【BARKS編集部レビュー】GRADO GS1000iは、悪~い大人の音がする

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▲GRADO GS1000i。PS1000が登場するまでは唯一の巨大なGパッドを使用するモデルとして、フラッグシップに位置していたモデル。RS1の進化成長版と言えそうなスペックだが、その充実した低域はそれまでのGRADOをはるかに凌駕した新境地を切り開いた。名機と言えるモデルのひとつだ。

▲巨大なシイタケのようなGパッドにより、ヌケと迫力を両立させながら、さらに広大な音場を作り出すという無理難題をあっさり実現。

▲ハウジングが丸棒一本でつながっているだけのため、くるくる回ってケーブルがねじれ放題だったり、そのケーブルが掃除機のコンセントケーブル並みのぶっとさだったり…と、ちょいマヌケなスペックはグラド・クオリティ。笑って許していただきたい。そのかわり、サウンドは極上なのである。

これまでもいろんなヘッドホンを耳にしてきたけれど、どうにもGRADO(グラド)サウンドは怪しい脳内物質をどくどくと誘発するみたいで、ちょっとGRADOから遠ざかるとムラムラと「GRADOサウンドをちょうだい病」が発症する。早くちょうだいもっとちょうだいよ…と、新たなGRADOを手にしてはへらへらするという変なサイクルに巻き込まれてしまった。そんな私だが今回ご紹介したいのはGS1000iである。ドーパミンだかエンドルフィンだか知らないが、私の脳ミソはびちょびちょなので、GRADOのレビュー記事はどうしてもちょっと変になる。私のテンションがちょっとおかしいのは、ひとえにGRADOのせいである。私は変態ではない。

◆GRADO GS1000i画像

それまでのSRシリーズ、RSシリーズからハウジングサイズがぐっと大きくなり、なんじゃこりゃというドでかいスポンジのイヤーパッド(Gパッド)を携えて2006年に登場したのがGS1000だった。見た目に反して軽く、GRADO兄弟の中でも装着感がさほど悪くないという素晴らしい素性をもって、2009年のPS1000登場までフラッグシップの立場を守り抜いた勇者である。

歴史を重ねているモデルだけに評価はすでに安定しているモデルだと思うが、軽い装着感の中に柔らかさを感じるのは、ド渋いマホガニーのルックスが醸し出すレイドバックした雰囲気にほだされているのかもしれない。が、実際に集中してサウンドを聞き分けてみても、GRADOの中では、ひときわ味わい、わびさび、深さを感じさせてくれる響きの豊かさがある。量感豊かな低音の分厚さが、濃厚な音の壁を感じさせてくれる感じで、アイスクリームでいえば乳固形分がどっちゃり入っている感覚だ。SRシリーズのエントリーモデルなどは、ガリガリ君のように、ジャキーンと鳴らしドガンと揺らしさっとトンずらする感じだから。

もちろん、そんな落ち着きとゴージャス感を持ちながらも、GRADOならではのキレの良さと開放的な見通しの良さはなんら阻害されていない。そこに加えて、広がる音場の表現力まで持ち合わせているのがGS1000iの最大の魅力のひとつでもあり、これは巨大なシイタケのようなGパッドによって生み出されたものであることはおそらく間違いない。

心地よい音場を作り出しているのはGパッドだと思うが、やはり肝心なのは本体とのバランスだ。例えば、このGパッドを他のモデルに装填しても、ノリの良さやパンチ力を失い、力量不足を露呈することになる。ドライバーとハウジングから発せられるサウンドをうまく耳に届けられずにバランスを崩してしまうようで、焦点距離が合っていないようなフォーカスの甘さが出てしまうのだ。まさに改悪状態。Gパッドを装着すると、振動板と鼓膜の物理距離は一気に遠くなるわけで、耳介のまわりに音が散ってしまうような状況になる。その状態でこれまで同様に力強いプッシュ感を音を届けるには、従来の設計とは一ケタ違う強いトルクと強力なプッシュ感が必要であろうことは、素人の私でも容易に想像がつく。言ってみればGパッドを使いこなすには、相当の基礎体力と余裕のスタミナが不可欠という感じだろうか。これまでのSRシリーズ、RSシリーズとは、骨格から違うというのが、GS1000iに対する正当な評価だと思う。

私のフェイバリットは同じくGパッドが装填されたPS1000なのだけど、凶暴で破滅的な低域をぶちかますPS1000に対し、比べればGS1000iのサウンドは柔らかく温かい。重心の低さはPS1000同様だが、音の重さはPS1000ほどではない。だが、このチューニングが絶妙で、これがまた実にダークで悪い大人の音がする。ハンフリー・ボガートとでもいうか、ゴッドファーザー、アンタッチャブル、ボルサリーノの世界とでもいうか、背中から銃口を当てるようなずっしりとした低域が、他のどのヘッドホンにもないヤバさを醸し出す。身軽でフットワークは軽いのだけど、ワルい大人がニヤリと笑いながらみぞおちに一発お見舞いするような低域とでもいう感じだろうか。GS1000iには、子供には知られたくない大人の嗜みが良く似合う。仕立てのいいスーツで取っ組み合いをする感じだ。

一方で、SR325isなどが見せるはつらつとした高テンションの音で、じりじりと射す日光の強さのような高域は影をひそめる。曇り感は皆無だし抜けの良さに陰りはないが、GS1000の魅力は低域から中域にかけてのセクシーな質感にあるというのが、私の感想だ。

GRADOは、エントリーモデルのSR60iから最上位機種のPS-1000まで、共通して爽快かつ豪快なロックなサウンドを楽しませてくれるブランドで、GRADOを聞くと音楽を聴くのが楽しくてしかたなくなる。だんだんとノリノリな気分になるのも、やはりきっと脳内物質が分泌されているからだろう。GRADOが万能だとは言うつもりは毛頭ないけれど、少なくとも私にとってGRADOの音には、多幸感をもたらす脳内物質分泌スイッチをONにする謎のトリガーが隠されている。PS1000やSR325isには、一気に能天気にナチュラルハイになるスイッチが入っており、GS1000にはじわじわとムーディーに気持ちを高揚させていく可変ボリュームが作動する。そこには上位互換も下位互換もなく、それぞれのモデルでそれぞれの心地よさが存在しているのだ。

「典型的なGRADOサウンドの王道」というイメージではないけれど、GS1000iは相当ヤバい音がする。ヘッドホン好きであれば、一度だまされたと思って、悪い大人のサウンドも出してしまうGRADOの奥深さに迷い込んでしまえばいい。そうすればきっと、あなたの心に隠された謎のスイッチ、すぐONになります。もう脳ミソはびしょびしょ、これこそが音楽の醍醐味でしょ。音楽の桃源郷へ向かう最短のシルクロード、それこそが我らが爆走GRADO道なのです。

text by BARKS編集長 烏丸

●GRADO GS1000i
148,050円(税込)
・形式:オープンエア
・エアチャンバー:無共振ソリッドウッド
・ダイアフラム:排気型
・ダイアフラム口径:40mm
・周波数特性:8~35,000Hz
・チャンネルバランス:0.05dB
・インピーダンス:32Ω
・ヴォイスコイル:UHPLC銅線
・最大入力:150mW
・感度:98dB
・接続コード:8芯UHPLC銅線
・接続コード長:1.7m
・本体質量:240g
・総質量:360g
・入力端子:1/4インチ標準プラグ
・ヘッドバンド:側圧調整板内蔵本皮貼
・付属品(1)4.5m延長ケーブル(2)ミニプラグ・アダプター・ケーブル

◆GRADO GS1000iオフィシャルサイト

BARKS編集長 烏丸レビュー(■イヤホン ●ヘッドホン ◆カスタムIEM ◇他)
●SENNHEISER HD 700(2012-09-16)

◆ACS T1 Live!(2012-09-11)
●オーディオテクニカ ATH-AD2000 ATH-AD1000(2012-09-03)
●GRADO RS1i、SR325is、PS500(2012-08-20)
◆FitEar MH335DW(2012-08-15)
●DIESEL VEKTR(2012-08-07)

◆カナルワークスCW-L51 PSTS(2012-07-30)
●Fischer Audio FA-002W(2012-07-25)
●Pioneer SE-MJ591(2012-07-16)
■GRADO iGi(2012-07-12)
●HiFiMAN HM-400(2012-06-26)

●Klipsch Reference One(2012-06-17)
●GRADO PS1000(2012-06-09)
●ULTRASONE edition 8(2012-06-02)
●PHONON SMB-02(2012-05-28)
■音茶楽Flat4-粋(SUI)(2012-05-20)

●<春のヘッドフォン祭2012>、Fischer Audio FA-004(2012-05-13)
◇Hippo Cricri、Go Vibe Martini+、VestAmp+(2012-05-04)
■ファイナルオーディオデザインheaven IV(2012-04-28)
■フィッシャー・オーディオ Jazz (2012-04-22)
●SHURE SRH1840 & SRH1440(2012-04-16)

■FitEar TO GO! 334(2012-04-08)
◆Unique Melody Mage(2012-03-26)
●Takstar PRO 80、HI 2050、TS-671(2012-03-20)
●klipsch Mode M40(2012-03-15)
■Fischer Audio DBA-02 Mk2(2012-03-07)

◆AURISONICS AS-1b(2012-02-27)
■UBIQUO UBQ-ES503、UBQ-ES505、UBQ-ES703(2012-02-21)
◆Heir Audio Heir 3.A(2012-02-15)
■moshi audio Clarus(2012-02-12)
◆Thousand Sound TS842(2012-02-08)

◆Heir Audio Heir 8.A(2012-02-01)
■CRESYN(2012-01-17)
◆Unique Melody Merlin(2012-01-08)
◆カナルワークスCW-L01P(2012-01-03)
■ファイナルオーディオデザイン Adagio(2011-12-31)

◆LEAR LCM-2B(2011-12-26)
●SOUL by Ludacris SL100、150、300(2011-12-23)
●AKG K550(2011-12-20)
■SENNHEISER IE80 & IE60(2011-12-16)
■DUNU(2011-12-14)

◆カナルワークスCW-L10(2011-12-12)
■オーディオテクニカ ATH-CK90PROMK2(2011-12-09)
◆Ultimate Ears UE 5 Pro(2011-12-06)
■REALM IEM856(2011-12-02)
■ファイナルオーディオデザインAdagio III(2011-11-26)

◇Ultimate Ears用交換ケーブルFiiO RC-UE1&オヤイデ電気HPC-UE(2011-11-25)
●Reloop RHP-20(2011-11-22)
■オーディオテクニカ ATH-CK100PRO(2011-11-14)
■SOUL by Ludacris SL99(2011-11-04)
■Fischer Audio Ceramique(2011-10-25)

■SHURE SE535 Special Edition(2011-10-21)
■JVCケンウッドHA-FX40(2011-10-16)
■BauXar EarPhone M(2011-10-10)
■SONOCORE COA-803(2011-10-02)
◆TripleFi 10 ROOTHリモールド(2011-09-25)

■AKG K3003(2011-09-18)
■Atomic Floyd SuperDarts+Remote(2011-09-11)
■Bowers & Wilkins C5(2011-09-06)
■Westone3(2011-09-02)
◆カナルワークスCW-L31(2011-08-26)

◇ORB JADE to go(2011-08-22)
■YAMAHA EPH-100(2011-08-14)
■NW-STUDIO(2011-08-09)
■NW-STUDIO PRO(2011-08-02)
◆FitEar MH334(2011-07-29)

◆ROOTH SE530×8(2011-07-26)
■Westone ES5(2011-07-21)
●SHURE SRH940(2011-07-17)
◆Ultimate Ears 18 Pro(2011-07-15)
■クリエイティブAurvana In-Ear3(2011-07-06)

◆カナルワークス CW-L01(2011-07-01)
■GRADO GR10&GR8(2011-06-25)
◇SAEC(サエク)SHURE SE用ケーブル(2011-06-21)
■フィアトンPS 20&PS 210(2011-06-17)
■ZERO AUDIO ZH-BX500&ZH-BX300(2011-06-11)

■フィリップスSHE8000&SHE9000(2011-06-03)
■アトミック フロイド(2011-05-26)
■モンスター・マイルス・デイビス・トリビュート(2011-05-20)
■SHURE SE215(2011-05-13)
■ファイナルオーディオデザインPiano Forte IX(2011-05-06)

■ラディウス・ドブルベ/ドブルベ・ヌメロドゥ(2011-05-01)
■ローランドRH-PM5(2011-04-23)
■フィリップスSHE9900(2011-04-15)
■JAYS q-JAYS(2011-04-08)
◇フォステクスHP-P1(2011-03-29)

■Klipsch Image X10/X5(2011-03-23)
■ファイナルオーディオデザインheaven(2011-03-11)
■Ultimate Ears TripleFi 10(2011-03-04)
■Westone4(2011-02-24)
■Etymotic Research ER-4S(2011-02-17)

■KOTORI 101(2011-02-04)
■ゼンハイザーIE8(2011-01-31)
■ソニーMDR-EX1000(2011-01-17)
■SHURE SE535(2011-01-13)
■ビクターHA-FXC51(2011-01-12)
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