【BARKS編集部レビュー】lime ears LE3が見せる、3ドライバー・カスタムIEMの説得力

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またひとつ、お薦めできるカスタムIEMを見つけたのでご紹介したい。2012年春に登場したポーランドのブランドlime ears(ライム・イヤーズ)だ。

◆lime ears LE3画像

limeとは柑橘系のあのライムで、当初はスライスされたライムのワンポイント・イラストがフェイスプレートにあり、なんか飴細工みたいでかわいいなと思いオーダーした覚えがある。とはいえ、途中で仕様変更や改善が入り、気付くとロゴもいきなりシンプルなものに変更となっていた。新興カスタムIEMブランドということで、試行錯誤と品質向上のための仕様変更はつきもの。いつどんな形でどんなモデルがどんなサウンドになるか、これも一期一会のお楽しみ…カスタムならではの嗜みでもある。

ということで、年をまたいで私の手元に届いたのは、LE3というモデルである。

現時点でlime earsには、LE2とLE3の2モデルしか存在しない。それぞれ2ドライバーと3ドライバーのモデルで、昨今の多ドライバー化、アクティブ化、ダイナミック・ドライバーのマルチ化…と、過激な競争が繰り広げている状況に於いては、あまりにも地味なラインナップに映る。ただ実際のところ、ドライバーの数とサウンドの質は必ずしもイコールではなく、ましてや好みの問題も絡んでくれば、スペックと満足度はびっくりするほどシンクロしない。それこそドライバー1つでも素晴らしい音を奏でるモデルも存在するわけで、LE3には、たった3つのドライバーながら「これで何か過不足ありますか?」とドヤ顔で言い放つような説得力がある。

これまでたくさんのカスタムIEMを使用し続けてきたが、最近やっとちょっとずつわかってきたことがある。なかでも“片側6~8発搭載という多ドライバーがもたらすメリットは結局何なのか”という茫洋とした思いに対しては、非常に明確な結論を得たと思っている。要は“多ドライバーじゃないと作り出せないものは何か”に対する回答だが、私は、(1)「明瞭度(と解像度)の追及」、(2)「積極的な音作りに対する柔軟性」の2点に尽きると思う。こと(1)に関して言えば、霧の晴れるような明瞭度を全帯域で再現するには、それはそれは膨大なドライバーが必要だろうと思われる。ここでいう明瞭度とは、鮮度というニュアンスでもいい。圧縮音源でも128kbpsと256kbpsでは、サウンドの明瞭度と鮮度が違うといえば、そのニュアンスはお分かりいただけるだろうか。清潔感溢れる澄み渡った明瞭度を求めるのであればドライバーは多い方が絶対的に有利だというのが、これまでの経験から導かれた偏見なき真実だ。

▲lime ears LE3。ポーランドの新興ブランドで、現時点ではLE2とLE3がラインアップされている。

▲カナル部分は長めでしっかりとした遮音性が得られる。シェルも非常にクリアで作りは良い。

▲シンプルにアイコン化されたライムの輪切りアイコンがlime earsのトレードマークだ。

▲ドライバーは3つ。いずれもフェイスプレートにほど近いところにあり、鼓膜からは離れた場所に位置することになる。

一方で、上質で個性的なサウンドを設計するには多ドライバーにならざるを得ないというのが(2)の話。単に癖のある個性派であれば、ただバランスを崩せばすぐに出来上がるわけだが、ハイクオリティな基盤を作った上で豊かな個性やツボに刺さるチャームポイントを付加するには、どうしても綿密な設計にならざるを得ないわけで、それを具現化するには、ひとつのドライバーに小数点以下の領域を担当させるようなデリケートなドライバー構成の設計が必須となる。広帯域で高品質なトーンを持ちながら強烈な低域を演出するHeir Audio 8.Aや、同様に高品位な質感を保ったまま滴るようにジューシーでシズル感溢れる高域を演出するStage93 Stage 6などは、その典型のモデルであろうとも思う。まさにカスタムIEM界の多ドライバー・ハイエンド・サウンドだ。

ただ逆に言えば、執拗な明瞭度追及には目を向けず、中庸で常識的なサウンドバランスを設計するのであれば、むしろ過剰なドライバー数は必要ない。ドライバーの数など2~3個で全く問題なく、大事なのは設計センスということになる。そう、まさにlime ears LE3こそが、そのお見本のようなモデルなのである。3ドライバーで生み出す美しいバランスと、非常にクリアでよどみなきサウンドは、最大公約数的に受け入れられる「とても理想的ないい音」なのではないかと思われるのだ。

過激さややんちゃな要素は全くないが、各帯域のバランスがとてもよく、どんな音楽を聞いても破綻しない。何よりの特徴は広い音場で、素晴らしい広がりと開放感はカスタムIEMの中でも特筆すべきポイントになる。

同じ3ドライバー構成のモデルとしてHeir Audio 3.Aと比較してみると、超高域は3.Aの方が伸びが良く全体的にタイトゆえの見通しの良さがあるが、一方で全帯域にみちっと詰め込まれたサウンドの圧力のようなものは、lime ears LE3の方が優れている。LE3のバランスは極めてフラットだが、3.Aよりも低域も押しは強く、ベースラインの描くボトムの太さはLE3の方がずっしりと安定感がある。

高域も過不足なく、アコギの鈴鳴りなども非常に心地よい。強いて例えればUnique MelodyのMageの高域特性を保ったまま、低域側にバランスを傾けた感じだろうか。3ドライバーということで、UE TripleFi 10のリモールド・モデルともそのサウンドを比較してみたが、全ての帯域においてLE3の圧勝。ここに関しては品質の次元が違うと言わざるを得ない格の違いを見せる。

結局は、カスタムIEMに何を求めるのかという話になるのだけれど、“ザ平均”というべきカスタムIEMワールドのど真ん中に位置するようなキャラクターがlime ears LE3の姿ではないかと思う。高域の伸びもよく低域はタイトに締まっている。そしてボーカルが美味しい。世のカスタムを全部ぐちゃっとまとめて再構成したら、まさしくこのあたりのサウンドになりそうだという“ザ平均”である。無難な没個性ではなく、前向きな平均値というか積極的な中庸とでも呼ぶべきか、決してつまらない平均値サウンドではなく、前のめりなエネルギー感にあふれた誰からも喜ばれそうなバランスをイメージしてもらえれば幸いだ。

▲比べてみた3ドライバーのモデル。左からlime ears LE3、Heir Audio 3.A、Ultimate Ears TripleFi 10のROOTHリモールド。

▲左はlime ears LE3、右はUnique Melody Mage。

▲左は、3ドライバーで考えうる素晴らしいバランスとサウンドクオリティを実現したlime ears LE3。中央は多ドライバーの名機、8ドライバーのHeir Audio 8.A、右が6ドライバーのStage93 Stage 6。

▲付属するのはペリカンケース、クリーニングツール、クリームという、標準的なもの。

なお、長めのカナルを持っており遮音性は間違いなく世界トップレベル。アクリルのハードシェルだが口を開けても横を向いても外耳道に隙間は生じず、完璧な遮音が保持される。しかも長時間使用でも痛みや疲れが生じないという完璧な作りを見せる。この遮音に対する完成度は、Westone ES5やAC2と同等の品質だ。

ドライバーは低域用の大型ドライバーとTWFKと思しき中高域用の2ウェイドライバーがセットされているが、多くのブランドが高域のロスを避けるべく高域用ドライバーをできるだけ鼓膜に近いカナル先端にセットする設計が多い中で、LE3ではフェイスプレートにほど近い位置にセットされ、長めの音導孔でカナル先端につながっている。特徴的な音場の広さは、こういったセオリーから逸脱した設計に関連しているのだろうか…。

lime earsは、そのケーブルも独自のオリジナル製が付属する。質感も高く非常に丈夫な作りとなっており不安要素は全くない。クリアなルックスだが、透明のビニール被膜がしっかりしており緑化の心配もなさそうだ。ただし、分岐からコネクタまでの長さが短めなので、首のすぐ下に分岐がくる。マツコ・デラックス級の体型でない限り首を絞めることはないと思うが、小顔のポーランド人基準で作られているのかもしれない。なお、ケーブル自体はクセが付きやすく、なかなかまっすぐにならないのがマイナスポイントだろうか。

しっかりとした乾燥剤付のペリカンケースに、クリーニングツールとクリームが付属する。529ユーロというそれなりの価格だが、信頼できるリファレンス・モデルとして是非とも注目頂きたいモデルのひとつだ。

text by BARKS編集長 烏丸

●lime ears LE3
529ユーロ - basic finish version
Triple armature design (Single low, Single Midrange, Single High)
Sensitivity:109 dB/mW
Impedance:46 Ohm (@1000Hz)

◆lime earsオフィシャルサイト
◆lime earsオフィシャルfacebook

BARKS編集長 烏丸レビュー(■イヤホン ●ヘッドホン ◆カスタムIEM ◇他)
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●GRADO RS1i、SR325is、PS500(2012-08-20)
◆FitEar MH335DW(2012-08-15)
●DIESEL VEKTR(2012-08-07)

◆カナルワークスCW-L51 PSTS(2012-07-30)
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●Pioneer SE-MJ591(2012-07-16)
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●PHONON SMB-02(2012-05-28)
■音茶楽Flat4-粋(SUI)(2012-05-20)

●<春のヘッドフォン祭2012>、Fischer Audio FA-004(2012-05-13)
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◆AURISONICS AS-1b(2012-02-27)
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◆LEAR LCM-2B(2011-12-26)
●SOUL by Ludacris SL100、150、300(2011-12-23)
●AKG K550(2011-12-20)
■SENNHEISER IE80 & IE60(2011-12-16)
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◆カナルワークスCW-L10(2011-12-12)
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◆Ultimate Ears UE 5 Pro(2011-12-06)
■REALM IEM856(2011-12-02)
■ファイナルオーディオデザインAdagio III(2011-11-26)

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●Reloop RHP-20(2011-11-22)
■オーディオテクニカ ATH-CK100PRO(2011-11-14)
■SOUL by Ludacris SL99(2011-11-04)
■Fischer Audio Ceramique(2011-10-25)

■SHURE SE535 Special Edition(2011-10-21)
■JVCケンウッドHA-FX40(2011-10-16)
■BauXar EarPhone M(2011-10-10)
■SONOCORE COA-803(2011-10-02)
◆TripleFi 10 ROOTHリモールド(2011-09-25)

■AKG K3003(2011-09-18)
■Atomic Floyd SuperDarts+Remote(2011-09-11)
■Bowers & Wilkins C5(2011-09-06)
■Westone3(2011-09-02)
◆カナルワークスCW-L31(2011-08-26)

◇ORB JADE to go(2011-08-22)
■YAMAHA EPH-100(2011-08-14)
■NW-STUDIO(2011-08-09)
■NW-STUDIO PRO(2011-08-02)
◆FitEar MH334(2011-07-29)

◆ROOTH SE530×8(2011-07-26)
■Westone ES5(2011-07-21)
●SHURE SRH940(2011-07-17)
◆Ultimate Ears 18 Pro(2011-07-15)
■クリエイティブAurvana In-Ear3(2011-07-06)

◆カナルワークス CW-L01(2011-07-01)
■GRADO GR10&GR8(2011-06-25)
◇SAEC(サエク)SHURE SE用ケーブル(2011-06-21)
■フィアトンPS 20&PS 210(2011-06-17)
■ZERO AUDIO ZH-BX500&ZH-BX300(2011-06-11)

■フィリップスSHE8000&SHE9000(2011-06-03)
■アトミック フロイド(2011-05-26)
■モンスター・マイルス・デイビス・トリビュート(2011-05-20)
■SHURE SE215(2011-05-13)
■ファイナルオーディオデザインPiano Forte IX(2011-05-06)

■ラディウス・ドブルベ/ドブルベ・ヌメロドゥ(2011-05-01)
■ローランドRH-PM5(2011-04-23)
■フィリップスSHE9900(2011-04-15)
■JAYS q-JAYS(2011-04-08)
◇フォステクスHP-P1(2011-03-29)

■Klipsch Image X10/X5(2011-03-23)
■ファイナルオーディオデザインheaven(2011-03-11)
■Ultimate Ears TripleFi 10(2011-03-04)
■Westone4(2011-02-24)
■Etymotic Research ER-4S(2011-02-17)

■KOTORI 101(2011-02-04)
■ゼンハイザーIE8(2011-01-31)
■ソニーMDR-EX1000(2011-01-17)
■SHURE SE535(2011-01-13)
■ビクターHA-FXC51(2011-01-12)
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