自分の関心のある方向にしか行かないんですよ。そのなかで僕らはいずれ死んでしまうわけだけども、ベターを連鎖させていくということで、エコシフトみたいなところにももっていけるのかなと思っていて」

──それは人間の欲望を有効活用するということでもありますよね。『ネオコラ!』もまず、あくまでキャストが豪華でおもしろい番組というところから、視聴者に興味を持ってもらうことが肝要であって。

「そうそう、そうじゃないといけないと思うんですよ。『ネオコラ!』も、もっといろいろなやり方があると思うので、継続的に制作していきたいですね。」

──あと気になるのが、番組のオープニングとエンディングで『WORKS I』に収録されている「手紙」のボーカル・バージョンが流れるんですけど、これを演奏しているのが「ブラッドベリ・オーケストラ」という名の謎の多いバンドで。最後にこのプロジェクトについて教えていただけますか?

「ブラッドベリ・オーケストラは、僕のなかでブラックボックスのような存在になればいいなと思っていて。『WORKS I』が僕のピアノと心の宇宙のアウトプットなら、ブラッドベリは『ネオコラ!』をはじめ、いろいろな分野のプロジェクトのすべてをすくっていくポッドとして機能させたいんですね。例えば、いまって音楽とファッションがコラージュ的に結びついているものがないと感じているので、今後ファッションともつながっていけたらおもしろいとも思っていて。ブラッドベリはそうやっていろいろなポップ・カルチャーと交わっていければいいなと思ってます。楽しみにしていてください。」

取材・文●三宅正一

 
この記事をポスト

この記事の関連情報