【BARKS編集部レビュー】<秋のヘッドホン祭2012>できらりと光っていたナイスな一品、アトミック フロイドPowerJax+Remote

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10月27日、28日の両日にわたりフジヤエービック主催<秋のヘッドホン祭2012>がスタジアムプレイス青山にて大々的に開催された。<ヘッドホン祭>は回を重ねることに規模が大きくなっており、もはや一部の専門メディアのみならず多くの一般報道陣も取材に押し寄せ、来場者もマニアからごく一般の音楽ファンまで老若男女が集うという一大イベントとなっていた。

◆アトミック フロイドPowerJax+Remote画像

▲今回発表されたアトミック フロイドの最新作PowerJax+Remote。細かなブラッシュアップが見て取れる完成度高き新製品。高き質感と高品位なサウンドはますます冴えわたるものの、定価は14,800円(税込)と良心的。

▲PowerJaxでは空気穴がステムの根元に1か所開けられている。開放感あふれる空気の流れは、これで必要にして十分のようだ。

▲ジャックはL字となり強い力がかかるケーブルとジャックの接合部分は硬質ゴムが起用され、適度に力が分散される設計。マイク付きリモコンは左側にセットされている。

▲付属品はラバー製キャリングポーチとイヤパッド(S/M/L)。標準ジャックアダプタと航空機用フライトアダプタは付属しない。

新製品ラッシュの勢いも質&量ともに過去最大級だったと思われる。ULTRASONEからはSignature DJと共に初のイヤホンIQとTioを、SENNHEISERはモメンタム、IE800、HDVD800、HDVA600を発表し、多くのオーディオファンの興味を引き付けていた。オーディオテクニカの新製品も一堂に並び、SONYもYAMAHAも新しいヘッドホンを陳列、ブースの前に人が途切れることはない。beyerdynamicのCUSTOM ONE PROも注目株だ。一方でFOSTEX TH600やfinal audio designの謎の覆面ヘッドホンといった参考出品も、こういうイベントならではのマニア心をくすぐるものだ。

iriver AK100やHiFiMAN HM-901といった高級プレイヤー、話題となっているアニソン専用とうたったカスタムIEMのFitEar Monet(萌音)、フルレンジドライバーをパラレル4基搭載というカナルワークスCW-L05QD、別次元のサウンドを奏でる音茶楽 FLAT4-楓、Aurisonics AS-2、1964 Earsの日本上陸…と高級カナル/カスタムIEMの世界も加速中だ。そういえば、JH Audioは16PROと13PROで3ウェイの各帯域ごとで発生する位相のずれを修正するfreqphaseなる技術を発表、今後はすべてこの技術を搭載するとか。んもう、気になって眠れない。

気になる製品は後を絶たず大々的な発表も数多く行われたが、数百ものブランドからさりげなくキラリと光るナイスなブツを見つけ出すのも<ヘッドホン祭>の楽しみ方のひとつ。例えばアトミック フロイドの新製品PowerJax+Remote(以下PowerJax)とかも、そんな見逃したくない逸品のひとつだ。

雑然とした<ヘッドホン祭>会場では、試聴すれども細かいニュアンスや各帯域の出方のディテールはほとんど聞き取れない。が、PowerJaxはざっと聞くだけでも変わらぬアトミック・フロイド・クオリティが健在であり、がっかりすることはないことは確信できたので、そのままお持ち帰りを決め込み、早速手持ちのHiDef Drum+Microphone(以下HiDef Drum)と聴きくらべ、その実力を検証してみた。

基本的なデザインやドライバーに変化はなく、サウンドの傾向も基本的には同じものだ。細かいところで様々なマイナーチェンジとチューンナップが図られているが、最も興味深いのは、筐体の裏に開けられていた空気穴がなくなったこと。これにより音漏れが改善されたのではないかという期待の一方で、これまでのHiDef DrumやHiDef Jaxが持っていた開放感あふれる抜けの良さを失ってしまっているのではないか、という懸念があった。

聞き比べて分かったことは、PowerJaxの方が、むしろさらに抜けが良くなり開放感が出ているのではないかと思われる仕上がりになっていることだ。その分中域あたりの深みが減ったか?という気もしたものの、音源によって印象は逆転し実際のところはわからない。抜けの良さはそのままワイルドさが増したようにも思え、アトミック・フロイドの魅力がさらに前面に推し進められたかのように感じる。ハイの抜けの良さ、ローの引き締まったキレの良さ、ボーカルの艶など、クリアで迫力と派手さをよしいっそう突き進めた感じ。個性はさらに磨かれ、サウンドは着実に確実に良くなっている。能率やインピーダンスなどスペックから読み取れる特性とは裏腹に、HiDef DrumよりもPowerJaxの方が感度は高く音量は大きくなっていた。

▲左がPowerJax、右がHiDef Drum。基本的な意匠は変わらないものの、よく見るとハウジングに流用パーツなどはどこにもなく、新設計であることが伺える。ケーブルの処理はもとより、ハウジングのサイズも微細ながらPowerJaxの方がコンパクトに見える。

▲空気穴の様子。左がPowerJax、右がHiDef Drum。

▲左のリモコンがPowerJax、右がHiDef Drumのリモコン。HiDef Drumのマイク&リモコンも高い質感でかっこよかったが、単機能1ボタンで重かった。PowerJaxの方が明らかに機能的で使い勝手は上だ。

なお音漏れに関しては、確かに多少は減少したものの、まだまだ音漏れは盛大だ。PowerJaxの筐体からは穴がなくなったが、実はステムの根本のひとつ穴が開いており、ここから音が漏れている。ハウジングに11個もの穴が開けられているHiDef Drumにくらべ、たったの1つなので、PowerJaxの音漏れはずいぶん抑制されたと期待したいところだが、正直言って1つも11個も空いていることに変わりなく、本質的には五十歩百歩というのが正しい認識だと思う。ただ重要なのは穴の位置で、唯一の穴が外耳道の入り口のキワに当たることになり、そのエアダクトがイヤパッドと皮膚の間に挟まりそこをハウジングでふたをするような構造になることで、不用意に外に漏れ出てしまうことを防ぐ設計になっているようだ。ハウジングの裏側に11もの穴があったこれまでのモデルは、ハウジングが皮膚に密着せずに浮いた状態になるだけで、盛大に音は漏れ聞こえてしまっただけに、今回の仕様変更の意義は大きい。サウンドに影響を与えることなくさりげなくも大きな改善が図られたポイントのひとつはここである。

外耳道を蓋するようにセットされるハウジングも、よく見るとPowerJaxではサイズが小さくなったように見える。非常に微細な違いだが、耳へのフィット感は向上したようにも感じる。ハウジングが大きすぎてフィット感に悩んでいたひとであれば、是非試してみてほしいところだ。

そのほか、デザイン面ではHiDef Drumのようにハウジング背面からペロンとケーブルが垂れ下がるのではなく、ハウジング横からゴムのケーブル出しがつくデザインとなった。ケーブル断線や接触不良の例は実際は少ないのだけれど、強度的に不安なイメージが付きまとっていただけに、単純に喜ばしい改善点だ。また下向きがすぐ分かることから耳への挿入角度に間違いが起きないので、上記のエアダクト穴に対しても理想的なセッティングがキープされることだろう。

徹底してスティール素材のサウンドとその質感を追及しているアトミック フロイドだが、PowerJaxはL字ジャックを起用し、ジャック部分とハウジングからケーブルを出す突起部分に硬質ゴムを用いて、合理化と軽量化が図られている。分岐後のケーブル素材を見直しタッチノイズを軽減したり、コントローラーを1ボタンから3ボタンへ強化しながら重量を抑えたりと、細かな品質向上にも余念がないが、一方でアップル対応リモコン搭載の是非に関しては頑なに譲らなかった経緯もある。ハイブリッド・ドライバーでエポックに登場したかのスーパーダーツでされ、多くのマニアから「リモコンが邪魔」「リモコンがある限り買わない」とディスられながらも、そこは一切譲らなかった。

あれから1年強しか経っていないが、ポータブルオーディオ環境はさらに進化、競争も激化すると同時に、iPhoneやiPodとイヤホンだけで音楽鑑賞環境が完結している人々の割合はさらに増え続けている。要は、多くの人がリモコンを必要としているのは抗いがたい潮流であり、リモコン付きのプロダクトはもはや避けることのできないマジョリティーのデファクト・スタンダードとなっている。さかのぼれば、まだ各メーカーが試行錯誤のなか軸が定まらない中において、アトミック フロイドのプロダクトには、明確なポリシーとぶれない先見性が息づいており、アップル対応リモコン搭載への取り組みにも一貫してこだわっていた。彼らの真の魅力とは、その次代を切り開く先進性と確かな技術力なのだと思う。

text by BARKS編集長 烏丸

●Atomic floyd PowerJax+Remote
11月より発売
・定価:14,800円(税込)
・ドライバ:ダイナミック・ドライバ
・最大入力:100mW
・感度:96dbSPL/mw
・インピーダンス(1kHz):16Ω
・周波数特性:20Hz~20KHz
・ケーブル:1.2mOFCケーブル(ケブラー繊維)
・プラグ:24金メッキ3.5mmステレオミニプラグ
・付属品:ラバー製キャリングポーチ、イヤパッド(S/M/L)
◆【BARKS編集部レビュー】HiDef Drum、Twist Jax、AirJax、MiniDarts
◆【BARKS編集部レビュー】SuperDarts
◆BARKS ヘッドホンチャンネル
◆アトミック フロイド・オフィシャルサイト

BARKS編集長 烏丸レビュー(■イヤホン ●ヘッドホン ◆カスタムIEM ◇他)
◇VORZUGE VorzAMPduo(2012-10-26)
●ファイナルオーディオデザイン heaven VI(2012-10-16)
●beyerdynamic T 90(2012-10-08)
●GRADO GS1000i(2012-09-30)
●SENNHEISER HD 700(2012-09-16)

◆ACS T1 Live!(2012-09-11)
●オーディオテクニカ ATH-AD2000 ATH-AD1000(2012-09-03)
●GRADO RS1i、SR325is、PS500(2012-08-20)
◆FitEar MH335DW(2012-08-15)
●DIESEL VEKTR(2012-08-07)

◆カナルワークスCW-L51 PSTS(2012-07-30)
●Fischer Audio FA-002W(2012-07-25)
●Pioneer SE-MJ591(2012-07-16)
■GRADO iGi(2012-07-12)
●HiFiMAN HM-400(2012-06-26)

●Klipsch Reference One(2012-06-17)
●GRADO PS1000(2012-06-09)
●ULTRASONE edition 8(2012-06-02)
●PHONON SMB-02(2012-05-28)
■音茶楽Flat4-粋(SUI)(2012-05-20)

●<春のヘッドフォン祭2012>、Fischer Audio FA-004(2012-05-13)
◇Hippo Cricri、Go Vibe Martini+、VestAmp+(2012-05-04)
■ファイナルオーディオデザインheaven IV(2012-04-28)
■フィッシャー・オーディオ Jazz (2012-04-22)
●SHURE SRH1840 & SRH1440(2012-04-16)

■FitEar TO GO! 334(2012-04-08)
◆Unique Melody Mage(2012-03-26)
●Takstar PRO 80、HI 2050、TS-671(2012-03-20)
●klipsch Mode M40(2012-03-15)
■Fischer Audio DBA-02 Mk2(2012-03-07)

◆AURISONICS AS-1b(2012-02-27)
■UBIQUO UBQ-ES503、UBQ-ES505、UBQ-ES703(2012-02-21)
◆Heir Audio Heir 3.A(2012-02-15)
■moshi audio Clarus(2012-02-12)
◆Thousand Sound TS842(2012-02-08)

◆Heir Audio Heir 8.A(2012-02-01)
■CRESYN(2012-01-17)
◆Unique Melody Merlin(2012-01-08)
◆カナルワークスCW-L01P(2012-01-03)
■ファイナルオーディオデザイン Adagio(2011-12-31)

◆LEAR LCM-2B(2011-12-26)
●SOUL by Ludacris SL100、150、300(2011-12-23)
●AKG K550(2011-12-20)
■SENNHEISER IE80 & IE60(2011-12-16)
■DUNU(2011-12-14)

◆カナルワークスCW-L10(2011-12-12)
■オーディオテクニカ ATH-CK90PROMK2(2011-12-09)
◆Ultimate Ears UE 5 Pro(2011-12-06)
■REALM IEM856(2011-12-02)
■ファイナルオーディオデザインAdagio III(2011-11-26)

◇Ultimate Ears用交換ケーブルFiiO RC-UE1&オヤイデ電気HPC-UE(2011-11-25)
●Reloop RHP-20(2011-11-22)
■オーディオテクニカ ATH-CK100PRO(2011-11-14)
■SOUL by Ludacris SL99(2011-11-04)
■Fischer Audio Ceramique(2011-10-25)

■SHURE SE535 Special Edition(2011-10-21)
■JVCケンウッドHA-FX40(2011-10-16)
■BauXar EarPhone M(2011-10-10)
■SONOCORE COA-803(2011-10-02)
◆TripleFi 10 ROOTHリモールド(2011-09-25)

■AKG K3003(2011-09-18)
■Atomic Floyd SuperDarts+Remote(2011-09-11)
■Bowers & Wilkins C5(2011-09-06)
■Westone3(2011-09-02)
◆カナルワークスCW-L31(2011-08-26)

◇ORB JADE to go(2011-08-22)
■YAMAHA EPH-100(2011-08-14)
■NW-STUDIO(2011-08-09)
■NW-STUDIO PRO(2011-08-02)
◆FitEar MH334(2011-07-29)

◆ROOTH SE530×8(2011-07-26)
■Westone ES5(2011-07-21)
●SHURE SRH940(2011-07-17)
◆Ultimate Ears 18 Pro(2011-07-15)
■クリエイティブAurvana In-Ear3(2011-07-06)

◆カナルワークス CW-L01(2011-07-01)
■GRADO GR10&GR8(2011-06-25)
◇SAEC(サエク)SHURE SE用ケーブル(2011-06-21)
■フィアトンPS 20&PS 210(2011-06-17)
■ZERO AUDIO ZH-BX500&ZH-BX300(2011-06-11)

■フィリップスSHE8000&SHE9000(2011-06-03)
■アトミック フロイド(2011-05-26)
■モンスター・マイルス・デイビス・トリビュート(2011-05-20)
■SHURE SE215(2011-05-13)
■ファイナルオーディオデザインPiano Forte IX(2011-05-06)

■ラディウス・ドブルベ/ドブルベ・ヌメロドゥ(2011-05-01)
■ローランドRH-PM5(2011-04-23)
■フィリップスSHE9900(2011-04-15)
■JAYS q-JAYS(2011-04-08)
◇フォステクスHP-P1(2011-03-29)

■Klipsch Image X10/X5(2011-03-23)
■ファイナルオーディオデザインheaven(2011-03-11)
■Ultimate Ears TripleFi 10(2011-03-04)
■Westone4(2011-02-24)
■Etymotic Research ER-4S(2011-02-17)

■KOTORI 101(2011-02-04)
■ゼンハイザーIE8(2011-01-31)
■ソニーMDR-EX1000(2011-01-17)
■SHURE SE535(2011-01-13)
■ビクターHA-FXC51(2011-01-12)
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