vistlip、結成5周年で去来した想い「ファンのみんなと同じ目線で通じ合えているからここまでこれた」

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7月7日(土)、TOKYO DOME CITY HALLにて、<vistlip oneman live THE END.>が開催された。この日は、バンドにとって結成5周年のアニバーサリー。ライヴ・タイトルに冠された意味深なワードに一抹の不安を覚えながらも、会場内にはバンド生誕の日に対する祝賀ムードが立ちこめている。

◆vistlip画像

開演時間を少々過ぎた頃、場内が暗転。ドラムライザーの上方にセットされたLEDスクリーンに“30”という数字が映し出されると、カウントダウンがスタート。その数字がゼロへ近づくにつれ、期待に心臓が高鳴る。そして、LEDが開くとそこに5人のメンバーが姿を現した。彼らのこの日にかける意気込みが表れたかのようなドラマティックな登場シーンに、場内はのっけから興奮状態。

オープニングは新曲「B」だった。従来の作り込まれたサウンドに比べるとシンプルな印象を受けるこの最新シングル。vistlipの要素をギュッと凝縮させて生まれたかのような楽曲は、明るく爽やかさすら漂うメロディ・ラインや、疾走する8ビートが印象的なナンバーだ。続く、「RETRO」のしっとりと憂いを帯びた旋律、「XEPPET」の智と海によるラップ的な掛け合いフロウなど、このバンドが本来持つメロディの美しさや多面性が押し出された前半。3階まで高くそびえる円柱状の場内上方へ、突き抜けていくようなサウンド・スケイプが気持ちいい。

「楽しんでるか、TOKYO! vistlipは、ついに5歳を迎えてしまいました。今日という日をみんなと一緒にお祝いできたらなと思っているので、最初から最後まで楽しく、笑顔で行きましょう」という智のMCと共に演奏されたのは、前半とは打って変わってヘヴィでダークな「the wonderland from LAB.」、「closed auction」。2ndアルバム『ORDER MADE』から激しいナンバーの連発だ。さらには「flash back blanky」「Mr.Grim」などの過去曲を続けて、フロアにはヘッドバンギングの嵐が広がった。

この日のステージは、シングル「B」やアルバム『ORDER MADE』からの最新ナンバーを中心に、シングル曲や代表曲など、以前からのナンバーを巧みに織り交ぜた、ライヴでやったら盛り上がらずにはいられないナンバーのオンパレード。ある意味では、最新型vistlipの集大成的な内容だった。そして、各ブロックごとに配置されたタイプの異なる楽曲たちが、彼らの音楽性の広さを物語る。

ステージ上のメンバーは、とても元気。海曰く、「今日はこんな……セットっていうんですか。金網(←ステージ上に組まれたトラス)でしょ。ドットの粗い液晶(←大型LEDスクリーン)でしょ。ドラムの上まで行ける階段とかまで用意してもらって(笑)」といった豪華なセットを所狭しと右へ左へ、そして上へと駆け回る。

Yuhのギターは、まさにテクニカル。流麗なタッピングやフルピッキングによる超絶速弾きはいうにおよばず、適材適所に用いられるディレイやワウなどのサウンドメイクが実に多彩で効果的だ。ベーシストの瑠伊は大地を這うようにヘヴィなベース・サウンドで、ときに直線的に、ときにグルーヴィに楽曲を牽引するフレーズ・センスの高さを持つ。そのアグレッシヴな2人のプレイヤーの狭間で、バンド・サウンドを根底から支えつつ、奥行きを加えているのが海のギター・プレイだ。またその一方ではコーラスやスクリームでバンド・サウンドに厚みをもたらすマルチぶりを発揮する。とりわけテンポやリズムが多岐にわたるvistlipサウンドでは、ドラムは常に楽曲の要。Tohyaが叩き出すビートは変化の激しい曲に安定感を与え、ラウドで繊細な空間を生み出している。これら強靱な演奏陣をバックに、壮大でドラマティックな旋律を奏でているのが、フロントマンの智だ。

「PERFECT CRIME」は、vistlipからファンへ宛てた感謝のメッセージソング。イントロのシンセ音に客席から悲鳴のような歓声が上がったのは、1stアルバムからのナンバー「Dead Cherry」だった。そして、「最後に、お前たちの笑顔を思いっ切り見せてくれよ」と呼びかけ披露された「Hameln」。煌びやかな照明が照らすメンバーの身体が大粒の汗で光る頃、この夜のテンションもひとつの佳境を迎え、15曲の本編が終了した。

しかし、まだまだ終わらない。vistlipファンには周知の事実だが、最近の彼らのライヴは二部構成となっている。その10分程度の幕間、LEDスクリーンにはご丁寧にも休憩中という文字とトイレマークを表示(笑)。またそのBGMはTohyaが制作したSEの数々を本人自らメドレー編集。さらに、休憩終了直前のLEDには“重大発表”→“海ソロデビュー!?”→“嘘!”という文字が映し出されて、場内が大爆笑という、凝りまくったサービスも。

第二部の幕開けは「トロイ」。ステージ上から放たれるグリーンのレーザーが鮮烈に客席を照らす。SEの「entrance of NIGHT PARADE.」から「Night Parade」への流れでは、ステージ上に何本もの火柱が上がる。また、客席内に雪が降り注いだナンバーや、華やかに銀テープが舞ったナンバーなど、第二部はこれでもかと言わんばかりに舞台演出が華々しく、客席はその効果に終始くぎ付け状態である。しかし、やはり素晴らしかったのは、特効に彩られたステージをあますところなく客席に響かせたメンバーの力量と許容量の深さ。ピンスポットが当てられた瑠伊の「EVE」イントロもドラマのワンシーンとなり、客席からは大歓声が沸き上がる。MCでのくだけたトークや観せるパフォーマンス、バンドとしてのミュージシャンシップというバランス感覚をvistlipは完全にコントロールしている。そして、この日のハイライトは、第二部最後のMC。

「これだけたくさんの人が、今こうしてオレたちを観に来てくれてるっていうことが、ステージに帰ってきた一年前だったら、不思議だったかもしれない。でも、一年活動を続けて、こうしてさらに大きなホールで堂々とライヴができる。vistlipとファンのみんなとが、同じ目線で通じ合えているから、笑顔でここまでこれたんだろうなと思います。それが5年間、オレたちが目指してきたもの。あのときに得たことを曲にして、みんなが泣いてくれた。やっぱりオレはずっと、みんなに何かを伝えて、それがみんなの心に届いてくれたら。それを生きがいに生きていきたいと思います。聴いてください、「ODER MADE」」。会場のそこかしこには、ファンのすすり泣く声が聞こえる。メンバーの熱演は自然発生的な拍手を引き起こし、第二部のエンディング・ナンバー「-OZONE-」へ。「笑顔! 笑顔!」という智の声に促され、3000人を収容した客席が文字通り大きく揺れた。

鳴り止まないアンコールに応えて、再びステージに登場した5人。「みんな、このライヴタイトルを見て心配していたかもしれなけど、オレたちはvistlipとして居るよ、いつまでも。vistlipがなくなっちゃうみたいなどうしようもないときがくるとしたら、そのときは世界も終わってるんじゃないでしょうか。だから毎年、この曲にのせて誓いなおそうと思っています」。演奏されたナンバーは「July VIIth」。終わりではなく、始まりの歌だった。バンドの結成日をタイトルに関したこのナンバーを最後に、感動も、笑顔も、すべて詰まった<vistlip oneman live THE END.>は、全25曲、全3時間の特大ボリュームを持って終了した。

そして、LEDのエンディングロールに映し出されたのはvistlipの未来。10月には10thシングル、11月にライヴDVD、冬には3rdミニ・アルバムのリリースを予定している。さらに2013年には東名阪ツアーを開催。そのファイナルは東京国際フォーラムホールAで行なわれる。

取材・文●梶原靖夫

<vistlip oneman live THE END.>
2012.7.7 TOKYO DOME CITY HALL
01.B
02.RETRO
03.XEPPET
04.the surface[Re:birth]
05.the wonderland from LAB.
06.closed auction
07.flash back blanky
08.Mr.Grim
09.Drama Queen
10.SINDRA
11.PERFECT CRIME
12.Recipe
13.Dead Cherry
14.偽善MASTER
15.Hameln
<二部>
16.トロイ
17.EVE
18.entrance of NIGHT PARADE.
19.Night Parade
20.Little Fabre
21.FIVE BARKIN ANIMALS
22.LION HEART
23.ORDER MADE
24.-OZONE-
<Encore>
25.July VIIth

◆vistlipオフィシャルサイト
◆BARKSヴィジュアル系・V-ROCKチャンネル「VARKS」
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