【異次元連載】トム・ハミルトンが語るエアロスミスの真実 Vol.17「怪物バンドという名の大家族のなかで、あくまでも中立の立場を貫こうとするトムのスタンス」

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今回に至るまでのトム・ハミルトンの発言に触れてきた読者の多くは、彼の冷静で客観的な視点、分析力といったものに少なからず驚かされているのではないだろうか。それ以前に、筋金入りのエアロスミス・ファンを自認する人たちであっても、こんなにも長いトムのインタビューを読んだことがある人はごく少数であるに違いない。やはりエアロスミスといえばスティーヴン・タイラーとジョー・ペリーのコンビが看板。どうしても“彼ら2人とそれ以外の3人”という認識がつきまといがちなところがある。実際、そうした部分で不満を感じることというのは、トムにはないのだろうか? 改めてそう尋ねてみると、彼からは次のような回答が返ってきた。

◆エアロスミス画像

「フラストレーションを感じたことは何度もあったと思う。でも、僕はチーム・プレイヤーなんだ。大きな声をあげて自分のアイデアをみんなに押しつけるのは好きじゃない。シャイなところがあるというか、そういうことをするのが恥ずかしいんだよ(笑)。仮にみんなに自分のリフを聴かせてみたところで、誰も気に入ってくれないかもしれない。実際そういうことになれば、僕はそれ以上、そのアイデアをゴリ押しするような真似はしない。だから、実を言うと今回も、ヴォーカル用のアレンジまで済んでいるような曲が7~8曲ほどありはしたけど、それ以上先に進むことはなかった。スティーヴンが手をつけなかったからだよ。今後、バンドがそのうちのいくつかでも使ってくれたらいいなとは思っているけど、そのためには……自分から言い出すんじゃなく、誰かに“やれば?”と言ってもらわないといけないな!(笑)」

こうした発言からも、『ミュージック・フロム・アナザー・ディメンション!』の制作プロセスにおいてジャック・ダグラスの果たした役割がいかに大きかったかがよくわかる。しかし彼自身は、このモンスター・バンドのなかでの自分自身の立ち位置をどのように捉えているのだろう? 筆者自身は常々、“スティーヴンとジョーの後方で、状況を冷静に判断しながら手綱を操っているような存在”と見てきたのだが。そのように指摘すると彼は笑いながら「まさしくそれが僕の役割だと思う」と語った。

「要するに、中立でいることが僕の役割なんだろうと思う。いつもそうありたいと思っているよ。状況が危うくなると、僕が説明してみんながコミュニケーションを図れるようにするんだ。これがケミストリーを生み出すためのちょっとした秘訣だと思う。“40年もやってこられた秘訣は?”とよく訊かれることがある。傍目から見れば、スティーヴンとジョー、その他のメンバーが助け合っているという感じに見えるのかもしれないけど、バンド内部の実情は、他人が思っているのとは違うものだよ。いわば……そう、家族のようなものなんだ。誰も見ていない、家庭のなかでしか行なわれないことってあるだろう? そうかと思えば、公衆の面前に晒される部分というのもある。もっとも僕らの場合、そうしてパブリックに晒していることがあまりにも多いから……それゆえにかなり酷い見え方をすることがある(笑)。エアロスミスはいまだに大家族のような様相を呈しているんだ。愛と、クレイジーさと、怒り。それらが常に混在しているんだよ」

あくまで中立であろうとするトム。実際、かつてバンドを脱退していたジョーとブラッド・ウィットフォードがラインナップに復帰することになった際には、彼の自宅に全員が集まって話し合いの場が持たれたという逸話もある。1984年のことだ。

そしてこの大家族に、ふたたび本格的な分裂の危機が訪れたのが2009年のことだった。結果的にお家騒動は落ち着いたものの、同年秋、スティーヴンが脱退してバンドが新ヴォーカリストを迎えるという話には、単なるゴシップとは片付けがたい信憑性が伴っていた。次回は、その当時のことについてトムに振り返ってもらうことにしよう。

取材/文:増田勇一

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