【連載】アストゥーリアス大山曜の[我らプログレッシバー!]Vol.3「キーボードが主役」

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1960年代後半に巻き起こった実験的ロックの流れ。1969年の『クリムゾン・キングの宮殿』の成功により、プログレッシブ・ロックという新たなジャンルが大衆に認知されることになりました。キング・クリムゾンは翌年分裂、Bass&Vocalのグレッグ・レイクは新バンド結成をもくろみます。ナイスの天才キーボーディスト、キース・エマーソンをフィーチャーした「エマーソン・レイク&パーマー(通称ELP)」です。

レイクはエマーソンという稀有なプレーヤーを前面に出し、ジミ・ヘンドリックスに匹敵するキーボード版ロック・スターを作ろうとしたそうです。1970年のデビューから、派手なライブ・パフォーマンス(オルガンをナイフで刺したり、倒して引きずり回すなど破壊的行動も)で話題を集め、ひたすら暗く(^^;)実験的音楽追求に時間を費やしていた他のプログレバンドを尻目に、またたく間にスターダムをかけ上がります。もちろん派手で破壊的なだけではなく、エマーソンはクラシカルな素養も十分で、とかくワイルドさが売りのロック音楽に、大胆にクラシック音楽の要素を取り入れ斬新な作品を作り上げていきます。

当時も今もロックといえば、やはりギターが主役。ジャズではピアノ・トリオ、オルガン・トリオなどありますが、ロック音楽でのキーボードの立場というと、どうしても脇を固める、音を分厚くして安定感を高める、といった地味な役割が多いと思います。ただギターは楽器の構造上、和声感に限界があり、複雑な和声、対位法的な複数の旋律、スケールの大きな空間などが不可欠なプログレの楽曲では、必然的にキーボードの役割が大きくなり、多くのスター・キーボーディストが生まれました。ELPは3人編成の音の薄さという欠点を逆手に取り、キーボードが縦横無尽にかけめぐる大胆なアレンジで、新境地を開拓。“プログレ=キーボードが大活躍“という図式を確立させた最大の立役者と言えるでしょう。

そんなELPの2ndアルバムが今回ご紹介する『タルカス』です。

旧アナログA面を占める「組曲タルカス」、中でも注目すべきはオープニングを飾る「イラプション」。この1曲だけでも聴く価値があるアルバムです。

前作では、知的なピアノとワイルドなオルガンの対比で新たなサウンドを提示したELPが、新兵器ムーグシンセサイザーをよりアピールし作り上げた驚異の近未来サウンド(当時)です。ストラビンスキー以降の近代クラシックからの影響か、複雑極まりない変拍子、不協和音、調性にこだわらない展開を大胆にロックに導入し、ギター中心のバンドでは決して作ることが出来ない未知の音楽を作り上げました。その後のロック、ポピュラー全般を見渡しても、これほどコード進行にとらわれず、複雑な展開を見せる楽曲はまず見当たらず、その先進性に驚かされます。ただもっと重要なことは、やってることは難しいけれど、単純に“カッコいい”ことだと思います。“複雑でカッコいいプログレ”の頂点に位置する名曲だと思います。

他の曲はB面の歌物少品集がバラエティーに富んだ作りで、ELPの音楽の幅広さを示してくれますが、とにかく聴きものは「組曲タルカス」。ライブ盤「レディース&ジェントルメン」でのアレンジ・演奏もスタジオ盤をしのぐ迫力でお薦めです。ELPは1973年の『恐怖の頭脳改革』まではどれも名盤ですので(その後失速しますが…)是非他のアルバムも聴いてみて下さい。

上記で「イラプション」のような斬新な曲は見当たらないと述べましたが、もちろん多くのフォロワーを生み出しています。近年の複雑・テクニカルなヘビメタ系バンドなどにも影響を与えていると思いますし、日本のゲーム音楽にも多大な影響を与えているようです。ゲーム系作曲家にプログレ通が多いという話も聞きますので、また改めてプログレとゲーム音楽の関連性なんかも、取り上げられたらと思います。70年代前半を駆け抜けたスーパーバンド、エマーソン・レイク&パーマーのご紹介でした。

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