「百鬼夜行奇譚」第五夜:【幽鬼】~傀儡 Kugutsu~[四/最終話]

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Kaya 短編小説連載「百鬼夜行奇譚」第五夜
【幽鬼】~傀儡 Kugutsu~
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・[四/最終話]

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女からの愛撫を全身に受け、快楽の海に溺れる視界の端に、和雄は自らの体がゆっくり“変化”してゆく様を、見た。
女がくちづけた部位が緑色に変色し、みるみるうちに痩せてゆく。髪の毛は抜け落ち、全身の体毛は固く鋭利な刺へと姿を変わる。指先からはあざやかな緑色の葉が、物凄い速さで成長を遂げ、かさかさと嫌な音を立てた。

甘やかに麻痺しながら、異形の者へと“変化”してゆく自身に気づきながらも、押し寄せる快楽に体を支配され、声すら出ない。

――――もう何も考えられない――――。

薄れゆく意識の中で、女の囁きを聞いた。
「あなたの肌、とても綺麗ね……まるで薔薇の花びらのようだわ」。

翌週。
刺すような青空。金木犀が薫る裏通りを、誠はひとり歩いていた。
厳しかった残暑もやっと影を潜め、頬を撫ぜる風が心地良い。

白いドアの前で、足を止め、そっとドアを開けた。
「ようこそ、いらっしゃいませ」
薄暗い店の奥から、女が顔を出す。
「まぁお久しぶり。やっとお一人で会いに来てくださったのね。今日、お友達は?」
「こんにちは、奥さん。…あいつは一週間前に失踪してしまったんだ」。
「まぁそれは心配ね…ゆっくりお話を聞かせて頂戴。今日はお店を早締めにするわね」。

殺風景な部屋には、朱色のソファと、テーブル。そしてテーブルの上には薔薇が二輪飾られていた。

「この部屋は随分とさっぱりとしているんですね」。
誠はテーブルに近づき、薔薇の花を見つめた。
「あぁ、ここにも薔薇の花が。…この薔薇はやけに鮮やかな色をしているんですね」。
「綺麗な赤でしょう? まるで血のように鮮やかだとお思いにならない?」
そう言いながら、薔薇の花びらを一切れちぎり、唇にあてる。
振り返り、囁いた。
「ねぇ、そのまま横におなりになって………」。

文:Kaya / イラスト:中野ヤマト

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・第一夜【不眠】~Psycho Butterfly~
・第ニ夜【鬼櫻】桜花
・第三夜【回顧】~Awilda~
・第四夜【来世】~Awilda~

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